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お前たちが苦戦しているダンジョンのボスを育てた俺、なぜか魔王と呼ばれるようになったけど、本物の魔王は別にいるからな?  作者: 桜枕
第3章

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第37話 人類の敵

『始まりのダンジョン』の51階層へたどり着くと、ウェルヴィが神妙な面持ちでスマホを眺めていた。


「どんな状況だ」

「良くないな。新堂がお前を責め始めた」


 ウェルヴィがスマホをモニターに繋げて映像を映し出す。


『ラビの言動は矛盾しています。【色欲の魔兎まと】を育てるために魔物を一方的に倒してレベルを上げたにも関わらず、魔物との共存をうたっている。過去の彼の行いが平和式典襲撃へと繋がったのです!』


 確かにその通りだが、勘違いして欲しくないな。

 俺はウェルヴィと手を組んだだけで、魔物の味方をしているわけではない。

 それなのに、あたかも俺を人類の敵とみなしたような言い方だ。


『日本政府、およびダンジョン管理局は魔物とつくる世界平和式典でのダンジョン・スタンピードは鷺ノ宮 朝陽あさひを主犯とし、ラビを犯罪幇助はんざいほうじょの罪に問い、指名手配します』


 俺は呆然とモニターを見上げていた。


「……これが大人のやり方か。いいだろう」


 ミラージュラビットを呼び寄せ、かねてより立案していた作戦の準備に取りかかった。


「フランス女は平気か?」

「ルクシーヌには連絡済みだ。きっと逃げてここに来る」

「あのバカ猫がシンの言うことを聞いたのか!?」

「あぁ。なんでだ?」

「いつの間に……はっ! まさか、わたしを大阪に置き去りにしてバカ猫とじゃれついていたのか!!」

「別にじゃれていたわけではない。いざというときのために芸を仕込んだだけだ」

「くっそ! 絶対に許さん。ひげを引きちぎってやる」

「ちょっと、黙れ。録音するから」


 ウェルヴィが憤っている間にミラージュラビットの準備は終わった。

 あとはルクシーヌが来てくれれば問題はクリアだ。


 そのとき、ドンっと音が鳴り、51階層の壁に穴ができた。


「ルーをこんなに汚すなんて、シーちゃんは悪い男だにゃ~」

「こんのっ、泥棒猫! わたしからシンを奪ったな!」

「ふんっ。大切なら隠しておくか離れないことにゃ。奪い返したければ本来の姿に戻るにゃ」


 ウェルヴィのイライラが爆発寸前なのは分かるが、今はそれどころではない。

 仲間割れはやめて欲しいものだ。


「ルクシーヌ。早速で悪いが、ミラージュラビットを連れてフランスの『愛猫のダンジョン』に転移してくれ。ボスならできるだろ?」

「できるけど、何をするにゃ?」

「いいから、頼む。シオンはこっちに」


 ルクシーヌに鷺ノ宮エンタープライズから発売されている簡易転移石を2つ持たせる。一瞬のうちに転移が完了すると、しばらくしてモニターの映像は中継へと切り替わった。


『フランスにラビが現れました!』


 ミラージュラビットが見せる幻影のラビは『愛猫のダンジョン』の前で、俺が録音した声を再生して周囲の注目を集めた。


「これで少しは時間を稼げるだろう」

「ごめん、シン。こういうことなら、ルクシーヌを配信で見せなければよかった」


 ルクシーヌの正体を知っている者にはカラクリがバレているだろう。

 だが、それでいい。

 俺はシオンも巻き込むつもりはないのだから。


『日本の新堂内閣総理大臣は私に罪をなすりつけているようだが、鷺ノ宮社長を襲った犯人は新堂 あらた本人だ!』


 フランスにいるラビが糾弾を始めると、次々と冒険者やダンジョン管理局の連中が集まってきた。


『私はここだ。シオン・Aimer・ベルナールを利用して手に入れた魔王種、【嫉妬しっと魔猫まびょう】を倒せるのなら挑んでみろ。ただし、狩られる覚悟のある奴だけだ!』


 ミラージュラビットが見せる幻影のラビがダンジョンの中へ消えると、集まっていた冒険者たちがなだれ込んだ。


「なんでこんなことをするの? アタシは共犯者なんだよ? 最後まで付き合わせて」

「ここから出ていけ。全てはラビの指示で、自分は無関係だと証言しろ」

「いや。絶対に離れない」

「俺は大切なものを身近に置かないタイプみたいだ。よく考えれば、貰ったプレゼントは全部タンスにしまって身につけた記憶がない。そういうことだ」

「なにそれ。意味わかんない。これだからジャパニーズは! はっきり言ってくれないと何も分からない!」


 ブロンドショートカットを振り乱すシオンの肩を掴み、しっかりと目を見て彼女の想いに応えた。


「シオンが好きだ。だから、安全な所で待っていてくれ。必ず戻ると約束する」

「本当に?」

「あぁ、信じてくれ」

「アタシはシンの彼女でいいの?」

「そうだ」

「ウェルヴェリアスじゃなくて、アタシが?」

「そうだと言っている。わかったら行け」


 名残惜しそうに51階層から50階層へ向かうシオンに手を振る。

 彼女が49階層へと繋がる階段を昇り始めたことを監視カメラで確認してから、隠し通路を爆破した。


「この51階層もやがて崩壊する。ラビットたちはどこかへ避難させておけ。全てが終わったら『銀兎のダンジョン』に移そう」


 ウェルヴィは返事をしなかった。


「なんだ? 言いたいことがあるならはっきりと言え」

「わたしは大切ではないのだな」


 面倒くさっ。

 こいつにもはっきりと言わないと分からないのか。

 日本で生活しているなら無駄な知識だけではなく、もっと察する能力を身につけて欲しいものだ。


「俺たちはそんな安っぽい関係じゃないはずだ。次は俺がお前を助ける番だからな。最後まで一番近くで見届けろ」

「……わかった」

「総理官邸へ行くぞ。そこにヴェガルミナスもいるはずだ」


 先導するモールラビットに続いた俺たちは隠れ家としていた『始まりのダンジョン』を放棄した。

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