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3-6 トランプと手筋


「洋子は、ポーカーやセブンブリッジをしたことあるよね」


「何を突然……。

 もちろん、あるわよ。

 だって、小さい頃から家族皆んなで、七並べや神経衰弱なんかのトランプをしてて、大学生の頃にはポーカーやセブンブリッジなんかのカードゲームもしてたじゃない」


「そうだったよね〜。

 ポーカーは、5枚。

 セブンブリッジは、7枚。

 まず最初に配られるよね、それから洋子はどうする」


「そんなの、もちろん、配られたカードを見て、何を切ってどうするか作戦をたてるわ」


「それから」


「自分の手札と場のカードを見ながら、次にどんな手札を切るかなんかを考えるわ」


「なら、父さんが先に上がって、最後に洋子にこの札を切ってこれを捨てていたら、洋子の勝ちだったって言われたことを覚えてる」


「もちろん、何度もあったからよく覚えてるわ。

 あの時は、そんな手があったなんて気付かなくて悔しい思いも何度もしたわ。

 それが、どうしかしたの」


「なら、洋子は今、どんな手札をもってる」


「えっ、何、また突然!

 今、トランプのカードなんか持ってないわよ」


「いいえ、洋子は生まれかた時から、何枚ものカード、手札を持ってるわ」


「それ、どう言うこと」


「そうね、まず、一番に母さんって言う手札ね。

 それから、父さんや私、それに持って生まれた性格や才能、いや、まず一番は五体満足満で健康な身体とそれらから開花する性格かな」


「そう言う意味の手札ね、なら今はもっと沢山持ってると思うわ」


「今、洋子は深い深い井戸の底にいる。

 そんな沢山の手札を持ってね。

 さっき、井戸の底で今出来ることするって言ったよね。


 なら、今、どの手札を切る。

 今は、不思議な体験をいくつかした。

 これらも、今もってる手札よ。

 そう、斉藤先生もその一枚かな」


「そうね、そう言う意味なら、ここ数日、今まで持ったことのない手札が配られてきたみたいね。

 う〜ん、分からないわ。

 でも、仕事の手札が一番かな。

 学校に、数日休むって連絡して、その間の引継ぎの連絡をしなきゃね。

 それから、明日から細かい検査もあるだろうし、そうだ、大事なことを忘れてた。

 斉藤先生と会わなきゃね」


「いい、さっき、皆んなでカードゲームをした時、父さんがこれを先に切っていれば洋子の勝ちだったって言うこと話したよね」


「うん、したわ」


「今の手札の切り方で、見逃しはないかしら」


「う〜ん、ないと思う。

 だって、昔だって、見逃した手筋にぜんぜん気が付かなかったんですもの。

 今、他にいい手があるなんて、私には分からないわ」


「私が思うに、父さんの手札が抜けているような気がする。

 もっと、父さんと話さないといけないんじゃないかしら。

 とすると、父さんに何を聞くか、前もって考え、考えを整理しておく必要があるのでは。

 特に、今私から色々な話を聞いたでしょ。

 本来なら、父さんが洋子に話すことだと思う。

 まず、最初に切る手札は、今晩それをすることだと、私は思うよ。

 あと大切なことがある。

 さっきのカードで手筋に気付かなかったって言うことに、少し重なるけど。


 父さんは、こんな話もしてくれた。

 父さんの知っている人に、非常に仕事熱心で、その都度関係がありそうなことも、一生懸命努力してそのスキルを身に付ける人がいるそうよ。


 父さんは、その人の中に、その人らしいオリジナリティを見たらしい。

 つまりその人は、磨けはダイヤモンドのように光る原石かな。

 多少の公演活動なんかもしてるみたい、とも言っていたわ。

 父さんは、もう少し頑張って、博士号をとらないかって、そしてこれは世界で今は自分しかしらないことだって言う感動を味合わないかって。

 それに、博士号を取れば、何にも知らない人からの評価も上がる。

 今の実力スキル能力にそっちの方面も身につけないか、と。


 今、自分がしてることは、一人でしていることだけだ。

 しかし、もし肩書きついたら、活躍の場も広げ易い。

 その人の専門分野は、まだまだ社会的に認知されただけで、これから進む方向性もまだよく定まっていない。

 だから、チャンスなんだって。


 そして、自分のような能力ある人を育てたらどうか、その人のミニコピー、分身をつくり育てたら、今よりより素晴らしい充実感や満足感を得られるのではって、その人に言ったそうよ。

 自分ひとりがいくら頑張ってもやはりひとり分のしか救えないが、自分のコピーの分身がひとりでもいれば、救える人も倍近くなる。


 その人は、えぇって疑問符いっぱいの顔をして、父さんにこの人は何を言ってるのって顔になったそうな。


 つまり、その人は、その手筋がある手札を持っていることにまったく気付いてないから、つまり、そんなこと自分でも出来る可能性があるって考えてもなかったみたいよ。


 しかし、そう言う手筋がある手札を持っているからと言って、その手札を切るかどうかを判断するのは、その人自身よ。

その人が、どの様に自分の人生を送るかは、その人次第だからね。


 でも、そう言う手筋があること自体に認識かないとは別問題ね。

 なぜなら、狭い選択肢から決めることになるんだからね。


 いい、井戸の中ではいい手札を持っていても、それに気付かないことが多いし、使い方が分からないことも多いの。

 それに、よく注意が必要よ。


 例えば、今回のことに関して、父さんは斉藤先生と言う手札を切った。

 これが、洋子にとって、何を意味するか、今の私にはよく分からないとわ。

 父さんの手筋が、読めないわ」

 洋子は、貴子の話をじっと聞いて、考えていた。


 しばらくの静寂が通り過ぎたのち、

礼子が、

「さぁさぁ、貴子ちゃんも話はそのぐらいにして、今日はもう遅いから帰りましょうよ。

 洋子ちゃんも昨日の今日だし、まだゆっくり静養が必要よ」


 貴子もそれに同意して、帰り支度を始めた。

 洋子は、食器を片付ける礼子をボーっと眺めていた。


「洋子ちゃん、今のあなたに最も必要なことは、難しいことなんか考えないで、何にも考えないでゆっくり休むことよ。

 母さんは、また明日の朝来ますからね」


 貴子が、

「そうね、今晩は何も考えないで、眠りにつくことね。

 姉さんも明日今日ぐらいの時間にまたくるわ。

じゃぁね、お休みなさい」


「それでは、洋子ちゃんまた明日ね。

 お休みなさい」

と、二人は病室をあとにした。


 洋子は、父の話、斉藤先生との出会い、貴子の話などにとらわれて、なかなか寝付けなかった。

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