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1-3 物理学教授の不思議



 篠田洋子の父篠田浩一郎は、物理学科の教授である。


 浩一郎は、午前中の講義が少し早く終わったので、早めの昼食の準備を自分の研究室ですることにした。


 カバンから妻篠田礼子の作ってくれたお弁当を取り出し蓋を開けてみて、

「ふーん」とちょっと頭を斜めに傾けた。

 そして机の引き出しの中から、ナスの味噌汁のフリーズドドライを取り出し、お椀に入れてお湯を注いだ。

 お弁当にナスの味噌汁とで、昼食の準備が整った。


 浩一郎は、丁寧に合掌して

「いただきます」と。


 浩一郎は弁当を食べながら、午前中の講義や午後の講義のこと、学生達の論文の進行状況などを思い浮かべながら、昼食を終えた。

 空になった弁当箱とお椀を洗い、片付け、お茶を入れた。


 そして、ひと心地してお茶を飲みながら、窓から見える青空に浮かぶ雲をボンヤリと眺めていた。


 すると突然、身体が軽くなったような感覚が走り、その直後、

「あっ」と言う声が聞こえたような気がした。

 声は、間違いなく息子の淳一のように思えた。

 なんだか少しイヤな予感がしたが、

それ程心配することはないと思い、

また、口にお茶を運んだ。


 その内、暖かい陽気とお腹がいっぱいになったせいか、浩一郎は椅子に座ったまま、コックリコックリしだした。


 しばらくして、机の上に置いてあった携帯電話が、ブーンブーンと振動しだした。

 いつもマナーモードにしているから、バイブレターの音だけがする。


 まだ、うとうとしている浩一郎が携帯を見ると、妻の礼子からの電話であった。

 珍しいと思いながら、

何かあったのかといぶかしげに電話に出た。


「もしもし、私だが、どうかしたの?」


「あなた、今警察から連絡があって、

洋子が怪我して、

あなたの大学の救急病院に運ばれたらしいの」


「怪我って、どんな?」


「それがよく分からないの、とにかく、警察は出来るだけ早く病院に来るようにって。

私、なんだか胸騒ぎがするの。

洋子は大丈夫かしら」


 浩一郎は、ちょっと、目をつぶって、息を整えた、しばらくして。


「洋子は、まだ大丈夫だよ。 

 心配はいらない。

 自分も午後の講義の休講の連絡をしてすぐに行く。

淳一は?」


「今から淳一の運転で、病院に向うところ」


「分かった、自分も直ぐ出る」


浩一郎は、午後の講義の休講通知の連絡メールを出して、そのまま自室を出ていった。


 理学部研究棟から医学部の隣にある大学附属病院まで、はやる気持ちを抑えながら、足早に歩いて行った。

 そんなに遠くない距離を、さすがにこの時は、歩いても歩いても病院に近づかないように感じながらも脚を急いだ。

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