4-24 二人目の訪問者
淳一は、ドタドタを廊下を歩いて、父、浩一郎の書斎のドアをドンドンと大きく叩いた。
浩一郎は、小さくため息をついて、
「はい、いいぞ」と返事をするとすぐに、淳一が入って来た。
「どうしたんだ、そんなに慌て」
「父さんに至急の相談がある」
「至急、至急って何があったんだ」
淳一が先程のことを話しだした。
「実は、今ベッドで寝ようとしたら、自分の意思に反して幽体離脱し、浴衣を着た爺さんと取っ組み合いのケンカをした。
そして気が付いたら、よく知らない印を結び真言を唱えて、その爺さんと離れられたんだ。
そして、首から上のない如来様が目の前に座っていて、そう思ったとたんに目が覚めたんだ。
それに、ベッドで目が覚めた時、印を結んで真言を唱えてたんだ。
もう、勝手に幽体離脱したり、変なものと喧嘩したりして、おまけに如来像は現れるはで、おちおち安心して寝れないよ。
もう今は、あの部屋がなんだか怖いよ。
冗談抜きで、寝るのが怖いよ。
父さん、何とかして。
何かいい方法ない」
浩一郎は、詳細を聞いた、
「う〜ん、そうかぁ。
印と真言は、どんなものだった。
覚えているか。
もう一度、ここでやってみなさい」
淳一は、両手と色々と組みながら、うまくいかないみたいで、とうとう印を組むのを諦めた。
先程、唱えていた真言をもう一度口ずさもうと、色々とブツブツ言っていたが、これももう忘れたみたいで、言うのを諦めた。
淳一は、泣きそうに、
「父さん、ゼンゼン印も真言もダメだ」
それに対して、浩一郎は、
「分かった。
部屋が怖いか、
寝るのが怖いか、
その恐怖を何とかしたいか、
対処方法を知りたいんだな」
神にもすがるように、淳一は、
「そうだよ、父さん。
まだ、少し息切れして膝がガクガクしてるよ。
何とか、助けて。
助けて下さい。
お願い」
浩一郎は、冷静に、
「そう言う時の対処方法は、以前にも話したと思うが、
まず、第一にその恐怖に囚われないことだ。
せいぜい、自分をメタ認知して自分が怖がっているくらいかな。
本当は、それでも囚われているから、それも無くならないといけない。
そんなこと言っても、それが出来そうにないようなら、
第二に臍下丹田に集中して、ゆっくり腹式呼吸することだ。
なかなか出来ないようなら、ヘソの下に手のひらを当てて、それを感じながら腹式呼吸をする。
手が上下するのに意識を集中する。
それでも、何か現れて難しいようなら、
第三段階として、自分でなく"父さんの所へ行け"と強く念じるのだ。
それがなかなか出来ないようなら、声に出して叫べ。
繰り返し繰り返し、出来るだけ大声でだ。
それでもダメで助けが欲しいなら、
第4段階として、ご先祖様に助けを乞うのだ。
ただ、ご先祖様と言っても漠然とするから、淳一のよく知ってて亡くなった人、父さんや母さんの両親はもう鬼籍に入っているから、この4人のうち淳一が一番好きだった人、もしくは頼りにしていた人、そう言われて頭に思い浮かんだ人に、
"おじいちゃん、助けて"
もしくは、
"おばあちゃん、助けて"と、
助けを願え。
きっと、お前のおじいちゃんか、おばあちゃんは助けてくれる。
心配いらない。
まあ、出来たら一人で第一段階か第二段階で解決できることを、父さんは祈ってるがな」
不安そうに、淳一が、
「父さんの所へ行けっていって、いいの。
父さんは大丈夫なの」
自信あるように、浩一郎は、
「あ〜ぁ、大丈夫だ。
いつ何時、父さんの所に来ても大丈夫だ。
心配はいらない」
ふぅっと一息ついた、淳一は、
「分かった。
でも、なぜじいちゃんか、ばあちゃんに助けを乞うの。
助けてもらうなら、どこかの神様か仏様の方が、じいちゃん達より強いんじゃない」
「そんなことはない。
顔もよく知らない、縁もゆかりもない神様や仏様より、小さい頃から可愛がってもらって、一緒に遊んだり、世話をしてもらったじいちゃん達の方が、よっぽど淳一の力になってくれる。
これは、大切なことだよ。
一般的に、
神社仏閣に行って、無闇にお願い事や助けをもとめるもんじゃない。
神様や仏様によっては、願えを叶えたら、見返りを取る神様や仏様がいる。
見返りを求める神様か仏様か、
見返りを求めない神様か仏様か、
見極めがつかないだろう。
だからな。
それに、淳一ならじいちゃんやばあちゃんで十分だよ。
分かったか、かな」
淳一は、
「うん、分かった。
今、父さんが以前言ってた
とらわれないってことの意味が、なんとなく。
出来るかどうか分からないが、
順を踏んでやってみる」
「そうか、いい子だ。
淳一なら絶対できる。
だから、父さんは心配してない。
心配ない」
疑問に思って、淳一が、
「なぜ、父さんは僕が絶対できると思うの」
それに浩一郎が答えた。
「そんなことも、分からないのか。
それは、父さんと母さんの間に生まれ子供だからだよ。
何を今更ながら、そよな迷いがあるんだ」
淳一は、それを聞いて、ハァっと息を吐いき肩を落として脱力して一言、
「分かったよ」と。
浩一郎は、淳一に
「もう遅いから、おやすみ」と。
淳一は、
「父さん、ありがと。
おやすみなさい」
淳一は、そっと父浩一郎の書斎のドアを閉めて、自室へ戻っていった。
浩一郎は、頭を掻きながら、頭を後ろへ倒し、腕を組んで考え込んでいた。




