4-16 タイムトラベル
帰り道、貴子が礼子に、
「ねぇ、ねぇ、母さん。
母さんは、父さんと同じ大学の同級生だったんでしょう」
「そうよ。
でも同級生って言っても、学年が一緒で、あっちは理学部物理学科、変人の集まりよ。
母さんは、文学部国文科で学部も違うのよ」
「でも、大学の時からの付き合いなんでしょ」
「そうね、それがどうしたの」
「ねぇ、ねぇ、母さん。
大学の時の父さんって、どんな人だったの」
「そうねぇ、いつも本を読んでいたわね。
それも、物理にあんまり関係なさそうな本ね。
それが、どうかしたの」
「実際には、どんな本」
「え〜と、哲学や社会思想、現代史、なんかだったような、とにかく、色んなジャンルの本を読んでいたように思うわね。
父さんが大学の時読んでた本なら、書斎にあるわよ。
自分で見てみれば」
「最近気になって、書斎に入って見てみたんだけどね、ヨガやインド哲学、原始仏教、大乗仏教、密教、キリスト教系の本、なんかの本が沢山あったわ。
大学の時から宗教にもこってたの」
「そうね〜、よくやってるなぁって思ったのは、ヨーガのボーズと瞑想ね。
お昼近くになって、一緒にお昼を食べょって、部屋に行ってみたら、壁に向かって瞑想をしてたわ。
終わるかなって思って、ちょっと待ってたけど終わらないから、諦めて一人でお昼を食べに行っちゃったわ。
午後の講義が終わって、夕方行ってみたら、まだ座って瞑想中だった。
あきれて、サッサと帰ったことがあるわね。
明くる日に会った時、随分長い座禅ねって、イヤミを言ってやったら、あれは座布を使ってないから座禅じゃない瞑想だって、訂正されたわ。
でも、邪魔しないでくれてありがとうって言って、そのお礼にって、美味しい物を食べにつれてってくれたわね。
父さんは、何かあるとすぐに食べもので誤魔化すのよね、昔っから」
「はい、はい、ごちそうさま。
それで、何か他に修行みたいなのは」
「そうねぇ〜、滝行がどうのとか、山行がどうのとか言ってたわね。
母さん、興味ないから、右から左に聞き流していたわ。
そんなこと、どうしたの」
「最近の父さんのこと、きっと大学時代の経験が多いんじゃないかって思ってね。
それに、あの数十年前の過去へ行って戻ってきた話し、あれ絶対に父さんよね」
ニヤニヤ笑っている礼子を見て
貴子が、
「何が、おかしいの母さん」
「これは、内緒よ。
あの数十年前に行って、その次の年に行ってお寺の人に聞いたって言う時、実は母さんもその場にいたのよ。
それに、その話しには続きがあるのよ」
「ヘェー、どんな話し、オチがあるの」
「そうね、あの後半年後ぐらいにまた一緒に行ってみて、今度は違う人にまた聞いていたのよ。
母さん、またおんなじこと聞いてるって、ちょっとおかしかったわ。
違う人からも、お寺を間違えてるって言われて、少し父さんへこんでいたの。
それで、私が数十年前の過去へ行って戻ってきたんじゃない、ちょうど良い時間の現代に戻れて良かったわねって、言ってやったら、なんだか妙に納得しちゃたみたいね」
「父さん、自分が過去に行って帰ってきたって、気付かなかったの」
「そうよ、始めは一生懸命考えてた。
それで、冗談半分に言ったら真に受けちゃて、おかしかったわ。
それで、友達の話しにしたんじゃない」
「それで、今はそのタイムトラベルの話しを信じてるのね」
「そうみたいね。
物理の教授がタイムトラベルの経験があるって言ったら、皆んなから、何いってんだって、笑われてしまうわね、きっと」
「ウフフ、そうね、きっとそうだよね。
他に、ヨガや瞑想の、こぼれ話しみたいなのはないの」
「あるわよ。
でも、どうも母さんしか知らないみたいだから、言えないわね、内緒よ」
「そう、うん分かった。
父さんには、まだまだ怪しい不思議な経験があるってことね」
「それについては、ノーコメントよ」
その後、夕食の話しなどをしながら、二人は帰って行った。




