4-14 変わった家族
浩一郎と裕子が病室を出て行ってから、しばらくして、姉の貴子が病室に入って来た。
貴子が来た時には、洋子の機嫌も直っていて、母の礼子と話しをしていた。
貴子も、今日はどうだったと聞いた。
洋子は、先程父浩一郎と母礼子に話した内容をもう一度簡単に話した。
貴子は、
「やっぱり、父さんが言ってたように、洋子にはもう一人の姉がいたんだね」
「貴子姉さんは、なぜ、私と裕子お姉さんがそんな関係って分かったの」
「それはね、父さんからのヒントもあったし、なんとなくピーンときちゃった。
それに、二人は雰囲気がとっても似てるしね。
同じって言う感じより、姉妹、姉妹してるって言う感じかな」
怪訝そうに洋子が、
「フーン、そんなものかなぁ。
でも、うちの家族って皆んな変わってるね」
貴子が、
「どおして」
洋子の言うには、
「だって、父さんなんか絶対にただの物理の先生って思えないもの。
だってそうでしょ。
あの世のこととかそこへの行き方なんて、どう考えても物理の先生が言うことじゃないもん。
それに、母さんや貴子姉さんだって、簡単な打撲なんか、手を当てただけで治してしまうし、もっと私の知らないことが出来そうだもんね。
それに、淳一もヨガや瞑想なんかしてて、幽体離脱ができるし。
やっぱり、うちの家族は皆んな普通と違うよ」
貴子が、強調するように、
「それを言うなら、洋子。
あんたが一番よ」
「なんで」
「だって、あの世に行って、おまけに三途の川まで渡って、自分の過去や前世まで見てきたんだからね。
そんな話し、聞いたことないよ。
この状況で洋子が言うから、そんなもんかって信じられるけど、他の人だったら頭から信じられないよ」
洋子が納得して、
「あっ、そうか。
自分が一番ねぇ〜。
でも、母さんや姉さんだって、手を当てるだけで色々治すじゃない。
まるでどっかの新興宗教みたいに」
貴子が、じれったくなって、
「う〜ん、もう、母さん何か言ってやって」
礼子が、
「あの手当は、母さんより貴子ちゃんの方が上手じゃない。
なんたって、直接手を当てなくても、離れたところからでも出来るじゃない。
難しいことは、母さんには分からないわ。
貴子ちゃんが説明したらどうかしらね」
貴子が、イラついて、
「う〜ん、もう、母さんったら、そうやって逃げるんだから。
私より母さんの方が絶対にうまい、達人なんらだから。
母さんならきっと、ガンでも治せるんじゃない」
礼子は、簡単にいなして、
「何言ってるのよ、この子は。
ガンなんか治せやしませんよ」
結局、貴子が自分の考えを説明することにした。
「まぁ、いいわ。
あの手当はね、本来人間なら誰でも出来るの。
ただコツがあるから、上手下手の差が大きいけどね。
手を当てる人の精神状態によって、効果がだいぶ違うの。
ただ、手を当てないでするには、そのコツみたいなのを十分に体得しないと出来ないわね」
洋子が、ツッコんで、
「そのコツって、なあに。
私でも出来るの」
また、貴子が説明を始めた、
「たぶん出来るわね。
コツって、言うのはね、
まず、自分がそういうのが出来るんだと、自然に素直に信じること。
この自然に素直に信じることが、難しいのよ。
本来その力は、人間には誰にも備わっているんだけど、これ皆んなそれを忘れてる。
だって、自分の子供もが小さかった時、手を当てて"痛いの痛いの飛んでけー"って、よくするでしょう。
基本はあれと同じよ。
だから、普通はそれを思い出すキッカケが必要なの。
その方法としては、
誰か信頼している人からその力を授けてもらったりして信じるか、
ある儀式みたいなのを通して、その力を授けてもらったと信じるか、
たまに、偶然何とかしたいと思って自然に手を当てて、その人から良くなったとか、気持ちいいなんか言われる。
それが他の人からも言われれば、自然に手を当てたら治るんだとか、気持ちよくなるんだと、自分自身でその力に気付く人もいる。
その力としては、三番目が一番信頼出来る力ね。
他人から言われて、その力を授けてもらったり、単なる儀式で、その力を習得出来るようになれる人は、まれだと思う。
次に、この痛みをとってあげようとか、病気を治してあげようなんて、強く思ってはダメ。
この感覚は、会得した人じゃないと分からないわね。
たぶん、心理学的には潜在意識で思って、表面意識では無になってる状態に近いんじゃないかしら。
そうなったら、悪いところや痛いところに、自然に手が行くようになるわね。
その次の段階は、その人の体を体の中をイメージするの。
そうすると、その人の悪いところなんかが分かるようになる。
それが出来るようになれば、それを土台として、手なんか当てなくても、離れていても、見えないところにいても出来るようになるよ。
と、まぁ、こんなところかな。
こんなもんで、いいかなぁ、母さん」
礼子が、感心するように、
「そうねぇ〜、やっぱり貴子ちゃんだね」
感動した洋子は、
「姉さん、すご〜い。
それに、母さんも」
貴子が
「さっきも言ったように、これは本来誰でも持っている力なの、あなたもね」
疑問を感じた洋子は、
「本当、だって、皆んながそんなことが出来るなんて、聞いたことないよ」
一般論を言う貴子が、
「だから、普通は、色々な儀式をしたり、何かの言葉をとなえて、それが出来る状態になるように、また条件反射的に出来るように訓練するの。
でも、そのコツを体得したら、特にそんな儀式みたいなもの必要ないのよね。
密教のお坊さんが、何か呪文を唱えながら、手で色々と何か指を組むでしょ。
あれも、その思った精神状態に自然になるようにする方法ね。
お坊さんの場合は、色々な依頼が信者さんからあるから、その種類によって、呪文や指の組み方が異なるみたいね」
洋子が感心して、
「姉さん、やっぱり、すごい」
貴子が種明かしを言う、
「へっへー、実は父さんからの受け売りよ。父さんから教わったの」
首をひねりながら、洋子は、
「フーン、そうなんだ。
やっぱり、父さんはすごいね。
でも、父さんは物理の先生でしよう。
なんか、そんなのを知ってるなんて、本当におかしいわ。
父さんって、いったい何者なの」




