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終戦、そして

終戦、そして


連合国はフィリピンにおけるアメリカの敗北以降、困惑していた。突然、日本の強さが増したからである。

米英艦隊は謎の雷撃で壊滅し、日本の対潜能力が急激に上がった事で日本は持ち直し、連合国が日本を降伏に追い込むには時間が掛かると考えた。もちろん連合国が敗北するなどの想定はしていなかった。


しかし戦局は覆され、中華民国は脱落し、マリアナ諸島やビルマも陥落。セイロン島は攻略されつつあった。

また、ハワイ諸島周辺は日本の潜水艦により封鎖されようとしており、補給が滞り孤立しかけていた。


マリアナ諸島では人の姿をした化け物が現れたという情報もあった。

諜報機関の得た情報によると、日本の不可解な変化は硫黄島が何か関わっている事は判明した。


日本は中国との戦争を終わらせた後、満州の防衛力を強化しており、ソ連が参戦しても容易ならざる相手だと見られた。

ようやくドイツとの戦争が終わり、なかなか降伏しない敗北寸前の日本と戦うのならまだしも、全盛期以上に脅威度が増した日本と戦うのは骨が折れると思われた。


ソ連は度重なる米英の敗北に、日本の評価を改める事になった。

たとえソ連が参戦しても、ソ連ばかりが犠牲を払う事になりかねず、厭戦気分が高まっている米英に足を引っ張られる可能性もあると思われた。


であれば日本の要請を受け講和を仲介した方が、日米英に恩を売り影響力を及ぼせるのではないかと考えた。

ソ連は米英と日本の仲介を行う事にしたのだった。



1945年7月。ソ連を仲介とし、日本と米英の間で講和交渉が行われた。


1945年8月。講和成立。

終戦である。


日本は大東亜共栄圏の名の下、東南アジアの各地を独立させており、連合国に独立を承認させる事に成功した。

米英との戦争に繋がった根本原因である支那事変は既に解決し、連合国と講和が成立した今、東南アジアの独立させた各国に日本が軍を駐留させておく大義名分は無くなっていた。

講和の結果日本は、名を取って実を失ったのである。


日本が掲げていた戦争目的は達成された。アジアの植民地解放である。

しかし、米英と講和するにあたり、その建前が認められ、何の利権も得る事ができなかったのだ。


支那事変で勝利し、アジア開放を成功させた。

それだけ見れば戦争に勝利したようにも見るだろうが、実際得た物は自主独立だけだったのかもしれない。



日本は兵器を現地政府に払い下げつつ、元の勢力圏内まで引き上げていった。

払い下げられた兵器は、現地の政府が独立維持のため活用する事になった。



連合国から見た日本は、不気味で不可解な謎の力を有しており、それが抑止力となって日本を守る事に繋がった。

事実その力は存在し、終戦後も硫黄島での探索は続き、選ばれた者たちが高位階に達していた。


日本はその間に、満州で油田を発見し採掘する事になる。

索敵の技能持ち達が満州を行きかううち、地中の地盤の違いを複数認識していた。情報をすり合わせてみれば同じ地域を示しており、試掘してみたところ見事油田を掘り当てる事ができた。

これにより、戦中の債務からインフレと大増税に喘いでいた日本に光明が見えたのだった。


また、中国において国共内戦が始まり、日本は中華民国に武器を輸出していた事から、好景気に沸く事になった。

日本は、油田と戦争特需により財政を立て直したのだった。



戦後しばらくして、世界中で硫黄島謎の地下空間と同種とみられる地下空間が発見されていく。

それでようやく連合国は、日本の謎の力の正体を掴む事ができたのである。


各国は謎の地下空間の活用に乗り出し、世界の常識が変わっていく事になった。



いつしか謎の地下空間はダンジョンと呼ばれだし、法整備が進み、制度や体制が整い、民間にも開放されるようになっていった。


世界はダンジョンから得られる、レベルやスキル、各種ポーションにより大きく変わっていく事になった。

強大な個の力が国によって管理され、国防上重要な抑止力となった。


硫黄島ダンジョンから始まったこの変化は、戦争の形態を大きく変える事になった。

戦争が兵士による集団戦から、個の力に左右されるものに変化し、さらに高レベルの兵士による大きな破壊をもたらすものへと変わっていった。

大都市が一瞬で壊滅するような破壊が起こってしまう事から、各国は高レベル探索者を抑止力として確保し、牽制しあう状況が作られていった。



日本では、選ばれた兵士しか高位階になる事が許されない時期が続いたが、高位階者の暴走を抑えられるだけの体制が十分に整ったと判断された段階で、制限は緩和され民間にも開放されていった。

ただし、犯罪歴や素行によっては許可されない場合があった。



時代が進み、民間人の高レベル探索者は国民的人気を博すようになり、ダンジョン内の強大なモンスターとの集団戦闘は、撮影され各メディアで取り上げられるなどして楽しまれている。



日本の兵士達は精力的にダンジョン探索を続けており、環境は最高の物を用意されて不満が出ないように配慮されている。

中でも硫黄島ダンジョンは国内最高の環境となっており、世界初のダンジョンであり日米戦の激戦地であった事から、整備が続けられ観光地化もされていて、多くの人が訪れる場所となっている。

しかし硫黄島の外観は変わらず平坦で何も無いように見え、よく観ると慰霊塔が建つのみで、ほとんどの施設は全て地下に造られていた。


観光客は慰霊塔を訪れた後、摺鉢山の遺構から地下施設に入っていくのが定番となっている。

戦時中の遺構が多数残っており、人の手で造られた頑強な坑道が観光客を驚かせている。


名物は、ダンジョン牧場と名付けられた16層から30層の、モンスター肉を使った料理である。

豚頭・牛頭・馬頭はどれも美味く違った味わいが楽しめる。

これら食材は、今でも硫黄島守備隊が狩猟し提供しているのだった。

お読みいただきありがとうございました。

評価・リアクション・ブックマーク嬉しかったです。ありがとうございました。


日本、東南アジアの植民地を解放した! 米英、東南アジアを日本の支配から開放した! という感じで講和しましたw

傀儡国家満州は健在です。

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― 新着の感想 ―
これが中規模連載で終わるのは勿体なく感じる もしも江戸時代とかに本土、侍塚古墳の石室なんかがダンジョンになっているのを水戸光圀が発見なんてされていたらどうなったんだろう
読み切りました、面白かったです。 終戦後、核兵器の代わりに超常的な力を持つ人々が台頭する。 とても面白かったです。できれば、他の枢軸諸国(ドイツ)や冬戦争のフィンランドとかでも 面白くなりそうですね。
完結お疲れさまです。 世界中にダンジョン出現後しばらくは高位階の事件やら差別やらで世界で混乱が起きるだろうけどうまく冷戦という極太の蓋で抑える形になりそうだな
2025/02/21 12:22 退会済み
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