2-13 WRAP(ラップ)
浩一郎は、続けた。
「その前にちょっと、別の話を
精神障害の治療手法の一つに、
W R A P ラップと言う治療手順がある」
三人は、そろって、
"精神障害って何"
洋子は、
"私はとうとう、
精神障害者にされちゃったの"
裕子は、
"洋子ちゃんは、精神障害者なんかじゃないのに、いったい、何を言い出すの"
礼子は、
"なんてこと言うつもり、洋子は精神障害者なんかじゃありませんわ"
と、
三人はそれぞれ思い、浩一郎の次の言葉を待った。
「もちろん、ラップWRAPは、Wellness(元気)・Recovery(回復)・Action(行動)・Planの頭文字を取ってWRAPで、音楽のラップではない。
それにWellnessは、"癒し"とも考えてもいい。
今の洋子の状況で、何か思いあたることない」
洋子は、
「そう言えば、今の私は、裕子お姉さんやお母さんから、優しくしてもらって、あれだけ怖がったり泣いたりしていたのに、今は何ともない。
それに何とか今の状態から抜け出したいと思ってる。
つまりWellnessの段階が済んで、今はRecoveryになってActionに移ろうとしている状態かな。
第一、さっき父さんに私はどうしたらいいのと、聞いていたからね」
心理学者である裕子は、
「そうですよね、洋子ちゃんは今この状況から抜け出す方法を探していますよね。
とってもタフで立派です。
でも、私はなぜ呼ばれたのかって思いましたが、多少でもお役に立てたようで良かったです。
でも、私もこれからどうしたらいいのかしら」と。
裕子は、本当に何の為に呼ばれたのか、再度疑問に思った。
「まず、一つづつ行こう。
洋子は、人の後ろに何かボーと人影のようなものが見えるんだよね。
おそらく一般的によく呼ばれている背後霊だと思うけど。
何か、聞こえたことは無かった、洋子」
洋子は、首を傾けて考えながら、
「よく覚えてないなから、分からないけど、たぶん聞こえてなかったと思う」
浩一郎は、うなずきながら、
「そうか、見える状態と聞こえる状態は、よく似ている。
その状態の対処方法を話そう。
ちなみに、今は見えるか」と、
浩一郎は、洋子に尋ねてた。
洋子は、
「いいえ、父さんもお母さんも裕子お姉さんにも、背後に何も見えないわ」
「それは、おそらく母さんの存在が、洋子に癒やしを与えたんだね。
そして、斉藤さんの存在が、なぜか懐かしいく思って、それで気分が変わり元気になった。
見える状況と見えない状況では、なんて言ったらいいかなぁ、簡単に言えば洋子にとって、今と世界が違うんだ。
つまり、
洋子は見える世界につまり異世界に入っていたんだ。
それが、
今は見えない普通の世界に戻って来てる。
処置室で自分を見下ろしていた時も、違う異世界に入り込んでいたんだ。
おそらく、飛び降りた時もだ。
それに、飛び降りた時、向かいのビルの屋上にいた人が見えて、何か叫んでいたのは、実は淳一だったんだよ」
「えっ、淳一、なぜ」
洋子は、初めて知って驚いた。
「あの時、たまたま淳一は初めて幽体離脱してあのビルの屋上にいたんだ。
そして、洋子が屋上にいて洋子が飛び降りるのを見たんだ。
だから、あの時は洋子と淳一は同じ異世界にいたんだな。
だから、洋子は昨日から今日にかけて、
ビルから飛び降りた時、
処置で自分を見下ろした時、
この病室で背後霊を見た時と、
三っの異世界に行ってたんだね。
短時間だったけど、一種の異世界旅行はどうだった」
洋子は、投げだすように答えた、
「そんな旅行なんか、二度と行きたくないわ」
浩一郎は、それを聞いて、面白ろそうに、
「はっはっぁ〜、そうかぁ〜。
今のままでは、
また予期せぬ旅行に行くかもしれないから、そうならならように、一緒に考えてみよう。
まぁ、行動のフェーズかな」
洋子は、不思議そうに
「父さんは、物理学者でしょ。
それが、なぜ、心理学者や霊能者みたいなことを知ってるの、分かるの」
洋子が裕子の方を振り向いて、聞いた。
「裕子お姉さん、どう思う」




