マリアナ奪還
マリアナ奪還
硫黄島の戦いが終わり、日本の潜水艦は米英の艦船や輸送船を沈め続けていた。
特にマリアナ諸島周辺は徹底され、B29の活動を抑えるまでにいたっていた。
日本軍は支配領域内から米潜水艦を駆逐しており、警戒も怠っていなかった。
レイテ島やパラオも奪還しており、ビルマではイギリス軍を押し返していた。
1945年5月。日本はドイツが降伏したのを機に、米英に講和を申し入れた。
しかし、連合国はヤルタ会談でソ連の対日参戦も決まっており、降伏なら受け入れると日本へ回答する事になる。
日本としては譲歩したつもりであったのだろうが、米英ソは戦後の領土分配を既に決めており、日本の降伏以外認められなかったのだ。
だが、現在の日本は1944年末とは一変した状況にあった。
硫黄島謎の地下空間の活用により、戦局を挽回し、さらには支那事変を終わらせていたのである。
講和に向けて攻勢を手控えていた日本軍だったが、降伏以外認めないとなると話は変わってくる。
連合国の譲歩を引き出すため、米英に対する反転攻勢に出たのであった。
ビルマ・インドに対しては、海軍の再建された機動部隊と陸軍が大攻勢を行い、イギリス艦隊の撃滅とビルマ・インドの独立を目指す事になった。
マリアナからラバウルにかけての南洋諸島に関しては、主に潜水艦隊による作戦が行われる事になった。
インド洋では、イギリス艦隊はなかなか捉まらず、通商破壊戦に終始する事になる。
イギリスの輸送船は拿捕・鹵獲していく事になった。
ビルマからインド方面は、まずはビルマ開放を行った。
イギリスとの戦いは、技能持ちが乗る一式戦闘機隼が主力となり、戦闘機掃討戦を仕掛け、制空権の優位を確立するところから始まった。
そこへ、索敵技能持ちが乗る百式司令部偵察機による詳細な敵情把握が行われ、精密な爆撃によりイギリス軍の要所を撃破していった。
地上部隊が輜重技能持ちと共に、航空支援を受けながら前進。
精強なグルカ兵に手こずりつつも、技能を活かし戦線を押し上げていき、ビルマからイギリス軍を追い出す事に成功する。
ビルマとインドの国境に達した日本軍は、一旦その歩みを止める事になる。
次の目標はセイロン島であり、ここを占領してインドに独立の火を点けていく事になった。
トラック諸島やラバウル等の孤立している拠点に、潜水艦による輜重技能持ちを活用した補給が行われた。
不足している物資が送り届けられ、輜重技能に驚嘆されながらも補給が行われていった。
マリアナ諸島に対しては奪還作戦が行われた。
すでにマリアナ諸島は、潜水艦による封鎖によって孤立状態にあり、補給を断っている事でマリアナ諸島の米航空戦力の活動は低下していた。
まず先遣隊として元特攻隊員達が潜水艦で送り込まれた。
元特攻隊員達に命じられていたのは、飛行場の破壊であった。
飛行場を使用不能にした後は、米軍施設に可能な限り打撃を与える事を求められた。
その間に上陸部隊本隊が接近し、上陸作戦を行う予定だった。
軍としては元特攻隊員たちの技量から、隠密裏に飛行場の破壊は可能と考えていた。
その後に関しては、本懐を遂げた元特攻隊員達の好きにさせるつもりだった。
元特攻隊員達は、隠密魔法を用いて各自飛行場に難なく潜入。岩石魔法で飛行場に岩を隆起させ使用不能にし、上陸部隊本隊に作戦成功を打電。
初期目的を達成した事から、米軍施設への破壊行動に移っていった。
それは蹂躙であった。
圧倒的魔法の火力による殲滅であった。
元特攻隊員達は、その全ての隊員が硫黄島謎の地下空間で31層に到達しており、驚異的な個の強さを有していた。
恐るべきはその魔法の威力だった。
全ての属性魔法を習得する事で複合魔法が使え、一人で数千の兵に匹敵すると思える強さを有していた。まさに一騎当千であった。
元特攻隊員達は強くなり過ぎていたのである。
これに震撼し慌てたのは、日本政府や大本営・軍上層部であった。
想定外の武力を元特攻隊員達が有してしまい、この力が制御できる物なのか、もし制御できなかった場合の対抗策はあるのか議論された。
急ぎ近衛師団や憲兵から、硫黄島に派遣される兵士が選抜された。
謎の地下空間で、元特攻隊員達と同程度の強さになる事を求められたのである。
今後は、硫黄島謎の地下空間で深層を探索し高位階になる事ができるのは、選ばれた者だけとした。
それほどまでに元特攻隊員達に、脅威を感じたのだった。
現在、軍全体に技能持ちは増えてきているが、あくまで技能を優先したため高位階ではなく、通常の兵士の枠に収まる範囲だった。
しかし、硫黄島守備隊員達は元特攻隊員達ほどではないが高位階であり、通常の兵士の枠に収まらない強さを有していた。
幸い硫黄島守備隊員達は強さに貪欲ではなく、食欲から探索している節があった。
十分制御可能と上層部は考え、食料と回復薬確保を許可した。
政府や大本営は、今後は硫黄島守備隊の人員も選抜する必要があると考えた。
食料・回復薬等の確保のため、謎の地下空間に入る必要があり、どうしても位階が高くなってしまうのだ。
もっとも現在の戦局からいくと、硫黄島に再び上陸作戦を仕掛けられる可能性は低く、これ以上増員の必要は無いと考えられた。
1945年6月。マリアナ諸島は奪還され、B29による本土空襲はなくなった。
日本国民は、戦局が好転した事を実感したのである。
元特攻隊員達は激賞され、英雄と持ち上げられ、階級も上がり、故郷に錦を飾った。
未婚の者は急ぎ結婚させられ、強制的に身を固めさせられた。
元特攻隊員達は、社会的な地位を与えられ、しがらみで縛られ、変な考えを起こし難い状況が作られていった。
これは位階の高い硫黄島守備隊員達も同様だった。
今や政府や大本営は、元特攻隊員達がマリアナで見せた力から、米英軍よりも高位階の者達を警戒するようになった。
その武力は絶大であったが、それを許容する制度や体制が追い付いておらず、制御するための仕組み作りが急がれた。
1945年7月。太平洋ではラバウルまでの領域を取り戻し、インド洋ではセイロン島が攻略されようとしていた。
そしてソ連を仲介に、日本と米英の講和交渉が行われた。
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やたら強いのは、元特攻隊員達と硫黄島守備隊員達です。硫黄島とマリアナ以外では、まだその力を見せていません。しかし、技能だけでもチートなので、日本軍は強くなっています。
イギリスは、艦隊による直接対決は避けています。
アメリカのマリアナ救援は、辿り着く前に削られ頓挫しました。