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お前たちが苦戦しているダンジョンのボスを育てた俺、なぜか魔王と呼ばれるようになったけど、本物の魔王は別にいるからな?  作者: 桜枕


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第5話 反逆と言われても

 母さんもあの動画を見ているなら、映っている男が俺だということに気づいたのだろう。

 だから、話を聞かせろとメッセージを送ってきたのだ。


 母さんにも同じ話をすることになると思うと憂鬱だった。

 久々の親子の会話が質疑応答なんて笑えないだろ。


 帰宅すると、すでにリビングには明かりがついていた。

 珍しい。俺が電気を消し忘れない限り、絶対に有り得ない光景だ。


「おかえりなさい。ご飯できてるわよ」


 俺は面食らってしまった。

 母さんが料理をしてるだと……!?


 たまに帰ってきても出前を頼むことが多いのに。

 母さんの手料理を食べた記憶なんてどこにしまったのか思い出せないぞ。


「い、いただきます」


 シチューを一口すする。

 美味い。美味いけど会話が無さすぎて気まずい。


 スプーンとお皿の触れ合う音だけが聞こえ、味わう暇もなく夕食を終えたとき、母さんが「で?」と会話を始めた。


「あのアーカイブ動画に映っているのはあなたで間違いないのね?」

「う、うん」

「あの魔物、強かったわね。Cランクパーティーを一匹で相手して、興味本位で入ってきた冒険者全員を病院送りにするなんて。あれはなに?」


 俺があの魔物を知っていることを前提に質問してくる姿勢は、クラスメイトや校長先生にはなかったものだ。

 俺は正直に話すべきか悩んだ。


 久々に母さんの顔を見て気が緩んでしまったのか、それとも褒められると勘違いしたのか、俺は口を滑らせた。


「俺が育てた」

「……そう」


 感想はたったの2文字だった。

 相変わらず表情の読みにくい母さんが何を思ったのか分からない。

 ただ、嫌悪感を向けられていないのは間違いない。


「うちの息子は魔物に知恵を授けたのね。それ、反逆行為よ」

「……は?」

「魔物を根絶するために日本は迷宮省を発足して、冒険者という新しい職業を作り、ダンジョン攻略に日夜励んでいるのよ? あなたはそれに反した」


 嘘だろ、そんな大事なの?


 自分がしたことの重大さを気づかされて、脱力しそうになる。

 俺、犯罪者なの?


「魔物を育てて、冒険者を傷つけて、それで満足?」

「俺たちがあいつらを傷つけたんじゃない! あいつは俺を助けてくれたんだ。見ただろ、俺は丸腰だった。相手は武装した冒険者4人だ。勝てるはずがない」

「でも、あなたは57人の冒険者を倒せる魔物を使役していた。この事実は変わらないわ。彼らが目を覚まして証言すれば、世界はシンを敵と見なす。その時にどうするのか、自分がどうしたいのか」

「俺が、どうしたいか……」


 母さんの言う通りだ。

 俺はなんで、あのうさぎを育てたいと思ったのか分からない。

 蹴られていたうさきが、柴崎にいじられる俺の姿と重なってしまっただけなのか。


「なんで、魔物と共存できないんだよ」

「…………」

「総理大臣が言ったからか? 俺はあいつと飯を食って、風呂に入って、ダンジョンに潜って、一緒に寝たぞ」

「あなたは特別なのよ」


 一攫千金を狙える冒険者や配信者になることもせず、普通に高校へ通うつまらない俺が特別だって?


「あなたは日本で、いいえ。世界で初めて大規模なダンジョン・スタンピードから生還した人間なのよ」

「それは何度も聞いたけど」


 俺は一度、死にかけている。

 なにかの奇跡が起こってこうして生きているだけで、もしかすると死んでいたか、寝たきりになっていてもおかしくなかったらしい。


 昔のことすぎて覚えていないけどな。


「それで、シンはどうしたいの?」


 俺は一度目を閉じた。

 まぶたに映るのはうさぎと過ごした、たった数日間の出来事ばかりだ。

 目を開けると、母さんがわずかに目を細めていた。


「俺は魔物との共存を実現させたい。それができることを証明する」

「そう」


 打って変わって、鋭い目つきになった母さんが立ち上がる。

 このまま警察に突き出されるのか、と体がこわばってしまうほどの威圧感があった。


「血は争えないわね。頑張りなさい。でも、こっそりと、ね」


 手をヒラヒラと動かしながらリビングを出ていった母さんは「いってらっしゃい」すら言わせてくれなかった。


 音を立てて閉じた玄関ドアの鍵が締められる。

 あっという間に俺はまた一人暮らしに戻った。


 玄関ドアを見つめ、リビングに戻ろうとしていたらチャイムが鳴った。

 俺はインターホンを確認せずに玄関のドアを開く。


「ただいま、シン」

「……は? ど、どちら様でしょう」


 そこには、この世のものとは思えないほどに美しい長身の美女が立っていた。

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