表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第3章 【夏】親子で挑む、小さな畑の冒険

初秋の風がリビエ村を吹き抜けていた。

畑の土のにおいと焼き栗の甘〜い香りが漂う朝。


市場で買い物をしていたピッカルドとモカナのところへ、慌てたマルックじいちゃんが駆け込んできた。


「たいへんじゃー! わしのジャガイモ畑が、ポテトポックルどもに荒らされとるーっ!」


モカナの目がキラキラと輝いた。


「ポテトポックル!? かわいいの? かわいいのっ!?」


ピッカルドは腕を組んでうーんと考えた。


「……見た目は可愛いけどなぁ……腹ん中は……底なしや……」


モカナはにこっと笑って、


「パパのお腹には揚げもの系はキツイもんねーっ!」


ピッカルドは小さく咳払いした。


「……そこは……あんま触れんでええんやけどな……」


* * *


親子はマルックじいちゃんといっしょに畑へ向かった。


朝露にぬれた畑のあちこちに、小さな足あとが点々と続いている。


やがて――


「ぽこぽこっ!」


まあるいポテトポックルたちが顔を出した。

ちょこまか動く小さな手足に、モカナは「わ〜っ!」と声を上げた。


ピッカルドは慎重に観察。


「……数が多いなぁ……無理に追い払うと畑が傷むわ……」


「パパ、ここはまっかせてっ!」


モカナはバッグから甘〜いパンの切れ端を取り出した。


「パン屋のおばちゃんが教えてくれたの! ポテトポックルは甘いものが大好きなんだってーっ!」


ピッカルドはふっと笑った。


「……おまえ、賢いな……父ちゃんはもう教えること、そんなにないんちゃうか?」


モカナはパンを畑の端っこにそっと並べていった。


甘いにおいに誘われて、ポテトポックルたちはぽこぽこと移動をはじめた。


そのスキに、村人たちが簡易ネットをセット!

見事にポテトポックルたちを捕獲!


「モカナちゃん、すごいわぁーっ! 助かったよー!」


「えへへっ、パパといっしょだったから、うまくできたんだよーっ!」


モカナは照れたように笑いながら、ピッカルドの腹巻きをちょこんと整えた。


「パパ、ちゃんと見ててくれたから安心だったもん!」


ピッカルドは優しく娘の頭をなでた。


「……おまえの知恵と優しさ……父ちゃん、ほんま誇りに思うで」


秋風がふたりの間をふわっと通り抜けた。


ポテトポックルたちはパンを頬ばりながら、ほこほことおとなしくしていた。


小さな畑の冒険は、ふたりの絆をひとつ強く結んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ