東南海地震の影響
東南海地震の影響
1944年12月。東南海地震が起き、各地に大きな被害をもたらした。
軍需工場も被災し、貴重な工作機械に被害が出てしまった。
航空機生産に影響が出ることから、軍は頭を抱える事になった。
硫黄島で得られる不思議な技能のおかげで、劣勢を覆す光明が見え始めた矢先にこれである。
早期の復旧が求められた。
そんな中、一つの案が出された。
被災し破損した工作機械を急ぎ補充するためにも、また不足している精度の高い工作機械を入手するためにも、工作機械製造工場の工員を硫黄島で位階を上げさせるべきではないかというものだった。
硫黄島の謎の地下空間で位階を上げると、身体能力が向上する。その項目の中には器用値というものがある。
工作機械製造工場の工員に位階を上げさせ、器用値を上昇させれば、高品質な工作機械が製造できるのではないかと考えたのである。
この案はすぐに実行に移された。
器用値を上げるだけなので、そう時間は掛からないと思われたが、工員は普段戦闘訓練などしておらず、相応に時間が取られることになった。
ならばついでにと、複数の技能を取得していく事になった。
命中・鑑定などを取得し器用値が上昇した工員は、工作機械の操作が格段に巧くなり、高精度な工作機械を製造する事ができるようになった。
この一件で、硫黄島の謎空間の利用価値はさらに高まり、まだまだ応用が利くのではないかと考えられた。
様々な案が検討されていき、有力と思われる案が出てきた。
その一つは、特攻機として量産されている桜花を、ただひたすらに直進するよう改造し、技能持ちの操縦する直掩機に護衛させた一式陸攻から、索敵と命中の技能持ちが発射するというものだった。
これが成功すれば、対空砲火の外から一方的に攻撃でき、戦局を覆せると期待された。
これを実現させるためには、技能持ちの直掩機搭乗員と、桜花と一式陸攻の改造が必要だった。
熟練の戦闘機搭乗員が不足する中、一式陸攻を桜花発射地点まで確実に護衛できる搭乗員を揃えるのは、なかなかに難題だった。
そこで着目されたのが、回避の技能だった。
命中と回避の技能を持つ戦闘機乗りは、操縦技能が未熟であっても敵機を撃墜し生還するのだ。
その切っ掛けとなったのが、P38との空戦であった。
P38は当初、ペロハチなどと呼ばれ馬鹿にされていたが、運用方法が見直されてからは強敵となっていた。
長距離からの機銃射撃による一撃離脱は脅威であり、多数の損害を出していた。
回避の技能が5段階の者は、意識外からの攻撃を第6感のようなもので危険を感じとり、咄嗟に回避行動がとれたのである。
よって命中と回避の技能を、5段階まで上げた搭乗員を揃えることが決まった。
桜花に関しては、人が乗らなくていいのなら、始めから直進するロケット弾として改良されていく事になった。
銃弾と同じで、技能命中によって打ち出された物は、発射の段階で風などによる進路のズレも命中技能により修正射撃されているので、目標が想像以上の回避運動を取らない限り命中すると思われた。
また、できるだけ回避を防ぐために、桜花の速度を上げていく事になった。
一式陸攻は、技能持ちが操縦と発射操作を行えるように改良する必要があった。
他に出された案として、命中技能持ちが急降下爆撃機に乗り、ロケット推進の四号爆弾を高度5~6000mから急降下体制で投弾というものや雷撃機での雷撃、甲標的に技能持ちを乗せ雷撃させるというものがあった。
さらに、共同作業ではあるのだが潜水艦の雷撃や高射砲が挙げられた。
急降下爆撃案は旨くいきそうに思えたが、貴重な技能持ちの搭乗員を失う恐れもあり保留となった。雷撃機も同様である。
甲標的は、魚雷発射後の挙動による射線のズレは、命中技能がどうにかしてくれそうだが、魚雷発射後に海上に飛び出してしまうなど数々の欠陥があり、技能持ちの生還率が低すぎるとして却下された。
潜水艦の雷撃は、共同作業で魚雷を発射するため、命中技能の効果が出るか懐疑的だった。
潜航したまま索敵で目標とする敵艦を狙い、おおよその未来位置を入力しておき、命中技能持ちが技能の感覚に従い発射操作を行えば命中するのではないかと考えられた。
試してみない事には分からないが、こういった手順は高射砲も同じなので、まずは高射砲で試してみる事になった。
陸軍が使える案もあったが、すでに硫黄島で行っている事ばかりだった。
輜重の技能持ちが物資を輸送する。
索敵・命中技能
で地上戦や対空戦を行う。
中でも輜重技能を使った物資輸送は、前線へ密かに相当の量の補給が出来るのではないかと考えられた。
輜重技能が5段階になった者は、およそ4096㎥の収納空間があるとされている。
段階が上がるごとに容量が、およそ1㎥、8㎥、64㎥と一辺の長さが倍になっていったからである。
物資は2×2×4mの起重機対応の頑丈な木箱に詰める事で、列車や輸送船で効率よく輜重技能を所持した兵士達の元へ運搬する方法が考案されていた。
ばらばらだと、出し入れが大変だと初期に分かっていたからである。
最初は小箱を使っていたが、輜重技能の容量が増えると分かって16㎥の大きく頑丈で出し入れが容易な木箱が採用された。
輜重技能5段階持ちの兵士は、この大きな木箱256個を一度に収納し運べた。
この大きな木箱は貨物と呼ばれ、物資の輸送を容易にした。
また、輜重技能5段階の者は、一辺およそ16mの物なら収納できるため、戦車も野砲も燃料タンクも16mの範囲に収まるなら運べた。
硫黄島の補給が一段落したら、次はフィリピンのルソン島への補給が求められた。
制空権の怪しいルソン島への輸送は、二式飛行艇で移動する事が検討された。
二式飛行艇の機銃手を命中技能持ちにすれば、護衛無しでも送り届ける事ができると考えられた。
東南海地震後、様々な技能の活用法が考案され実行されていく事になった。
硫黄島、謎の地下空間は6層まで到達した。
そこは洞窟ではなく外のような場所で、森や平原、水辺までもがあり、昼夜まであった。
完全に硫黄島ではないどこかの世界のようであった。
そんな6層には、入ってすぐのところに意味ありげな石碑が建っていた。
お読みいただきありがとうございます。
評価ありがとうございます。すごく嬉しいです。
16㎥の木箱=コンテナもどきですw
輜重技能の1辺は、1m、2m、4m、8m、16mと増えていきます。
16×16×16=4096㎥。4096÷16=256.十分すぎる容量ですよね。チートです。