生まれた、ウワサ
本文と後書き、両方で一作品です。
本文だけで終わりにせず、後書きまでどうぞ。
「ううっ……」
どうやら、俺は寝ていたらしい。
異常に硬いベッドを感じながら、真っ黒で小さな小さな光が点々としている天井を見る。
頭がガンガンするので手を額に当てると、ヌルっとする。
それでその手を見れば、周囲が暗くても分かってしまう、くっついた大量の血。
だがガンガンする頭では、血だなぁ、としか思えずにスルーした。
とりあえず目が開いたからと起きようとするが、俺の体に上手く力が入らない。
それでもナントカカントカ体を動かし、立ち上がる。
「ここは……」
周囲を見渡すと、明らかに屋外。
ここは住んでいる町の、大通りから住宅地へ入る道路だった。
天井と思っていたのは、夜空。
「なんで俺はこんな所にねていたんだ?」
ひどく痛む頭では、寝る前の記憶すら思い出せない。
と言うかそもそも、自分の事すら思い出せずにいる。
「なんだか、あたまがぼんやりしてきた」
もしかしたら頭からの出血のせいかも知れない。
血が足りなくなっているのだろうか。
「あーーーー」
そこまで思ってしまうと、体の内側から無性に焦りが湧き出す。
それは生存本能だろうか?
まあ、疑問に思おうがなんだろうが、このぼんやりした頭ではどうしようもない。
なので、体がまだ動かせる内に誰かを見つけて助けてもらおう。
それだけを決めて、まるで引きずるように足と体を動かす。
〜〜〜〜〜〜
時間感覚なんて無くなった頭で必死に動いていたら、目の前から女子学生らしきシルエットの2人を見つけた。
「あ…………」
片手を上げて挨拶みたいにして、口を開けて呼びかけようとしたのに、出てきた言葉は「あ」のひと言だけ。
上げたはずの手も、中途半端な所までしか上がらない。
そこまで俺は弱っているのか。
なんて動揺していたが、その時にこんな声が聞こえた。
「「キャーーーー!! お化けーーーーーー!!!?」」
おばけなんて、失礼な。
それより大けがした俺を助けてくれ。
そう声を出そうとしたのだが、口すら動かなくなっていた。
そして足も。
足が動く前提で体重移動した結果、前のめりになって体のバランスが崩れ、倒れ込む。
ああ、これはマズい。
と思っている途中で、俺の意識が途絶えた。
〜〜〜〜〜〜
次に意識が目覚めて、目が開いたのは病室だった。
どうやら俺は、助かったらしい。
ある日の学校。
「ねえねえ、聞いた?」
「なになに?」
「この町にゾンビみたいなお化けが出た話!」
「なにそれ!?」
「あのね、この町の大通りから住宅地につながる道で、お化けが出たんだって」
「ホント!?」
「ほんとほんと。 この間、その辺りに救急車が来たって話があったでしょ?」
「うん」
「実はその救急車が来て、救急隊員が駆け寄ってる時に息を引き取った人がいたんだって」
「助からなかったんだ。 かわいそー」
「だから、その時のあとホンの少しの差で助けてくれなかったのが恨みになって、その時の全身血まみれの姿で化けて出るんだって」
「きゃー」
「この話が嘘じゃない証拠に、今も洗いきれなかった血がその道のはじっこに何ヶ所か残ってるんだって」
「へぇ! 今日の帰りに、ソレを見に行かない?」
「ヤだよ、怖いもん」
「なんで? 怖い話は好きなのに、なんでそんなに現場に行くのはイヤなの?」
「怖いからって言ったじゃん!」
「えーー?」
「えー? じゃない!怖いものは怖いの! イヤなの!」
こうして噂は生まれ、事実と離れて広がっていく。