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オマケの魔猫と人の子   作者: 原田 和


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2/19

2.





 「どこへ行ったのかと思っていれば……。準備はできたんだね?」


 「にゃいい!」


一生懸命探していたら、時間に遅れてしまったレオたち。慌てて見付けた秋の七草を抱えて戻れば、シドが入口で待っていた。全員が持っている草花を見て、すぐに察したらしい。汚れてしまった毛皮を魔法で綺麗にしてくれた。


 「僕が持とうか?……そう、自分たちで渡したいんだね」


レオたちは揃って頷く。シドは仕方ないなと笑うと、転移を発動させた。






日が落ちるのがすっかり早くなった。吹く風も冷たく、思わず身震い。

冷えてはいけないと、柔らかい敷物の上に毛布を何枚か用意。月が出るまで時間があるので、中で食べようかと悩んだが、パクたちの希望で外となった。みんなで準備を進めていると、近付いてくる気配にはやてとダイチが振り向く。


 「ぶにゃ」


 「こんばんは。今日はお誘いありがとう」


 「なう!」


 「シドさん、レオたちもこんばんは。来てくれてありがとうございます」


総勢十一匹となった魔猫たち。仲良くもふもふスリスリと挨拶を交わし合い、レオたちは秋の七草を贈る。にゃあにゃあと御礼を告げ、再びスリスリもふもふ。仲良しだ。


 「ありがとうございます。もしかして、集めてくれたんですか?」


 「レオたちがね。庭で探して、ギリギリまで頑張っていたよ。全部は揃えられなかったようだけど」


 「それでも充分です……!ありがとう、早速飾るね。此処へどうぞ、お茶を持ってきます」


 「にゃい!」


にっこりと微笑んで、ファスは花瓶を取りに巣へ戻った。七草を抱えたパクたちも続く。

シドとレオたちは、用意されていた敷物へ。


 「ソラ、飾るの任せてもいい?」


 「んにゃ!」


 「パクとダイチは、お弁当を運んでくれる?」


お弁当にできそうなおかずは詰めて、運ぶだけにしている。パクとダイチは力を合わせ、ゆっくり持っていく。その顔は真剣だ。


 「オネムはパンを頼んでいい?」


 「にゃむー」


ファス手作りのパンが盛られたカゴを、これまた真剣慎重に運ぶオネム。戻ってきたパクが手伝い、ファスはお茶を持っていく。


 「どうぞ。お弁当をつまんで待っていてください、温かいのを用意しますので」


 「手伝おうか?」


 「にゃいにゃあ」


 「大丈夫ですよ、後少しですから。ゆっくりしててください」


ファスは空を見上げる。星が見え始めていた。

よし、と腕まくりすると、台所に立つ。


 「はやて、大変だけどお願いね」


 「なう!」


はやての肉球が光り、フライパンに風の輪っかが三つ。そこに卵を割り入れ、じっくり焼いていく。それを人数分繰り返し、出来上がり。はやてには労りのなでなでとお茶を。それから、しらゆきが絶妙な火加減で見ていてくれたおしるに、擂った山の芋を掬って入れて、フタをする。それをこれまた人数分。しらゆきにも、労りのなでなでとお茶を。


 「ありがとう、しらゆき」


 「にぃ!」


 「はやても。じゃあ、運ぼうか」


 「なー、にゃ!」


揃って外へ行けば、ソラが活けた七草を鑑賞しているところであった。周りには、レオの魔法だろう、小さな光玉がふわりと浮かび、明るく照らしてくれている。


 「わぁ、キレイだね……!」


 「んにゃ、にゃー!」


好評だったのが嬉しいらしく、ソラの喉は鳴りっぱなしだ。そんなソラにも、労りのなでなで。どうやら全員揃うのを待っていてくれたようで、誰もお弁当に手を付けていない。ファスは急いで、おしると目玉焼きを配った。きれいなまんまるに、レオたちの目が輝く。


 「お待たせしました、どうぞ」


いただきます!とスプーンを手にする魔猫たち。レオたちは、おしるに手を伸ばす。まずは優しいおだしの香りを嗅ぎ、白いまんまるにそっとスプーンを入れ、柔らかさに驚く。ふうふう冷まして、ぱくり。


 「にゃいいぃぃぃ……!!」


ふわふわもちもちあったかい!……レオたちも気に入ってくれたようだ。ファスが安堵している横で、パクたちもゴロゴロと山の芋を堪能している。


 「これは……おいしいね。スープの優しい味とも合ってる。疲れていても、これは食べられる気がするよ。それに、面白い食感だ」


 「よかったぁ……パクたちもお気に入りなんですよ。山の芋が手に入ったら、必ず作るんです」


ファスの料理には、溜まった疲れをそっとほぐしてくれるような、そんな効果がある。だから、偶にあるお誘いを心待ちにしてしまうのだろう。シドは満足気に器を空にした。

次はさつまいもと豆の和え物。しっとりとした甘さに、豆の軽い塩味と固めの食感がいい。


 「ににっ、み?」


 「なお、にゃおにゃ」


クリームは、かきに揚げものを温めてもらっている。量があるので、しらゆきも手伝う。

ほかほかになった揚げいもを均等に配り、先生の分も、とトバリが手渡す。


 「ありがとう。…それはそうやって食べるのかい?トバリ」


 「……にゃ、にゃにゃ」


トバリのお皿には、目玉焼きのサンドイッチ。器用に作ったらしい。こうしたらおいしい、と何回かのお食事会で覚えたトバリ、静かに頑張っていた。上手だね、とファスも微笑む。

葉野菜にかりかりベーコン、それにハーブソースを挟んで、目玉焼きをどんと乗せ、完成。


 「……にゃ、にゃあ、に」


ぎゅ、と押さえてかぶりつく。トバリの尻尾がピンと立った。それからは、はむはむはむと止まらない。

それを見ていた魔猫たち、にゃあにゃあにゃいにゃいとパンを手に作り始めた。


 「器用なものだね」


 「そうですね。パクたちも最近、こうして好きな具で作ったりするんですよ」


作ってみようかな、とパンを取ったが、……もう具が無い。

シドはサンドイッチは諦め、そのまま食べた。それでも充分、満たされたのである。






……夜空には、まんまるお月様。大きくて、優しく照らしてくれている。

毛布に包まりながら、魔猫たちは仲良く眺めていた。時折、尻尾が揺れる。

虫の声と、風の音。カサカサと木々が揺れる音。自然が出すそれらは、不思議と心地いい。クルクルと喉が鳴る音も。

シドも、ぼんやりと月を眺めていた。

思えば、こんな風にのんびり過ごすのは久しぶりだ。魔研に居たら、仕事を終えたらすぐに休む。空を見上げるなんて、何年もしていなかったように思う。誘われなければ、今日の月はこんなに明るいとは気付かず、朝を迎えていただろう。


 「お茶が入りましたよ、どうぞ」


 「にゃあ!」


 「にゃいにゃ!」


 「ありがとう。お月見というのも、いいものだね。こんなに綺麗なものなんだ」


 「そうでしょう?綺麗で優しくて……なんだか安心感があります」


にこりと笑ったファスも、一緒に見上げる。何を話すでもない、けれど心地良い時間。

膝の重みに視線を下ろせば、レオがちょこんと乗っていた。

のんびりと、ゆったりと。此処はレオたちの息抜きには丁度いい場所だと思っていたが、いつの間にやら自分にも、そうなっていた。如何に日々が忙しかったかを、教えてくれる。客観視するには必要な空間だった。


 「…また、誘ってくれると嬉しいね。レオたちも楽しかったようだし」


 「ほんとうですか?じゃあ、来月はどうですか?」


 「思いの外早いな。てっきり来年かと…」


 「今日は十五夜、次は十三夜(じゅうさんや)、その次が十日夜(とおかんや)。三回あるんだそうです」


へぇ、と相槌を打ちながら、レオたちが持っていた資料の中身を思い出す。

十三夜は正確には満月ではないが、十五夜の次に美しいといわれる月。別名、『栗名月』と『豆名月』。

十日夜は豊穣に感謝し、また次の豊作を祈る日である。お月見というより、収穫祭といったほうがいいか。


 「三月見(さんつきみ)、というそうです。知ったら、みんなでやってみたくなりまして…。よければ、またどうでしょうか…」


先の予定は分からないが、五対の期待の眼差しは無視できない。なるべく参加できるよう、調整はするつもりのシドだが。ちら、とパクを撫でるファスを見る。

今回、勿論弟子達も参加予定であった。

指折り数え、心待ちにしていた三人に、冒険者ギルドからの非情な緊急依頼。当然ながら、どんなに急いだとて、三日前だと間に合わない。

うららは号泣し、トオヤは少し肩を落とし、カイはギルマスに怨嗟の呪詛を投げ……旅立って行った。

ただただ、タイミングが悪かったとしか言いようがない。ギルマスは完全なとばっちりである。


 「そうだね。次は、みんなで」


 「……はい!」


楽しみにしてるよ。にゃいにゃいと喜ぶモフ弟子たちの声に囲まれながら、シドは微笑んだ。










 「おい見ろよ、流石カイさんだぜ…魔物の動きが全て見えてるみてぇだ……!!」


 「待って待ってトオヤさん一撃で何体吹き飛ばしてる??」


 「やべぇやべぇやべぇ!!うららちゃんの魔法がこっちにぃぁぁぁ??!!」


ああああぁぁぁぁ……。

Sランクパーティのえげつない猛攻により、やる事がなくなった為ガヤに徹していた精鋭冒険者達。

彼等もまた、とばっちりを喰らっていたのである……。






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