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5-2 産まれ変わる前の村


「おじいちゃん。

 ここが、私達が産まれ変わる前にいた所よね」


「そうじゃよ。

 ここは、皆んなが産まれ変わる前にいた所、世界じゃ」


「なら、おじいちゃん、今度こそ私達の本当の故郷で、産まれ変わる前の村に連れて行ってもらえるのね」


「そうじゃよ、お前達の村、故郷じゃ。

 もうすぐ、村から迎えが来るはずじゃろうて」


「おじいさま、それはどんな村かしら。

 どんな人が、迎えに来てくれるのかしら」


「裕子さんや、心配せんでもえぇ。

 洋子と出会った時のように、皆んな懐かしい人じゃて」


「そうなんだ、何だかとっても楽しみだわ」


洋子がニコニコしながら言うと、

「村にしばらくいたら、だんだん昔のこと、なぜ産まれ変わる必要があったかなど分かるじゃろうて」


「そうなの、今の自分じゃ、まったく分かんないないわ」


「ここはのう、今までいた世界と違って、衣食住の心配をせんでもええ所じゃ。

 それに病気になったり、死んでしまうことも、もちろんない。

 だから、人の本性が、現れるのじゃ。

 人はのう、自分と同じような価値観や感性をもった者同士が一緒の時、一番心地よく幸せを感じる。

 まぁ、簡単に言うと、互いに気の合う者同士の集まりじゃな」


「そんなに、都合よく皆んないるの」


「そうじゃ。

 その集まりが、産まれ変わる前の村じゃ。

 だから、互いにあまり衝突することもないし、楽しく暮らせるんじゃて」


「そんなにいい村ですか。

では、なぜそんないい所を去って、生まれ変わったのかしら」


「行けば分かるよ、裕子さんや」


「お前達の世、つまり現世におっても、死んだらあの世のどんなところに行くか、だいたい自分自身でも分かるもんじゃが、それが分かる者はまずおらんな」


「私も分かんない方だな」


「基本的に、現世と同じような性格や嗜好、クセを持った人間が集まるんじゃよ」


「おじいちゃん、私は裕子お姉さんと初めて会った時、すごく懐かしかった。

そんな人が沢山いるのね」


「そうじゃよ、洋子」


「なら、すごく懐かしくて楽しい所なのね」


「お前達は、特別じゃ」


「なんで」


「さっき見たように、お前達はもう何代も、姉妹であったり親子だったりしたからのう。

 そして、この村と現世を何度も行き来しておる。

 だんだん思い出すにつれて、今度こそと思って今の現世に産まれたのにと、今のままでは、またこの村に戻って来たとガッカリするであろうな。

 だから、思い出すにつれ、懐かしいとは思わんじゃろうな」


「なら、今まで私は裕子お姉さんが産まれ変わったらすぐに、あとを追うように、私もそこに、同じところに何度も産まれ変わったの」


「そうじゃ」


「なぜ、いつも同じところに。

それに、今回は少し違った。

なぜ」


「それは、後ろにおる迎えの人か、村で聞くことじゃな」


「ええっ、後ろに」


「あっ、ホントだ、誰かいる」


 そこには、二十代くらいの若いキリッとした青年が立っていた。


 彼は、礼儀正しく、

「いや、ビックリさせて申し訳ありませんでした」


 裕子が、我に返って、謝った。

「いえ、いえ、こちらこそ気が付かなくて、すみませんでした」


「誠治さんと三人で、熱心に話してたから、邪魔したら悪いと思って、少し後ろにいました」


「お気遣い、大変ありがとうございます」


「申し遅れましたが、私があなた方が元いた村の長をつとめている、智治です」


 二人は、智治を見ながら首をかしげた。

「二人とも、私をまだよく思い出さないようですがね、私は二人をよく知ってますよ」


「そ、そうなんですか」


「いつもなら、私でなく、二人がもっとよく馴染みのある者が来るのですが、なにぶん事情が事情で、それに色々と質問もあるようなので、私が迎えに来ました」


「はぁ、それはご親切にどうも、ありがとうございます」


「先程の、なぜ、いつも同じところに産まれ変わるのかとか、今回は少し違う理由などは、村で二人がもっともよく知る者が説明するでしょう」


裕子が、ふと疑問に思い、

「あのう、村長さん、

私達二人はよく似ているし、その村もそう言う人が沢山いるのですよね〜」


「もちろんですよ」


「なら、もし仮に、人殺しや詐欺に、人を殺すことや騙すことに快感を感じる人なら、やはり、人殺しや詐欺師の村に行くのですか」


「そうですよ、彼らは日夜仲間同士で人殺しや詐欺を働いて楽しんでいます。

 まぁ、殺したり殺されたり、騙したり騙されたりですがね」


「そこで、殺された人はどうなるのですか。

 また、私がここで死んだらどうなるのですか」


「はっ、はっ、はぁ〜。

 あなた方二人は、私達の村では殺されることもないし、死ぬこともありませんよ」


「それは、もう死んでいるからですか」


「そうですよ。

それに、仲間同士で殺し合いをしていても、ここではすぐに生き返ります。

 もし、興味があるなら別の機会に誠治さんに連れて行って頂いたらどうですかね。

 誠治さん、どうでしょう」


「わしゃぁ〜あんまり行きとうがないが、もし二人が希望するなら、考えてみょうかのう〜」


 そんな話しを四人がしているうちに、裕子と洋子が気が付いたら、四人は何か広場のような所にいたのだった。


 二人は、あたりを見渡すと、ちょっと離れた所に丸く人の輪があり、四人を取り囲むように立っていた。


また、その向こうに丸い広場を取り囲むように、和風や洋風の家並みがあった。

 いつの間にか、四人は村の広場に来ていたのだ。


 村長の智治が、

「お帰りなさい、ここが二人が元いた村ですよ」とニコニコしながら紹介した。


 その時、輪の中から一人の若い女性が二人の前に進み出てや二人の手を取った。

「お帰りなさい、裕子ちゃんに洋子ちゃん」と、これもニコニコしながら言った。


 その直後、輪の人々が口々に

「お帰りなさい」

「お帰りなさい」と一世に叫んだ。


 二人は、グルリと見渡して、驚き目を見開き、突然、目の前の若い女性にそれぞれ、

「ウワ〜ン」と顔をクシャクシャにして、泣きながら抱きついた。


二人は、

「お母さ〜ん、お母さ〜ん」と泣いていた。

三人は固く抱き締め合いながら、

三人とも泣いていた。

 それは、もちろん、嬉し涙であった。


 連れてきた祖父の誠治も、この村の村長の智治も、それを囲んでいる村人も、三人につられて、

みな笑顔の涙がホホを伝っていた。

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