4-3 異世界旅行の添乗員
淳一からヨーガのポーズをいくつか教えてもらいながら、二人は脱力の感覚をつかんだ。
それから、自立訓練方法をして、自分の肉体を感じないレベルには意外に簡単にたどり着いた。
どうやら、二人ともとてもそれらに才能があるようであった。
その状態で浩一郎から教えてもらった幽体離脱の方法をすると、身体がスーと浮き上がって、寝ている自分を見下ろすことが出来るようになった。
洋子が先に、自分の身体の横に立って待っていると、しばらくして、裕子の体が肉体と離れて浮き上がってくるのが見えた。
どう言う訳か、二人とも寝ている衣服と同じ物を着ていた。
二人は、もし裸で幽体離脱したらと、密かに心配していたのだ。
互いにお互いの姿を見合って、二人は安心したように笑い合った。
二人が周囲を見渡すと、病室の中で、浩一郎や礼子、淳一の姿が見えた。
二人は、物珍しそうにあたりを見渡したが、それぞれの肉体の身体が横たわっているのが見えるだけで、特に変わったことには気付かなかった。
自分達には足もあり、靴を履いてちゃんと床に立っている。
ただ、見え方が少し紫色がかっていた。
それに、淳一達の話し声は聞こえるのに、洋子達の話し声は聞こ えないようだった。
それ以外は、普通の旅行と同じと二人は思った。
「添乗員の人は、まだかなあ〜」と、洋子は裕子につぶやいた。
もちろん、浩一郎や礼子達には聞こえてない。
裕子が、
「もうすぐ来られるんじゃないかしら。
だって、篠田先生は心配ないって、言われていから」
すると、二人の前にちょっと古めかしい洋服を来た60才ぐらいの老人が立っているのに、二人は同時に気付いた。
洋子は、その老人をしげしげ見て、
「ひょっとして……おじいちゃん」
その老人は、洋子が小さい頃に亡くなった祖父の誠治であった。
「そうだよ、洋子。
大きくなって、綺麗になったなぁ。
じいちゃんが死んだ時は、まだこんなに小さくてなぁ、可愛いかったのにのぅ」
「でも、おじいちゃんは、もっと年をとっていたと思うけど…… 」
「うむ、そうだなぁ、少し若作りにして来たよ。
もっと若い姿でも良かったんじゃが、そうすると洋子が分からんかも知れんと思ったのでな。
遺影の写真と同じぐらいの年代の姿にしたよ」
「なら、おじいちゃんが、連れて行ってくれるわけ。
あの〜、その〜、添乗員さん」
「そうだよ、だいたいのことは、浩一郎から聞いている。
いや、見てたかな」
「えぇっ、おじいちゃん、見てたの。
いったい、どこから」
「すぐそばで、ずーっと前からだよ、もちろん洋子が花屋さんの前を通って、階段を上がって、飛び降りたところも見てたよ。
いや、産まれた時からかな」
「なら、おじいちゃんは、私の守護霊様」
「まぁ、そんなところかな」
「なら、花屋さんや他の偶然もおじいちゃんがしたの」
「あぁ、そうだよ。
第一、花屋さんがダンボールを動かして片付けたら、本当にこちらの人になってたよ」
「なら、なぜ私は飛び降りたの。
それも、おじいちゃんがしたの」
「あぁ、そんなところだな。
色々な条件が、重なり、ちょうどいいタイミングだったからだよ。
あの場所はなぁ、ちょっと特殊な場所でな、シャントした人ならあの世界に入り込まないんだが、あの時の洋子は普通じゃなかったから、たまたまあの世界に入り込んだんじゃよ。
途中でなんとかすることも出来たが、いい機会なんでそのまま見ておったよ。
ただ、あの時死なれては困るんで、ちょっと花屋さんにダンボールなんかを動かさんよう頼んだんじゃよ」
「なぜ、そんなことしたの」
「それは、そのうちに分かるじゃろうてな」
「あのう、お爺さま、私は…… 」
「おお、裕子ちゃんか、裕子ちゃんもよう知っとるぞ。
時々、見に行ってたからな」
「時々って、なら、あの時の篠田先生や友田先生の時もですか」
「あぁ、あの時は浩一郎にちょっと違う道を通るように頼んだんじゃよ。
それに友田君の時もちょっとかな。
もちろん、わしゃ、浩一郎や友田君の守護霊でない、もちろん、裕子ちゃんの守護霊でもないから、それぞれで話して、先々のことを考えて、それぞれの守護霊が浩一郎や友田君、裕子ちゃんがそうなるように動いたんじゃよ」
「なら、私達の行動や周囲の環境もすべておじいちゃん達がしてるわけ」
「いいや、そんなことはない。
こっちが、こうした方がよいと思っても、皆んな自分の意志があるからのう。
それに、カードゲームの話しをしておったが、こちらがいい手筋を準備しておっても、なかなか気付かんことも多いしのう。
こっちのカードがいいと言っても、意地を張って、違うカードを切ることもけっこう多いんじゃよ」
「なぜ、そんな手助けをしてくれるの」
「そりゃ、皆んながうまく宿題が出来るようにじゃ。
でも、なかなか、皆んな宿題が出来んしのう。
わしらが、どんなに手伝ってものう。
皆んな、我が強くてのう。
さあ、ぼつぼつ、参ろうかのう」




