2-10 死後の世界と輪廻転生
洋子が泣き止み興奮がやや落ち着いた頃、浩一郎は礼子にアールグレイを皆んなに頼んだ。
しばらくして、ベルガモットの香りで喉がうるおせたところで、皆んなが人心地着いた。
それを見計らって、浩一郎が、
「父さんは、洋子も知っているように、物理学者だ。
分かるね」
「ええ、もちろん知ってる」
「物理学者は、何でもこの世の中ことを、数学と言う言葉で表現しょうとする人間だ、分かるか」
「それは、何となく分かるわ」
「それと、物理学で使う数学と言う言葉、言語は、いわゆる特異点、例えばグラフでとんがった先のようなところや無限大になることを嫌う。
これはなぜかと言うと、特異点があると、その先、数学上どうなるか分からないからだ。
数式できちんとあらわせるといいことは、原因と結果が明確に繋がって説明できると言うことだ。
だから、物理の世界では原因結果、つまり因果律を非常に大事にする。
分かるか」
「それは、何となく分かるけど、それが今の私とどんな関係があるの」
「まぁ、まぁ、すまないが、もう少し我慢して聞いて」
「えぇ、分かったわ」
「もう少し、辛抱して、ごめんね。
物理の世界で特異点等がある時、その数式を立てるにあたって、その前提、つまり仮定していることが、間違っているのではと考える。
そして、その特異点や矛盾がない前提、仮定を新たに考えて、新しい数式を考える。
そして、より特異点や矛盾がない前提、仮定が、より現実の世界を表現していると考える。
この時、常識ではあり得ない驚くべき仮定でもその仮定がより適切に、現実世界で起こっていると考える。
ちなみに、この世の中は、9次元ぐらいで成り立っていると言う学説もある。
もちろん、反対や所説あるけどね。
今、普通の感覚では、縦、横、高さ、時間の4次元だよね。
いい、ここまでは」
「ええ、例え突飛な仮定でも、それで矛盾がなく、より多くのことが説明できるなら、その突飛なことが現実に起こっている、と言うことね」
「そうだ、洋子は良く理解してる。
なかなか、頭が柔らかくて理解力がある。
優秀だね」
「一応、父さんの娘よ。
それで、今の私のことと、どう関係してるの」
「そうか、優秀な娘で良かった。
さて、ここで死後の世界があると仮定する。
残念なが、ここからは、数式ではまだ表現できなく、定性的な話になるけど。
それを仮定すると、さっき洋子が疑問に思ったことのすべてに、適切で納得出来る答えを得ることが出来る。
それに、やり方によっては、洋子自身その答えが正しかったか、確かめることも出来る」
「ええ〜、そうなの。
例えば、
何のために生きているのかとか、
なぜ今ここにいるのかとかは、
普通、様々な意見があって、人によってはなかなか納得しないんじゃないの。
少なくとも、私が納得できる答えがあるの」
「そうだね、実はもう一つの仮定を立てると洋子も納得すると思うよ」
礼子と裕子は、静かに二人の会話を聞いていた。
本当かしらと言う顔で。
「それで、もう一つの仮定って何」
「それは、死後の世界の話がでる時、一緒によく話題になる輪廻転生の話だよ。
これも仮定しないと、生まれてくる時、実際に無から生まれてくるような感じになる。
何にもないところから、現実世界に出現することは、少しムリがある。
それより、輪廻転生の実在を考えた方が自然で、後で、答えを導きやすい。
だから、仮定と言うより、死後の世界から導き出せる一種の定理だな。
この仮定と定理で、この世の中の疑問は論理的にかなり解決できる」
「う〜ん、何だかクドいし、父さんらしいけど、要は死後の世界と輪廻転生ね。
分かったわ、だから何」




