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5-7 神様と龍神様の出現


 篠田教授は、思い出しながら話しだした。

「そうだなぁ〜、まずは神様から話そうか。



 それは、ある宗教団体の本部道場に行った時だった。


 その本部道場には、ある神様が居られると言うことだった。

 その居られると言う場所から、少し離れたところで、そこで習った礼拝をしたところだった。 


 すると、神様が居られるって言うところから、白い煙がもうもうと立ち昇っているのに気付いた。

 また、黒っぽい煙もこちらの方へ漂っていた。


 あんなに線香を焚いてる。

 いったい、どうやったら、あんなに煙を出せるんだろう。

 何をしてるんだろうって、煙を見てビックリしたよ。


 しばらく、それをよく観察して見てみると、白い煙の中に何か形のようなものが浮かんで見える。  

 が、何だかよく分からんかった。


 すること、こっちに漂ってるちょっと黒っぽい煙が、こっちを伺うように左右に揺れている。

 そう、まるで蛇が、かま首を持ち上げて、体を揺らしながら頭を振っているようだった。


 それで、どんなところで、あんなに線香を焚いているのかと思って、もっと近づいて見てみた。


 すると、そこには何もなかった。

 もちろん、線香なんか焚いてもいない。

 その時には、もう煙もない、何もない。


 俺が見た線香の煙みたいな物は、その時一緒に何人かいたけど、俺にしか見えなくて、他の人間には見えなかった。

 つまり、俺にだけにあの煙が、見えたんだ。


 後で思うに、白い煙の中に浮かんでいたものを、その何かを、そこでは神様と呼んでいるんだな、と思った。

 また今の自分には、ハッキリとその姿を現さなかったのでは、とも思ったよ。


 ちょっと黒っぽい煙は、明らかに蛇だから、これはここの神様の眷属の龍神様だと確信したね。


 ちなみに、その時7〜8人で同時に礼拝したんだけど、その煙を見たのは俺だけだったよ。

 しかし、そこにカゲロウのようなものがあって、向こう側の景色が揺らいで見えた人が一人いたみたいだな。


 あれは、幻覚なんかじゃない。

 確かに、何かが俺にだけ見えたんだ」


「単なる錯覚じゃないか」


「いや、単なる錯覚なんかじゃない。


 それが証拠に、立ち昇る煙が変化しているにもかかわらず、具体的に何か見えたんだ。


 その白い煙は、直径1メートル強、高さ2〜3メートルぐらいまで立ち昇って消えていった。

 揺らいでいても、何かの形を現しているように感じたな。


 黒っぽい煙の蛇は、その白い煙の下から50〜60センチのところから、こちらに頭を70〜80センチほど伸ばしていた。

 その頭は、いわゆる、毒ヘビの頭のように三角だった。

 そんな黒い煙の頭で、こっちを向いて俺を見て、首を振っていたんだぞ。

 そんな、錯覚なんかあるもんか」


「普通、龍神様って、頭にツノがあったり、あごにヒゲがあるんじゃないか。

 蛇にはないと思うけど…… 」


「そうだな、俺にはツノやヒゲは、見えなかったなその時はな。

 でも、遠くから見て小さかったから、ツノやヒゲが、案外三角の頭に見えたかもしれんな」


「本当に龍神様を見たのか?」


「俺にはそう見えたし、そう思ったんだ。

だから、仕方ないだろう。



 それに、俺には、こんな経験もあるんだ。


 あることで有名な神社に、車で行った時に思ったんだ。


 駐車場のトイレ近くで車を止め、車から降りたとたん、俺は誰かの刺すような視線を頭の上から感じたんだ。

 それで上を見上げたら、龍雲の龍神様と視線がバッチリ合ったよ。

 ゾクってしたよ。

もちろん、鋭い目、長いツノもあごヒゲもあり、首から下に太い胴体もあった。

 その龍神様は、"やっと来たなっ"て言ってた、いやそれが心に響いた。


 同乗者に、空に龍雲の龍神様が見えると言うと、彼にも見えた。

 二人で、あれがツノであれが胴体のウロコで、と指差して騒いでいる時、車が2台駐車場に入って来て、人が二人づつ降りて来た。


 俺達が、龍雲の様子を上を見ながら騒いでいるのに、


 始めに車から降りて来た二人は、それがまったく聞こえないように、空を見もしないでそのまま俺たちを無視してトイレに入って行った。

 次の二人は、一人がちょっと空を見上げたが、龍雲にはまったく気付かないで、トイレへ入って行った。

 もう一人は空を見上げもしないで、そして先程の二人と同じようにトイレに入って行った。


 当然、彼らも俺達の騒ぎを聞きつけて、空の龍雲に気づくだろうって思って、俺は彼らを注意して見ていた。

 どんな反応をするか、興味があったんでな。


 しかし、四人ともまったく気づかなかった。

 あんなにハッキリ見える龍雲なんか、滅多にお目にかからないのにな。

 ちょっと、空を見れば分かるのにな。


 その時、俺は思ったんだ。

 龍雲の龍神様は、自分の姿を見せようとした人にしか姿を現さない、見せないと。


 それで、これは本物だと確信したね。


 その経験があるから、あの煙の中に浮かんだ何かは、俺にだけその姿を現したんだと。

 その何かの意思で、俺だけにね。



 あと、こういう経験もある。


 それは、さっきと違う宗教団体の道場で、俺はその道場の祭壇に背を向けて何か書き物をしていた。


 ふと、何かの気配を感じて、後ろを振り向いたんだ。


 すると身長が約2メートルぐらいで、えらく派手な衣を纏った体格がいい人が立っていた。

 そこは、その道場の祭壇がある結界のすぐ内側だった。


 そして、そのすぐ前に、今からその結界の中に入るために、座って、作法通りの所作をしている人がいた。


 その時は、まさに作法に則った人を結界に受け入れるように、その人の真っ正面に派手な大きな人が立っていたんだ。


 ビックリして、もう一回振り返って見たんだ。

 するとそこには、もう結界に入るための作法をしている座っている人しかいなかった。


 もちろん、座って結界に入るための準備をしている人は、その派手な大きな人に気づいている様子はなかった。

 自分の真正面のほんの1メートル足らずのところいる派手な大きな人にな。


 いや、それどころか、その時そこに俺以外に4〜5人の人がいたが、皆んなその派手な大きな人を見ていないと思った。

 もし、皆んなにも見えたら、大騒ぎになっていたはずだし、そんなことにはならなかった。


 俺は、何を見たかその時は分からなかった。


 それに俺だけに、一瞬見えたんだから、たぶん、何かの錯覚だろうってね思っていたよ。


 それから数年後、その道場とはまったく関係のない、ある個人の自宅を訪問した時、

その家の床の間に、あの派手な衣をまとった人が描かれている掛け軸がかけてあった。


 いや、もうビックリしたね。


 その時俺は、この軸を描いた絵師は、俺と同じものを見たんだと確信したね。

 その軸は、菩薩様を描いたものであった。


 不思議な縁を感じたよ。


 今ではあの道場には、結界に入る儀式を受ける菩薩様が居られたんだと思ってるね。



 また、同じような経験が龍神様にもある。


 ある有名なお寺の天井に、龍の絵が描かれていたんだ。

 それを見た時、あっ、この絵師は俺と同じものを見たんだとね。



 今になって思うのは、

神様や菩薩様、龍神様は、その時々によって、姿を見せたい人に一番分かりやすい姿で現れるような気がする。


 実際、俺はまだ天使様なんかを、まだ見たことないしな、縁がないだろうな」


「その話し、ホントかぁ?

なんか、ユングの言うある集団の共通の記憶みたいな気がするがなぁ〜」


「俺には、それは分からん。


 ただ言えることは、洋子達が初めて幽体離脱した時、自分達がハダカではないかと、心配していたみたいだな。

 しかし、実際には幽体離脱する前と同じ格好、洋服を着ていた。


 お前、なんだか可笑しいと思わないか?」


「何が、幽体離脱する前と後で、同じ洋服を着ていて、何が可笑しいんだよ」


「だって、肉体がないんだぞ!

洋服なんて、必要ないじゃないか。

 体がないのに、どうやって、なぜ洋服を着てるんだ?

 着る必要があるんだ」


「そりゃ、お前、何か着てないと格好がつかんだろうが。

 まさか、ハダカでウロウロするわけにもいかんしな。

 それに、肉体がないって……

そうだ、例えば光の玉みたいなので、ウロウロするか?

 それじゃあ、分かる人にしか分からないから、不便だろうが。


 第一、お前のオヤジさんだった誠治さんも、亡くなった時より少し若作りして現れたんだろう。

 だから、洋子ちゃんも分かった。


 やっぱり、例えあの世でも、何か着る物なんか着てないと分かんないよな」


「そうだ、お前の言う通りだ。

 それは、何を示しているんだと思う? 」


「そんなことは、俺には分からんよ。

 それを考えるのは、お前だろうが」


「そうだな、そうか。

 それはなぁ、つまりあの世の人は、自分の姿を自由に変えられることを示していると思うんだ。

 いや、それだけじゃない、その気になったら相手の姿も変えられるんではとな。


 だから、誠治さんは、洋子や裕子さんを幽体離脱前の姿であの世に連れて行ったと思うんだ」


「ふ〜ん、そうか。

 だから、お前は自分の姿を見せようとする相手の知識や文化的背景によって、最適な姿で現れると言うんだな」


「そうだ、その通りだ。

 お前、なかなか鋭いじゃないか」


「何を言ってるんだ。

 もう、お前とは何十年来の付き合いだぞ。

 お前の考えそうなことぐらい、分かるは。


 それで、お前、神様と何か話したのか?

 何か教えてもらったのか?」


「う〜ん、それがな、一応あるんだけど」


「なんだ、なんだ、教えろよ」


「笑うなよ」


「あぁ、笑わないよ」


「俺が龍神様から言われたことは、


"やっと来たか"と


"お前は、何をやっとるんだ"と


怒られたことだけなんだ」


「ハッハッハ、お前、よりにもよって龍神様から怒られたのか!

よりにもよって、

神様から叱られたとはな」


「だから笑うなって、言ったんだ」


「あ〜ぁ、分かった分かった。

 それで、それだけか?

 まだ、何か他にもあるんじゃないのか?」


「いや、それだけだ。

 残念ながら、それがあったら、お告げみたいなのがあったら、俺は預言者だな」


「な〜んだ、面白くない奴だなぁ」


「あぁ、俺は預言者でもないし、

新しい宗教の創始者にもなれそうにもないな。

 それに、そんなに、人間が悪くないからな」


「お前、昔からそんなことよく言ってたよなぁ。

 なら、お前が考える預言者ってなんだ。

 宗教って何なんだ」

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