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4-1 変なカウンセリング


 明くる日の3時からいよいよ、カウンセラー斉藤裕子のカウンセリングが洋子に始まった。


 洋子は、ベットを起こして寄りかかって、裕子を待っていた。

 裕子は、洋子に対面するように、ベット脇の椅子に座ることにした。


「洋子ちゃん、気分はどう」


「まだ、下を見て立つとフラフラする以外は、特に問題なく、快調ですよ」


「そう、それは、良かった。

 今までのことで、何か気になってることある」


「それは、やっぱり父さんが言った、あの世、異世界への旅行についてですね。


 実際に、どうやって行くのかとか。

 本当に、ちゃんと戻って来れるのかとか。

 最近起こった様々なことについて、原因が本当に分かって、治るのかとか。


 でもね、一番の不安は、父さんは物理学者であって、霊能者でも心理学者でもなんでもないはず。

 その父さんの言うことを、イマイチ信じられないことかな」


「篠田先生のこと、お父さんのことを信じられないの。


 先生は、こんなこと言ってたよね。

死後の世界とか、

輪廻転生、

子供が親を選んで産まれてくる、

死後の世界に行って戻って来れる、

死後の世界で自分が産まれ変わった本当の理由が分かる、

なんかがあったかな。

 全部信じられないの」 


「うん、全部じゃないわ。

 後半の部分かな、行って戻って来るあたりから、なんか怪しそうって思う」


「なら、死後の世界や輪廻転生、子供が親を選ぶってところまでは、信じられる」


「そうね、信じられるって言うより。

 父さんの話しに、なんとなく、誤魔化されて納得しているような気分ね。

 裕子お姉さんは、どうなの」


「う〜ん、

 心理学者としては、それは微妙なことで、思っても口に出すのは抵抗あるわね。


 カウンセラーとしては、それで洋子ちゃんの不安なんかが解決できればいいことのような気がする。

 でも、自分のカウンセリング技術だけで、なんとかしたいのは本音ね。


 篠田先生の言われるように、今の状況がなぜ起こったかを突き詰めて考えると、やっぱりどんな宿題があるかを明らかにすることが大切のような気がする。


 カウンセリングで出来るのは、その事態の解決だけで、なぜそれが起きたか、起きなければならなかったかまでは出来ないのよ、少なくとも私にはね。

 そんなことより、普通の生活が出来るだけで充分ってことかな。


 例えば、ここにASDつまり自閉症、自閉症スペクトラム、自閉症スペクトラム障害の人がいて、色々と困っているとするよね。

 私は、最初に、その人と一緒に話して、その人の話しを十分に聞くわ。

 それから、例えばその人が、人と会うのが苦手だと分かったとする。

 なら、次は、一人で出来ることはないかとか、どんなことが好きかとか聞いて、その人に色々な気付きの中から、出来ることを一緒に探して、それをらやってみることを勧めたりするね。

 苦手なことを治すより、まずは好きなことをのばした方がいいからね。

 その中から、人とかかわれる方法を見つけて、自然に人と会える方法を考えてもらって、その障害が少なくなるように話し合って、自信をつけられるように持っていくかな。

 難しいけどね、こんな方法もあるかな。

 まぁ、これはほんの一例ね。

 これは簡単な例だけど、そしてその人の困っていることを解決する。

 もちろん、なぜそうなったかを二人で話すことはあっても、その人がなぜその時そう言うことが起こらなけばならなかったかは、あまり話さないわ。


 医師でもそうよ、病気を治すけどなぜその人が病気になったかと言うと、せいぜい生活習慣なんかを原因にする。

 でも、本当になぜその時なったか、その時病気になる必要があったかなんて考えないわ。

 病気を治すことが仕事だからね。

 もちろん、病理的なことを考えて、発症原因なんかは考えるわよ。


 でも、洋子ちゃんの場合、たぶん、落ちる必要があったような気がする。

 なんとなくね。

 落ちる前のこと覚えてないって、それは時間が経てば思い出すかもしれない。

 だけどそれはいつかな、それまでどうするの。


 催眠術でさぐるって方法もあるけど……

 それより、色々な偶然が続き過ぎてる。

 まるで、何かをするために前持って準備されているように、私も含めてね。

 洋子ちゃんの幽体離脱も、それに淳一君もちょうどその時幽体離脱していて、洋子ちゃんが落ちるのを見てるって聞いたし。

 なんだか、何もかもうまく準備されてるようで、お膳立てが出来過ぎてるわ。


 挙げ句の果てに、物理の教授があの世の行き方帰り方を教えてくれるみたい。

 まるで、私達二人が行くように準備されてるみたいね。

 今回の事例はそんな感じがしてならないのよ。

 これでは、カウンセラー失格ね」


「私も何だかそんな気がしてます。

 私が一番驚いたのは、落ちて無キズなことより、裕子お姉さんと出会えたことです。

 それに運命的なことを感じます。


 裕子お姉さんは、以前から父とお知り合いだったのでしょう。

 それがなぜ、この時父が紹介したのかって思います。

 父とは、どんな関係なんですか、いいや変な意味でなくて」


「そうねぇ〜、篠田教授、いや篠田先生には随分前にあることがキッカケになって知り合ったの。

 それから時々相談にのって頂いたりしたわ。

 今の友田教授を紹介してくれたのも篠田先生だったの。

 そのご縁で、ここのカウンセラーにもなれたの。

 だから、篠田教授にはカリが沢山あるの。

 先生は、そんなことちっとも思っていらっしゃらないみたいだけどね。

 なんか、ぜんぜんカウンセリングになってないわね」

 裕子は笑い出し、また洋子も、一緒になって笑ってしまった。


 その笑い声を廊下で聞いた淳一は、病室で何をしてんだと思いながら、ノックをして中に入った。


洋子は入ってきた弟の淳一を裕子に紹介し、淳一を見ながら、

「淳一、それ何、何を持って来たの」


「父さんが、ヨガマットを2〜3枚病室に持って来るようにって、出来たらあるだけって言うから、差し当たりかき集めて3枚持って来たんだよ。

 こんな物、どうするの。

 まさか、ここでヨーガでもするの」


「さぁ、分からないらわ、父さんの考えなんて。

 でも、あの世の行き方を教えてくれるはずなんだけど…… 」


「姉ちゃん、今なんて言った。

 何だか、あの世に行くって聞こえたんだけど。

 三日前、あの世に行きかけて、また行くの。

 何をバカなこと、言ってるの」


「ううん、あの変人物理オヤジなら、バカなこと言ってもなんだか納得するわね」


「何を言ってんだか、バカバカしい」


 その時、ドアをノックして、浩一郎と礼子が入って来た。

 

 浩一郎は、

「おっ。

皆んなそろってるな。

 用意も出来てるようだし、さぁ、始めようか」

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