3-11 単だが間違い易い方法
長女の貴子母の礼子、カウンセラーの裕子達が、今食べてきた美味しい食事の話しをしながら、外食から戻ってきた。
どうやら、三人は食事で気分転換を図ってきたようだ。
三人が病室に入った時、父の浩一郎と次女の洋子が、何やら真剣に話している途中のようだった。
病室に入って来た三人を見て、浩一郎は、
「あれ、斉藤先生、昨日遅かったのに、今日はまだ大丈夫ですか」
「篠田先生、まだ、6時半ですから大丈夫ですよ。
それに、先程、貴子さんから面白いお話しを聞きましたので、その続きも聞きたいですしね」
洋子は、三人の方へ向いて言った。
「父さんに、さっき貴子姉さんから聞いた話しを話してたの。
それが、ちょうど終わったところで、姉さん達が戻って来たのよ」
貴子が、手をパチンと叩いて、
「そう、それはグットタイミングだったわね。
私も洋子も、どうしたら自分の宿題が分かるかってところで話しが終わったからね。
だから、どうしても、それを父さんに改めて聞きたいのね。
ねぇねぇ、父さん、どうしたら自分の宿題が分かるの。
私達にも分かるように教えてよ」
浩一郎は、黙って考え込んでいた。
しばらくして、
「あの世からこの世に生まれ変わった時の理由、目的、まぁ宿題の中身を知る方法、その解決方法は、色々とあるが、ザックリと二つの方法がある。
一つは、ある意味簡単だが間違いを起こし易い。
もう一つは、難しいが確実な方法がある」
洋子が目を輝かせて、
「簡単な方法があるの」
「そうだなぁ、簡単だけど、いや、これも難しいかな」
洋子が、目を輝かせて聞いた。
「そうなの、父さん、ならまずその簡単方法を教えてよ」
「そうか、簡単な方法ねぇ〜」
浩一郎は、どこから話そうかとしばらく考えて、口火を切った。
「それは、まず、自分のことをよく考えて、答えを導くことかな。
この場合、自分のこととは、自分の周囲の状況も含んで、と言うこと。
つまり、自分に配られた手札と場にある手札を見て、最善と考えられる手筋を信じることかな。
しかし、カードゲームでは、その答えに至る道筋になかなか気付かなくて、そうでない道筋を選択することが多い。
このケースもそうだ。
例えば、これは比較的いい答えに至ったケースだが。
一般的に職人さんに多い気がする。
父さんは、料理人、宮大工、左官さんなどの職人さんの例を知っている。
彼らは、自分にはこれしかないと信じて、研鑽努力を重ね、気が付いたら超一流になっている。
それでも彼らはそれに驕らず謙虚に、自己の研鑽に励み、後輩の育成指導もしている。
自分の手札と場を読んで、これしかないと信じて突き進む。
どんな困難があってもね。
私もそう言う人は、すごく尊敬するし、おそらくそれは正しい解答だったのだろうね。
あぁ、それに障害を持った人もいるね。
その障害に負けず、立派に克服したスポーツ選手や芸術家が沢山いる。
また、自分や家族に不具合な状況が降りかかる、あるいは、降りかかるかも知れないと、分かっていながら、家族の理解を得て、信じた道を歩む人もいる。
なかなか、難しいことだけどね。
もちろん、名もなき市制の人でそのような人々も沢山いるだろうね。
そんな人に気付くと、自然に頭が下がるね。
おそらく彼らは、自然と気付かずに宿題の中身を悟り、その解決方法を実践しているのだと思う。
次に、これはどうかと思う例をいくつか。
ある考えに染り、それを正しいと信じて突き進む人がいる。
そして、その考えを実現するためには、その素晴らしい考えに反対する人間を殺してもかまわない。
また、多数の幸せの前には、少々の犠牲も仕方ないと考える人々がいる。
自分が国のトップであれば、それを実行し、そうでなければトップの人に、その考えがいかに素晴らしいかを説得し、説いてまわる。
結果的に、沢山の人がその犠牲になった。
また、代々自分は支配階層で、他の人は少しの自由を与えられた奴隷のような者、またその方が彼らにとって幸せなんだと考える人達、いや家系の人々かな?がいる。
彼らはマスコミや学者を操作し、世論を自分の都合のよい方向に導こうとしている。
また、それは、かなり成功している。
このケースも結果的に、多く人が亡くなったり、犠牲になっている。
また、あるケースは、これこそ自己の救済や世界平和になると訴えて、信者を募る。
そして、新しい信者を勧誘し、信者を増やすこと等が、一番の善行になり、それが世界平和に繋がると洗脳し、結果的に強引な勧誘となったりする。
それに高額な寄付などをさせたり等もある。
まぁこれも、昔からあるな。
同じようなケースで、金持ちになればなるほど、世の中を支配し管理する資格があると信じてる人々も沢山いる。
この場合、金持ちになる手段には特に制約がないようで、これも結果的に多くの人が犠牲になっていることもあるな。
これらは、自分の選択した道筋を誤っているのではないかと、父さんは思う。
目立つケースを挙げたが、もちろん、誤った道筋を信じて、周りに迷惑などをかける人々も沢山いるだろう。
これらは、いかに自分の手札と場を読むことが難しいかを示していると思うな。
世の中には、色々な考えがあり、多く場合、それが正しい道だと信じて突き進む人が多い。
その中には、あの世からの宿題の中身とその解決法とも思えないこともある」
浩一郎は、しゃべり終えて、フゥーと一息ついた。
皆んなが、しばらくの沈黙しているところに洋子が、
「なら、どうやったら正しい道筋を宿題の中身と解決方法をみつけられるの。
自分が正しいと信じていることが、間違ってるって、そんなの誰だって分かりはしないし、出来やしない。
いったい、どうやって正しい道筋を見つけるの」
「そうだねぇ〜、守護霊様や指導霊様は、間違った道に入らないように、その人の潜在意識に働きかけたり、偶然を装って色々なヒントを与えていると思う。
俗に言う、魔界の世界に入らないようにね。
でなければ、わざわざこの世に産まれ帰った意味がないからね。
父さんが知ってる、いや、思っているのは、自分と周りにあるヒントに気付くことだ。
それには、自分が正しいと驕らずに、常に謙虚な気持ちで物事に接することだ。
そして、その与えてくれたことに感謝することかな。
禅宗には、座禅も修行であるが、日常生活そのものも、座禅と同じ修行であると言う考えがある。
いや、他の宗教もそのような教えのある宗教が沢山ある。
あの世からの宿題は、常に日常の中の修行によって得られると言うことかな。
また、千日回峰行と言う修行が天台宗にある。
これは、千日に渡って山々を駆け巡り、途中でやめる時は、自害しなければならないと言う修行である。
この千日回峰行を終えた人に先輩僧は、"千日回峰行も大変な修行であるが、日常生活の方がもっと大変な修行である"と言ったそうな。
キリスト教には、世俗をたって、修道院に入って一生を過ごす人々がいる。
これもある意味で、宿題の解答を模索していると考えられる。
鹿児島に、示現流と言う古武術の剣術がある。
この教えの中に、"勝て絶対に負けるな"と言うのがあったと、あいまいだが記憶にある。
これは己れに勝て、自分に負けるなと言うことである。
真髄は、座禅でも千日回峰行でも、日常生活でも同じである。
座禅でも、今流行りのマインドフルネスでも同じである。
始めると、まず最初に色々雑念が湧いてくる。これは、潜在意識の意識が、湧いてきたのである。
まず、これが最初の自分との戦いである。
それをうまく通り過ぎると、いよいよ潜在意識の中枢になり、色々な体験をする。
神仏が見えたり、話しをしたり、状況によっては身体が大きくなったり、空を飛んだりする。
美女の誘惑や魔物、悪魔なんかとも会うことがある。
また、よこしまな考えに気付くことも多い。
これらは、深層意識からの湧き上がりの意識と、父さんは思う。
これらは、一般的に魔境、魔界に入ったと言う。
そこを通り過ぎると…… 」
どうも、人間は何かの壁等にぶつかったりした時に、魔界に入らなくても、魔界の影響を受け易いような気がすると、父さんは思ってる。
要は、日常生活の中で、いやなこと、不都合なことなど沢山ある。
これをどううまく処理するかと言う点に於いて、どんな修行とも同じであると、言うことだな。
話しがいつものように脱線したな。
ヒントを受けたければ、
宿題の中身が知りたければ、
普段から、
いつでも、
どこでも、
誰からでも、
自分を顧みる謙虚な気持ちで、
いつも、皆んなに笑顔で、
感謝やねぎらいの気持ちで接すると、
守護霊からのヒントに気付き易い。
その様な状態なら、
自ずと宿題の中身が分かり、
自然に解決方法も分かる。
と、父さんは信じている。
だって、なぜ産まれるきたか?
自然に考えるようになり、死んだらどんな世界、いや村に行くか、感覚的に分かるようになるからな。
それに、周りにはなんとか助けてあげようと、ヒントをくれる存在は沢山いるからね。
まぁ、自分の中にそれに反対するような、心の動き、情動なども沢山あるけどね。
これが、誰でもし易い簡単な方法だと、父さんは思っている。
しかし、これは簡単だけど難しいぞ。
まぁ、これが完璧に出来ると、輪廻転生の輪から離れられるらしいからな。
これは、仏教での"和顔施"と言う方法からの父さん流の考えだがな。
これが、一つの方法だな」
洋子が、イライラしながら、
「父さんの説明は、相変わらず、長くてまどろっこしくて、よく分からないよ。
ポイントは、最後に言った、
いつも謙虚な気持ちで、笑顔で、
挨拶なんかすればいいんでしょ」
「まぁ、そうだ、簡単に言えばその通りだな」
「なら、最初からそれだけを言えばいのに、何を、色々もったいぶって、ひけらかして」
と洋子は少しむくれた。
そんな様子を浩一郎は見て、まだまだだなっと、ちょっと安心した。
貴子と礼子は、途中からイライラしだした洋子を心配していたが、なんとか、おさまったようでほっとしていた。
心理学者でもあるカウンセラーの裕子は、ところどころで、考えにふけっていた。




