6-2 死ぬことは故郷へ里帰り
浩一郎が、病院の売店に着いた時には、妻の礼子と次女の洋子、カウンセラーの裕子の三人が、まるで姉妹のように、ワイワイ話しながらお弁当を選んでいた。
四人で選び終え、カウンセリングルームに戻って来て、それぞれお弁当を開き、食べることにした。
浩一郎が、
「私に何か聞きたいって、聞いたけど…… 」
と話し始めているのを、洋子がその腰をおって、話し始めた。
「それがさぁ、父さん、私達実は、今日、村に行ったんだ。
そこでの体験のことで、私も裕子お姉さんも父さんの考えが聞きたくなったの。
それに、早い方が記憶が確かだろうって、急遽、父さんに来てもらうことにしたの」
浩一郎が、
「そうか、自分達の村に行ったんだ。
それで、村はどうだった? 」
洋子が、あの世、つまり死後の世界と村のことを語りだした。
また、洋子が礼子に話した時と同じように、裕子はそれに補足するように説明を付け加えた。
村の説明が終わったところで、
浩一郎が、一言つぶやいた。
「そうか」
しばらく、静かになっていたのを洋子が、
浩一郎に
「それだけ、父さんの考えは? 」と催促した。
浩一郎は、
「父さんは、話しを聞いて思ったんだけど、
村ではね、洋子や裕子さんの記憶がまだはっきりとしないみたいだけど。
村の人は、二人りを懐かしい知り合いみたいな様子だったんだろう。
言葉も通じて意思疎通も問題ないし。
皆んな気心も知れてるようだし。
村の人皆んなから見たらよく知っている仲間と、久しぶりに会ったって言う感覚かな。
特に、弥生さんはそうだったのかな。
父さんは、話しを聞いて思ったんだけど……
村に行くって言うことは、小さい時に遊びに行った、遠くの親戚やおじいちゃん、おばあちゃんの所に行くようなもんじゃないかな。
そこに行くと、小さい時によく一緒に遊んでくれた近所のお兄さんやお姉さん、それに友達がいる。
それが月日が経って、今回また行ったって、ところじゃないかな。
まぁ、一種のふるさと、故郷に戻ったってことかな」
洋子が、
「父さん、私達が行った所は、普通なら死なないと行けない所よ。
だから、死んだら自分達のふるさとに戻るって言うこと? 」
と、叫んだ。
それに浩一郎が応えて、
「そうだよ。
だって、着いたら、洋子や裕子さんが、覚えているかどうかは別にして、村の人は皆んなよく洋子や裕子さんをよく知っていたんだろ。
なら、洋子や裕子さんが小さい時によく遊んでくれた人はよく覚えていて、洋子や裕子さんは小さかったからあまりよく覚えていない。
もっとも、死んでその村に行ったら、その小さい頃の思い出も、すぐに、思い出すようだけどね」
と。
それを聞いて裕子が、
「それは死んだら、皆んな一緒に暮らしてた故郷に戻るんですよね。
しかも、そこは自分と同じような気心の知れた仲間が沢山いる。
死ぬってことは、故郷に帰る、この世からあの世に旅行に行くようなものですかね。
違うのは、また簡単にこの世に戻れないぐらいですかね。
私は、仕事柄、沢山悩み苦しんでる人の話しを聞いてきました。
そんな人でも、死んだらそんな気心の知れた仲間のいる楽しい所に行けるって、ことですよね。
ならば、今苦しんでいる人が早く亡くなったら、そこに行ける。
早い話しが、今すぐに自殺したら今の苦しみから解放されて、仲間の所に行けるってことですか?」と。
自分の今までの努力はなんだったろうと、やるせない気持ちであった。
浩一郎は、そんな裕子を見ながら冷静に応えた。
「多分、自殺したらその仲間のいる村に、すんなり行けないはずだよ。
だって、自分の何かを直す為に、この世に産まれきたんだろう。
自殺は、それを放棄して逃げてしまった人だ。
放棄して逃げてあの世に行った人と何とか頑張って寿命であの世に行った人が、同じ仲間の所に行けると思うかな。
多分逃げた人は、逃げた人の仲間の所へ行くはずだよ。
以前、深い井戸の話しをしたよね。
この世とは、深い井戸の底にいるようなものだ。
その底で、何をするか?何ができるか?を考えて寿命がくるまで考えたことを実行する。
そんな人が、元いた仲間、村の所へ戻れると思うよ。
また、底で宿題をこなした人は、元いた仲間より、もっと大きな村の仲間がいる所に、あの世にいた時に行きたかった村に、行けると思うよ。
裕子さんの所に来る人は、自分を責めて責めて悩んでいる人や、どうしたらいいか悩んでいる人が多いような気がする。
そんな人でも、何か出来ることがあるはずだよ。
裕子さんは、そんな人達の宿題は何かを考えながら、その場その時に出来ることを一緒に探してあげることがいいのではと、私は思う。
すまないね、カウンセリングなんかやったことがない私が、こんな上から目線の分かったようなことを言って。
申し訳ない。
でも、本人は、産まれて来た目的を考えながら、出来ることを、一つづつしていく。
そして、周囲は、元いた故郷かあの世で希望した故郷へ行けるようにサポートする。
これは、どんな人でも同じと考えてるよ。
人は、元いた故郷か希望した故郷を思いながら、出来ることを少しづつしていく。
そんな生活をしていけば、死ぬ恐怖や不安なんかも、なくなると思うな」と。
裕子は、腕を組みながら、片手をアゴにやって、考え込んでしまった。




