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2-7 再会の不思議


"コン、コン"

と、病室のドアをノックする音に、

「はい、どうぞ」と、

礼子は、病室のドアを開けた。


 そこには、

淡いブルーのワンピースに白衣を羽織った、

洋子より少し年上に見える若い女性が立っていた。

 礼子が、若い女性を招き入れると、

オズオズと若い女性が入って来て、


「あの〜、私、篠田教授からお話があって、こちらに参った斉藤裕子と申します」


「はい、斉藤裕子先生ね。

 主人から話を聞いおります。

 お忙しいところ、

主人の急で無理なお願いを聞いて下さって、

ありがとうございます」


「いえ、いえ、とんでもございません。

 私で出来ることは、何でもお申し付け下さい」


 礼子は、立っている斉藤裕子をジッーと見て、

なんとなく、

主人の浩一郎がよこした理由が分かるような気がした。


 その礼子の様子に、斉藤裕子が気付いて、

「あのー、私が、どうかしましたか」


 礼子は、

「いえいえ、主人が斉藤先生にお願いした理由がなんとなく、分かるような気がしたものでね」と。


「はぁ、何でしょう。私にはサッパリ分からないのですが〜」


 礼子は、

「まだ、そうかも知れませんねぇ。

 あら、自己紹介が遅れましたね。

申し訳ありませんでした。

 私は、篠田浩一郎の妻の礼子と申します。

 こちらに丸くなって、布団をかぶっているのが、次女の洋子です」と。


 礼子が手で布団を指し示した時、 

亀が甲羅から頭を出すように、洋子が布団から顔を出した。


「こちらは、父さんのお願いで、

しなお見舞いに来て下さった斉藤裕子先生。

 ここでは、カウンセラーをされてるとのことですよ」


「初めまして、斉藤裕子と申します。

篠田教授には、以前より大変お世話になりまして、

何でも、私でもお役に立てると言うことで参りました。

 お加減は、いかがですか?」


 洋子は、カッと目を見開いて、

ジィーッと裕子を見て、

突然、泣き出した。


 裕子と礼子は、

急にすすり泣き出した洋子に、

何が起こったのだろうと、

ポカンとながめていた。


 泣き止んだ洋子は、布団から出て、

「すいません、急に泣いたりして、

私は篠田洋子と申します。


 宜しくお願い致します」と、

頭を下げた。


 礼子は、裕子にも椅子を勧めて、

ベットサイドに二人が座った。


 礼子が、

「洋子ちゃん、

さっきはなぜ急に泣き出したのかしら」と。


「だって、だって、

この人が私を助けてくれる。

 このお姉さんが!

と思ったら、

なんでか分からないけど、急に」


 礼子と裕子は、

首をかしげて、

ふうーんと言う顔をしていた。


 しばらく、間をおいて礼子が優しく、

「なんでそう思ったの?」


「なんでか分からない。

 けれど、

すごく懐かしい人に会ったような気がする。

 あさしさ斉藤先生、私達、以前どこかでお会いしましたでしょうか」


「いいえ、

多分今日が初めてだと思いますよ。

 だけど、

私も以前何となく、

篠田さんとどこかでお会いしたような気がします。

 お互い不思議ですね」


「斉藤先生、良かったら私を洋子って、呼んで下さいませんか」


「構いませんよ、洋子ちゃんね。

 なら、私も裕子と呼んで下さいな」


「ありがとうございます、裕子先生」


「洋子ちゃん」


「裕子先生」


 二人は、それぞれ名前を呼びあい、

ホホを緩ませて見つめあっていた。

 礼子は、何だか可笑しな雲行きになってきたと、二人を交互に見ていた。

 その時、ハッと、斉藤先生にお茶も出していないことに気付いた。


「ちょっと、

斉藤先生にお茶を用意しますね」


「あっ、篠田さん、お構いなく。

 それと、

私も出来たら裕子と呼んで頂けませんか」


ええっと、

驚いて目を丸くした礼子は、ひと息おいて、


「なら、私も礼子と呼んで下さいね」


「お母さん、私もお茶をちょうだい」


「ハイハイ、それなら三人でお茶にしましょうね」


 礼子は立ち上がって、簡単なキッチンまで行き、紅茶の準備をはじめた。

「今、アールグレイだけで、牛乳がないけど、いいですか」


「私は、ストレートのアールグレイでもいいですよ」と裕子。


「牛乳がないなら、ちょっと薄めでお願い、母さん」と洋子。


「なら、二人とも少し薄めにしましょうね」


 洋子と裕子、それに礼子は、

ベルガモットの香りにつつまれ、

楽しみながら気づいたら、

三人が旧知の仲のように会話が弾んでいた。

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