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5-5 二人の教授と死後の世界



 洋子がカウンセリングを受けるために、洋子と礼子が裕子のもとを訪れていた頃、

裕子の上司にあたる精神科医の友田教授は、物理学科の教授である旧友の篠田の部屋を訪れていた。


 香りよいコーヒーが置かれたローテーブルを挟んで、友田教授と篠田教授はソファーに向かいあって座っていた。


 友田教授は、不審そうな顔をしながら篠田教授に聞いた。

「今までのところは、斉藤君からの話しをオフレコで聞いているが、ありゃぁ、本当の話しか?

あの死後の世界は、どうも信じれん」


 篠田教授は、旧友のよしみで馴れ馴れしく半分笑いながら話した。

「友田が、救急が専門なら自然に信じられないような経験を沢山したんだろうがな。

 まぁ、お前は昔から何にも出来ない、何にも知らない、精神科医だからなぁ」


「また、お前それを言う。

まぁ、ここで、俺だからいいけど、他でそんなこと言うなよ。


 それにしても俺は信じれん、あれが死後の世界の話し、あの世の話しとはな。


 もちろん、死んだと思った患者が生き返った話しは聞いたことがある。

 その時、お花畑や川、三途の河を見たと言う話しもな。

 しかし、それはまだ生きていた脳が見せる幻覚の一種だと思っていたがなぁ〜。


 その上、死後の世界に産まれ変わりがあり、特に子供が親を選んで生まれるって言うのはなぁ〜」


「友田、単純に考えてみろよ。

人間は絶対に死ぬ、いいな」


「もちろん、いいよ。

生物によってはある程度老化してら、また若返るって言う例もあるらしいが、人間は絶対に死ぬよ」


「そうだ、人間は絶対死ぬよな。

 なら、死んだ後、意識はどうなる。


 意識が完全に脳細胞なんかだけの活動で起こるなら、死んで活動を停止した脳なんかでは、意識はその時点でなくなる。


 しかし、物理のある変わった学説では、意識は脳の四次元か別次元の世界にあるのではと言うのがある。


 勿論その学者は、死後の世界の存在を肯定している。

 そう言う学説を提唱している学者がいると言うことだ。

 それが、本当かどうか、まだ物理の世界ではまだ定説になっていないがな。


 いずれにせよ、

死んで意識がなくなるか、それでも残っているかのどちらかだ。


 ここまで、いいよな」


「あぁ、いいよ」


「死んで意識がなくなるなら、そこで終わりだからな、その後のことをここでは考えない!


 いや、考える必要がない。


 しかし、もし意識が残っているとしたら、その後のことを色々と推論できる。

 いいかな」


「あぁ、いいよ。

 死んでも意識が残っていると仮定するんだな」


「あぁ、そうだ。

 死んでも、意識がある状態って、どんな状態だろう。


 意識だけで、体がないから、食べる必要はない。

 同じように、体がないから着るものも必要ない。

 住む家も特に必要なさそうだ。


 つまり、体がなくて、意識があるって言う状態では、衣食住で悩む必要がないんだ」


「そうだな、便利だな。

 くだらんことで、悩むことも無さそうだしな」


「そうだ、外形的な俗世間のしがらみからは逃れられる。

 それは、どんな世界になると思う」


「う〜ん、よく分からんなぁ〜」


「そんな所にいると、残った意識、性格の本質が現れると思うんだ。


 いや、世間体がないだけ、もっとそれが強調されるかもしれん」


「つまり、それはどう言うことだ」


「たとえば、この世では隠れていたサイコパスのような人間が、あの世ではそれが現れて、常に人を傷つけたり、殺人を犯したりして、無情な快感を得るだろうな。


 また、この世で、心優しい人がそれ故に傷ついたり誤解されたり騙されたりして、不遇な生活を余儀なくしていた人がいたとする。


 そんな人は、あの世では周囲に対して心優しい態度で接しても、現世でのようなことはないのではと思う。


 それに、世俗の欲望がない世界では、どんな暮らしをしてると思うか?」


「そりゃー、皆んな好きなことをしてると思うぞ」


「俺もそう思う。

 今までに沢山の人が亡くなって、あの世にいるはずだ。


 そこで、その皆んなが好き勝手なことをしていたら、どうなると思う?」


「それは、やっぱり、トラブルが起きると思うな」


「皆んなが、同じところにいたら、やっぱりトラブルが起きるだろうな。


 それは、彼らにとって好ましいことではないと思う。


 別にわざわざ嫌な思いをしなくても、楽しい思いの出来るところに行けばいいしな。

 移動が、自由に出来るんだからな。

 そう思うだろう」


「それはそうだ、死んでまで、不愉快なところにいたくないよ。

 やっぱり、快適なところが良いな」


「なら、快適なところって、どんなところだと思う?」


「う〜ん、難しいなぁ〜」


「俺は、思うんだけど。


 それは、趣味や嗜好、価値観が合う、それぞれが気の合う者で、グループが出来ると思う。


 そんな仲間がいたら、何をするにも楽しいだろうな。

 そう思わないか」


「そりゃぁ、そうだよな」


「そのグループを洋子達は、村って呼んでいるだけだよ」


「ふん〜ん、何か騙されているような気もするが、なんとなく分かる」


「それが分かれば、死後の世界が半分は分かったことになるよ。

 どうだ」


「一応、そこまでは、分かったことにするか。


 なら、どうして、この不自由な現世に産まれ変わるんだ。


 そのまま、気の合う仲間と楽しく暮らしていた方が、ずっといいのに」


「友田、お前気の合う仲間10人と100人では、どちらのグループ、村がいい」


「それは、100人の村の方がいいに決まってるな。


 お前だって、そうだろう。

自分の論文を学会発表して、10人の賛同者より、100人の賛同者があった方がいいだろう。

 そうだろ、同じことだな」


「そりゃ、そうだ。

同じことだ。


 なら、今、10人の賛同者のところにいるとする。つまり村人が10人だな。

なら自然に100人の賛同者つまり村人100人のところに行きたいと思うよな」


「それは、そうだ。

 それで」


「あの世の10人の村で、頑張って、100人の村に行けたら、それはそれでいい。


 しかし、もし行けなかったら、どうするかだな。

 それは、論文の欠陥に気付いても直せないって、言うことだ。


 言い方を変えれば、

性格や価値観に何か異なるところがあって、あの世では治せないって言うことだ。


 あの世で、直せないのだから、この現世で治す。

 つまり産まれ変わるってことだ」


「ふ〜ん、そうだな」


「あの世から、わざわざ不自由な現世に来るんだから、自分一人で、産まれ変わる時代や場所、親を決めると思うか」


「それは、ないだろうな。

 俺でも誰かに相談するよ。


 せっかく不自由な現世に行くんだからな。

 100人の村に確実に行けるようなタイミングを絶対に誰かに相談するよ」


「そうだよな、俺だってそうする。


 相談されたら、その人は産まれ変わった人が、その後どうなってるか気になると思わないか」


「それは、当たり前だよ、気になるよ。

 俺だって、学生を指導したら、その後どうなってるか、また、おかしな方向に行ってないか、時々見てるよ」


「それと同じように、その相談された人は、時々、自分がアドバイスして産まれ変わった人を、この現世で見てると思う。


 つまり、世間一般的に、そのアドバイスして見てる人を、指導霊とか背後霊って言ってると、俺は思ってる」


「なるぼとなぁ〜。


 しかし、篠田の話しは相変わらず細かく長いなぁ〜。


 学生時代から、全然進歩してないぞ!

お前のところの学生は、大変だろなぁ。

いつも言うが、もうちょっとなんとかならんか。


 まぁ、物理屋だから仕方ないか。


 それで、

指導霊と背後霊とかは、いいとして、

ならば、

神や仏、

神様や仏様は、どう考えるんだよ」

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