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お前たちが苦戦しているダンジョンのボスを育てた俺、なぜか魔王と呼ばれるようになったけど、本物の魔王は別にいるからな?  作者: 桜枕
第3章

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第40話 救世主ラビ

 俺は自宅のベッドに寝かされていた。

 仮面は脱がされ、服も着替えさせられていた。


「シン! よかった!」


 ウェルヴィかと思ったら、抱きついてきたのはシオンだった。


「ウェルヴィとルクシーヌは!?」

「彼女よりも先に他の女の心配をしないで」


 彼女……?

 あぁ、そんなことを言ってしまったような気がしなくもない。

 恋人になった実感は全くないけど。


「すまなかった。で、ウェルヴィはどこだ?」

「リビングにいるよ」

「2人とも無事なのか?」

「うん。戦いの後は怪我してたけど、もうすっかり治ったよ。あれから5日も経ってるし」


 5日!?

 俺は5日も寝ていたのか。

 じゃあ、あの仮面の奴と会話したのはいつの話なんだ。


 階段を降りるとウェルヴィはポテチを食べながら、ルクシーヌは器用にチーズを割きながらテレビを見ていた。


「ウェルヴィ、ルクシーヌ」

「目覚めたか」

「シーちゃん、おはー」


 よかった。

 2人とも俺の共犯者として処分されたかと思った。

 シオンも捕まっていないし、一安心だ。


「そんな腑抜けた顔をするな。見ろ、これが新しい世界だ」


 ウェルヴィに促されてテレビを見る。

 そこに映し出されていたのは、異様な光景だった。


『救世主ラビの理想とする世界の実現に向けて、各国での取り組みが活発化しています。全面的な援助を表明した鷺ノ宮エンタープライズ、および世界政府は冒険者制度を廃止し、ドミネイトネックレスを装着した魔物には市民権を与える意向を示しました』


 ニュースキャスターの言う通り、町にはネックレスをつけた魔物であふれていた。

 その姿は様々でウェルヴィのように人型で町を歩く者、ルクシーヌのように獣型で町に溶け込む者。


「ラビが救世主? それに、なんだこれ。本当に5日前と同じ世界なのか?」

「人間と魔物が共存する世界にゃ」

「鷺ノ宮エンタープライズは鷺ノ宮と新堂の企みを阻止したお前を祭り上げ、魔物を支配する世界を創ったのだ」


 これが俺の望んだ世界……。


 違う。俺は魔物を服従させたかったわけではない。

 それに魔物たち全員が納得するとも思えない。


「ウェガルミナスを見せしめにしたのだ。奴は魔王の中で一番強く、狡猾だった。あの姿を見て従わない者はいない」

「他の魔王はどうなった!? 本当にお前たち以外は狩られたのか!?」

「最後まで抵抗した憤怒ふんどのウェグロスピノも今では鷺ノ宮エンタープライズの支配下だ。厳重に拘束され、誰も救出できない」


 ウェルヴィもルクシーヌも冷静だった。

 同じ世界から連れてこられた仲間が捕まっているのに、怒るどころが受け入れているようだった。


「それでいいのかよ。ウェルヴィは元の世界に帰りたいんだろ!? ルクシーヌだって、誰かに支配されるのは嫌だろ!?」


 2人は顔を見合わせる。

 そして、静かに立ち上がり、持っていたネックレスを首元に近づけた。


「これが、わたしたちの答えだ。わたしはシンの、こいつはフランス女に支配されることを望む」

「やめろよ! 俺の望んだ世界はこんなんじゃない。対等でよかったんだ。支配とか服従とか、そんなのいらない! なんでこうなるんだよ」


 俺はウェルヴィの手からネックレスを叩き落として、自室にこもった。

 シオンだけが寄り添ってくれたが、何も話す気にはなれなかった。


◇◆◇◆◇◆


 登校中も平然と町を歩く魔物を何度も見かけた。


「あ。えっと」

「あ、おはよう。もう体調はいいの?」

「うん。大丈夫。ありがとう」


 昼休み。朝から目を合わせないようにしていた佐藤さんとばったり廊下で会ってしまった。

 俺がラビだということに気づいていた彼女との間には気まずい空気が流れる。


「冒険者ランクは剥奪だって。先生たちの言った通り、専業にしなくてよかったよ。冒険者として自主退学した人たちはこれから大変だと思う」


 言い方は悪いが、政府は冒険者切りをしたのだ。


 冒険者の育成やダンジョン攻略に力を入れていた新堂総理が失脚した上に、世界情勢が大きく変わったことで失業者が増えた。

 今では元ギルド経営者も、元冒険者も全員が無職だ。


 唯一、鷺ノ宮エンタープライズだけが魔物の管理という重要な仕事を請け負っている。


「シンくん。私も魔物と仲良くなれるかな?」

「……なれるさ。きっと」


 放課後、初めて佐藤さんとシオンと一緒に帰宅することになった。


「二人は付き合ってるの?」

「そうだよ。だから邪魔しないでくれる?」

「フランスに帰るのに?」

「それがなに? 今時、国際結婚なんて当たり前だよ?」

「もう配信者として人気がなくなったから恋愛解禁にしたの?」

「冒険者とか配信者なんて不安定な職を続けるわけないよね? だから、進路調査票には、シンのお嫁さんって書いたよ?」


 胃がキリキリする。


 やめろ、質問に質問で返すな。

 俺のいない所でやれ。俺を巻き込むな。

 

「そうだ、シンくん。先生が三者面談だって言ってたよ。進路希望が曖昧だって」

「あぁ、やっぱりか。わかった」

「私と一緒の大学にしない?」


 それなら、凪姉と一緒の大学がいいな。


「今、他の女のことを考えた」

「あの人のことを考えてた?」


 シオンと佐藤さんが同時にジト目を向ける。

 本当に勘弁して欲しい。


「三者面談か」


 自分の進路を考える前にやることがある。

 まずは母さんとの二者面談だ。


 後日、俺は一人で鷺ノ宮エンタープライズに向かった。

 前回も対応してくれた受付嬢に満面の笑みで来訪の理由を告げる。


「今日はアポを取っています。鴻上こうがみ シンが来たと伝えてください」


 今回も嘘だけど、すぐに取り次いでくれて、応接室へと案内された。

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