ルソン島の戦いと硫黄島の現状
ルソン島の戦いと硫黄島の現状
1945年1月。ルソン島に上陸していた米陸軍は、米機動部隊の支援を失い、日本軍の反撃を受け2月には降伏する事態に陥った。
日本軍は輜重の技能持ちを使い、ルソン島の補給を集中的に行っていた。
輜重技能持ちによって運ばれる貨物は、中身を取り出しやすくする工夫がされており、迅速に各部隊に送られていた。
日本軍は兵站が整った状態で、米軍と戦う事ができたのである。
九七式中戦車以外の戦車も多数送られており、日米の戦車戦も発生した。
当然、M4中戦車は強力で、撃破可能な三式中戦車は数が少なく、M4中戦車を確実に撃破するためには、大口径砲での砲撃が必要だった。
主に、機動九○式野砲と技能持ちの組み合わせが活躍する事になった。M4中戦車の上面装甲を狙ったのである。
補給の断たれた米軍は、航空機の活動も低調になっていき、ルソン島の制空権を日本軍に取り戻される事になる。
日本軍の戦闘機操縦者や搭乗員は、徐々に命中・回避の技能持ちが増えており、生還を繰り返す事で熟練していく事になった
制空権と制海権を得た事で、補給も救援も断たれている米軍を、日本軍は余裕を持って追い詰めていき、紀元節までに降伏させることに成功した。
このルソン島の戦いの間に、日本は南方からの輸送船団を無事に日本に辿り着かせる事ができ、貴重な石油等を輸送できた。
南方航路で跳梁していた米潜水艦も、技能持ちの対潜哨戒により駆逐していく事になった。
日本は一息つけたのである。
フィリピン方面の日本軍は、次はレイテ島の奪還を進めていく事になった。
この頃の硫黄島は、米軍の上陸作戦が近づいているとされ、航空隊と整備班、そして硫黄島守備隊外の技能取得を行っていた者達は元特攻隊員を除き本土に帰還していった。
日本軍がフィリピン方面で米軍に勝利した事で、米軍の戦略が変わることになった。
米陸軍のフィリピン方面からの日本攻略は一旦中断し、小笠原諸島からの日本攻略を目指す、いわゆる飛び石作戦に注力する事になったのだ。
硫黄島攻略は延期されてはいたものの、この小さな島は重要な位置にあり、アメリカの戦略上攻略の必要がある場所だった。
また、マリアナ諸島からのB29による日本本土爆撃は、日本の迎撃機により少なくない損害を出していた。
硫黄島を攻略し、B29の直掩機の基地として活用する事は、米軍では既に決定事項になっていた。
小さな島であるため、5日間から遅くとも2週間で攻略が可能と見積もられていた。
偵察の結果、地表に防御陣地のような物は少なく、平坦で何も無いような島に見えた。
この事から米軍は、2月半ばに硫黄島攻略を行う事になる。
硫黄島側はどうかというと、地下陣地は完成しており、地下要塞と言っても過言ではないほどに強固な陣地が造られていた。
28kmに拡大された坑道は早期に完成しコンクリートで強化され、さらに拡大され全長30数kmにも及ぶ地下陣地になっていた。
硫黄島守備隊は、この地下陣地に自信があり、訓練も欠かさなかった事から米軍撃退を確信していた。
また、士気も高く兵士達の心身は健康であった。いや、頑強と言えた。
謎の地下空間より齎される食料は、彼ら兵士達の身体を筋骨隆々としたものへと変えていた。
謎の地下空間は、14層まで探索されていた。
6層から10層の森では、木の実や果物が執れ、食べられる木の芽や草もあり、食糧事情はさらに改善していく事になった。
しっかり食べ、戦闘訓練や地下陣地構築、謎の地下空間での活動を経て兵士達の身体は頑強になり、自分達が造った地下要塞への信頼、謎の地下空間での適度な息抜きもあり精神的に安定していられた。
謎の地下空間8層から14層に新たに現れた存在は、8層が身長170cmの鬼。9層が190cmの大柄な鬼。
10層は2m越えの大鬼で、鬼たちを率いて集団戦を仕掛けてきた。
11層は人狼。12層は大柄な人狼。13層は2m越えの人狼。
14層では黒い人狼が現れ、人狼達と共に集団戦を仕掛けてきた。
大鬼は非常に皮膚が硬く、12.7mm機関砲でもかすり傷といった具合だった。
もちろん関節部は幾分柔らかく、首や脇など急所を狙い討伐した。
11層から14層に沢山この大鬼が出るので、大振りの武器は鹵獲され、大鬼の革も利用できないかと検討された。
人狼は素早く怪力で鋭い爪を武器としており、毛皮は硬くはないのだが手強い相手であり、討伐には手こずる事になる。
しかし、元特攻隊員達は位階を上げ成長し、どんどん先に進み14層に到達する事になった。
黒い人狼は、そんな元特攻隊員でも手こずり、15層へ進む事を阻んでいた。
人狼からは上級回復薬が出て、その効果に驚愕する事になった。
身体の欠損等を回復できたのである。
軍はこの薬を、四肢が欠損し退役せざるを得なかった傷痍軍人に配布する事にした。
もちろん、優秀な者や戦意旺盛な者が優先された。
硫黄島謎の地下空間での怪我は、位階が上がると共に減っていったが、大鬼との戦いでは骨折者も出たし、黒い人狼との戦いでは身体の欠損者も出た。
その時は迷わず、中級・上級の回復薬が使われ、本土に送られたのは余剰品であった。
即座に治療ができるため、いまだに謎の地下空間で戦死したものはいなかった。
11層にはやはり石碑があり、触れる事で6層と繋がっていた1層入り口近くの壁の前に出た。
再び1層の壁に触れると、6層か11層を選択できた。
当然、11層に行って石碑に触れた事がなければ、11層は選択できなかったが。
11層からは山岳地帯のような場所で、やはり鉱物資源が発見され未知の鉱物資源も見付かり、今後有力な鉱山になる可能性があった。
硫黄島守備隊にとって人狼は手強く、鉱物資源採掘に集中できる環境ではなかった。
硫黄島守備隊は11層前後で足踏みし、主に10層で狩りを行い11層から帰還するという活動を行っていた。
元特攻隊員は訓練も陣地構築も無かったため、探索に集中し14層に到達できていた。
11層以降に進む目的は、上級回復薬と位階を上げる事が目的だった。
鬼や人狼は食えないため、食える物があまり出ない11層から14層は、硫黄島守備隊にとってはいまいち不人気だった。
しかし、回復薬は米軍との戦闘が始まった際、自分達の生命線となると考えられ、本土への上級回復薬の供給が終わった後は備蓄用に求められていた。
武器はもっぱら、大柄な鬼や2m越えの大鬼から鹵獲した物を使っていた。
棍棒、大剣、槍、強弓、大杖と種類があり、総じて頑丈になっており壊れ難かった。
大杖に関しては使うものが少なく、しかし使っていけば火・水・風・土・光・闇といった魔法を覚えるようだったが、優先度は低いとされた。
ちなみに、これら属性魔法は5段階で終わらず、火魔法は火炎魔法といった具合に変化していった。
火の玉が火炎放射器になった程度だと判断され、重要視はされなかった。
1945年2月半ば。アメリカ軍が来襲する頃に、謎の地下空間は15層に到達した。
案の定、人狼の上位種が表れ苦戦する事になった。
白い人狼である。
この白い人狼と戦うには、探索に専念している元特攻隊員といえども、回復薬を多数消費してしまうとされ、15層の探索は一旦止められる事になった。
謎の地下空間での活動は、回復薬を消費しない範囲で継続される事が決定した。
そして米軍との、硫黄島をめぐる戦いが始まるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
評価・リアクション・感想が励みになっております。ありがとうございます。
ホブゴブリン、ホブゴブリンリーダー、オーガ、ワーウルフといった感じでしょうか。
硫黄島ダンジョンでの主な負傷は、中級回復薬までで事足りています。ですので上級回復薬は本土に送られる事が多かったです。しかし、本土との行き来が無くなってからは、上級回復薬は備蓄されていきます。