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 糸の切れ目に笑顔の音を  作者: 雨宮 凪砂
第二章 動き出す物語
1/1

第一章 狐の嘘

 スクープその言葉を聞いて悪いイメージをわく人は多いだろう。僕だってそうだ。いや違うか、そうだった。君に会うまでは、、、、


「あーもう!ネタ残ってねーよ!」部長の春瀬 華菜が部室で叫んでいる。

「部長、うるさい」ゲーム中の狐月 灯瑠が言った。

「はあー!貴様無断で部室使ってるくせになんだその言い草は!」

「いや、空き教室にたかが2人しかいないクラブが偉そうに使うなよ」

「いやそれは、、、、関係ないでしょ!」

ガラガラ

「ったく。うるさいです」

2人の目線の先にはため息を漏らした副部長の夏野 奏楽がいた

「先輩になんて言い方、、」

「そもそも、この新聞部は一応部員は10人以上いるれっきとした部活です。まあ、そのほとんどが兼部などでほぼ幽霊部員ですがね」

華菜の言葉をさえぎって奏楽が言った。

 新聞部は3年5人、2年3人、1年4人の計12人いるが、そのほとんどが幽霊部員で、3年の華菜が部長、そして2年の奏楽が繰り上がりで副部長になった。

そのことをいいように学校内で一番の不良と呼ばれる、灯瑠が部室をいいように利用している。

「奏楽ーいいネタないー」ハーフアップの長い髪をなびかせながらに奏楽に近寄った。

「ねーだろ。ってか、書いたって意味ないでしょ誰も見ないんだから」灯瑠が鼻で笑った。

「あー部長いいネタありましたよ」灯瑠の言葉にムッとなっていた華菜の目が輝いた。

「えっ、なになに」華菜の言葉に奏楽は二ッとして灯瑠を馬鹿にするように見た。

「この写真です」奏楽が見せた写真。そこにはヘアピンのついた金髪ウルフの髪を持った男の子が満面の笑みで猫にしゃべりかけているような写真だった。

「あっ、奏楽てめぇ」灯瑠が空から写真を奪おうとした。

「ほんとに不良なのかな」奏楽が灯瑠を小ばかにしたように笑う。

「ほんと性格ねじ曲がってんな陰キャ!」

「怖い怖い不良がお怒りだにゃ」

「黙れ!」

奏楽と灯瑠は幼馴染だが高校まであまり話をしていなかった。だがどういう人間なのかはお互いよく知っていた。

「はい、部長」奏楽は灯瑠の動きをよけ続け力尽きた灯瑠の横で堂々と写真を渡した

「はぁはぁマジで覚えとけよ。くそ奏楽が」

「この写真、新聞に掲載しても?」

「いいわけねーだろ!」

「でもねー灯瑠君この記事を取り消すには代わりのネタを用意しなきゃだよ」

奏楽と灯瑠の言い合いに華菜が入ってきた

「ほんと性格の悪い部だな」

「あら、おほめいただいてうれしいですわ」華菜が上機嫌に言った。

「かわりのネタだろ、、、!」灯瑠が思いついたように手をうった。

そして、次の瞬間教室を飛び出した。

「なんなんだあいつ」「さー」その後、姿を二人してぽかんと見ていた。


「用意したぞ!ここにメイド服がある!」

「「えっ」」華菜と奏楽は灯瑠から離れた。

「違う違う!これは文化祭のやつだよ!」

「えっ、それをまさか私に、、」

「それだと面白くない」

「なんですって」華菜は恨めしそうに灯瑠を見た。

「じゃあ、どうすんだ?」

「これを面白くするためには、、、お前が着ろこの陰キャ!」

灯瑠が奏楽に向かって飛び掛かった。

「ちょっ!お前マジやめろ!」

「いいね!着せちゃお!」

ガラガラ

「お前らうるさいぞ!」

奏楽と灯瑠がじゃれあっているところに加勢しようとした華菜だが教頭先生が来て動きが止まった

「「「あっ、、、」」」

3人の声がそろった。

「何してんだお前ら!夏野をいじめるな!お前ら後で職員室に来い!」

そう言い残し教頭先生が出て行った。

3人は顔を見合わせて。

「今日は、停戦な、、」

そういって、職員室に向かった。


「お前暇なん」

次の日、いつも通り部室に来ると華菜と灯瑠がいた。

「来てやったんだ感謝しろ、奏楽」

「灯瑠、調子乗んな」

華菜がため息交じりに言った。

「よく懲りずに来るな」

奏楽があきれながら長い前髪をいじった。

「あんなんじゃ懲りねーだろ」

昨日職員室に呼ばれ1時間近く説教が続いた。

「華菜ちゃんに会いに来たんだ」

「変な誤解招かないで、、」

華菜は一応学校のマドンナともいわれているくらい美女だ。

だが、灯瑠がよく部室を出入りしていることから、灯瑠と付き合っているという噂が流れた。それからは誰も華菜のことを狙わなくなったそうだ。

「今日はね灯瑠がいいネタ見つけたって言ってたから聞いていたの」

それを聞いて奏楽はきょとんとなる。

「へー、あの灯瑠が?」

「おい、今俺を馬鹿にしただろ」

「いやー、メイド服野郎にネタを持ってくる知能があるなんてなーって思っただけ」

「馬鹿にしてんじゃないか!」

「はいはい、とりあえず聞いた感じ面白そうよ」

「?」

奏楽が首を傾げた

「そうねいわゆるスクープを取ろうって話ね」

「灯瑠それはよくないぞ」

華菜から話を聞いて奏楽は真面目な顔で灯瑠に言った。

「ちげーよ。スクープは絶対に悪いものていうものじゃないし、それに俺はお前と違って人の嫌なことはしねーんだ」

「今のは言葉は見逃してやる、でどんなネタだ。」

「冬風 雪音って知ってるだろ」

「うん、あの絶対に笑わないといわれている子だろ」

そう言うと、灯瑠がにやりと笑った。

冬風 雪音、灯瑠と奏楽と同じ高校2年である。2年のクラスは4クラスあり、灯瑠は1組、奏楽と雪音は4組である。

「お前が笑わせろ」

笑顔の灯瑠がそう言った。

「は?なんで俺が」

「俺はクラス違うし、それに、、、お前のほうがあってると思う」

「そうね。それに、絶対にわらわないっていう称号を持つ子の笑顔の写真なんて撮ったら特大のスクープじゃない」

そういって華菜もニッと笑った。

「先輩命令よ!雪音ちゃんの笑顔の写真を撮ってきなさい」

「こういう時だけ先輩面、、、」

「ん?なんか言った?」

「いえ、何も」

そう奏楽が言うと満足そうに華菜はうなずいた。

「協力が必要な時は言って協力する」

そういった華菜の顔はいつもより優しくそして何かを決心するような目をしていた。

「あなたも協力するでしょ、灯瑠」

「、、、うん、できる範囲で」

「?」灯瑠のぎこちない返事に奏楽は違和感を持った。だが、聞いてはいけないことのように感じ奏楽はそのことを聞くことをやめた。


次の日、奏楽はいつもよりドキドキしながら登校していた。

教室に入ると眼鏡をかけボブの髪を揺らしながら本を読んでる女の子がいた。

早速、そこの子の席に行き。「おはよ」と声をかけた。

「?、おはよう」本を読んでいた子が顔を上げきょとんとした顔で言った。

「急に、どうしたの」

そういわれ、奏楽はなんて言おうか迷った。

「あのですね。笑顔見せてください」

「急に、、なんで」

「新聞の記事に乗せたいんです」

奏楽は、自分のコミュニケーション能力のなさに驚きつつしっかり言葉にできた。

「ああ、なるほどね。私、全然笑わないもんね。こんな感じでいい?」

そういって口角を上げぎこちない笑顔を見せてくれた。

「あっ、えっと、ありがとうございま、、」

「こら、奏楽」

感謝を伝えようとする奏楽を華菜が軽くチョップしながら遮った。

「どうしたんですか?華菜先輩」

「どうしたじゃないでしょ!直球すぎよ!」

「ごめんね、雪音ちゃ、、」

華菜は雪音を見て言葉を止めた。

「どうしたんですか。先輩」

そう心配する女の子に華菜は

「えっなにこの子めっちゃ可愛い!先輩だって!キャー、うれしい!」

喜びでいっぱいであった。


「ごめんね急に、驚いたよね」

華菜が、雪音に言った。

「いえ、全然私は、、、」

「でも、奏楽の言ってることは、嘘じゃないよ」

奏楽もうなずいた。

「俺たちの部活で君の笑顔を撮りたい。だから、協力してくれる?」

「うまく笑えてなかった、、、かな?」

奏楽は何も言わなかった、いやいえなかった。

「ううん、そういうわけじゃないよ。でも、雪音ちゃんが笑いたいって思ったとき見せる笑顔みたいな自然な笑顔がとりたいかな」

華菜は言いたいことを言ったという感じに満足げな顔をした。

「今日はこのくらいでいいかな、いやなら無理しなくていいよ。新聞部の作った新聞なんて誰も見ないから」

奏楽は華菜の悲しそうな笑みに目を疑った。いつも、自信満々の華菜が新聞部を否定的なことを言うことを見たことがなかった。

「そんなことない、、私は好きですよ」

雪音が言った言葉に華菜は微笑んで

「ありがとう。また来るね。興味があったら部室においで2階の一番奥の部屋だよ。もちろん新入部員も募集中だよ!」

そういって、華菜は立ち去って行った。

部屋の中には、騒がしいクラスから切り離されたように、奏楽と雪音の周りには沈黙が漂っていた。

「えっ、嘘やん」

奏楽の独り言だけがその世界の中で響いた。


「えっとその、あの、、、部室来てみる?」

沈黙に耐え切れなくなった奏楽が雪音に言った。

「う、うん」

「じゃあ、放課後一緒に行こうか?」

そこまで言うと、チャイムが鳴った。

「お前ら席に着け」

クラスの人達は、名残惜しそうに席に着いた。

「じゃあ、また」そう言って奏楽は、内心安心しながら自分の席に着いた。


 放課後チャイムが鳴り、奏楽は息を大きく吸い込んだ。

「よし!」

「ねえ」

「うわぁ!」

意気込みを入れ立ち上がった奏楽にいつの間にか後ろに来ていた雪音が話しかけた。驚いた勢いで倒しそうになった椅子を支えながら奏楽は、

「びっくりした、、」

「ごめん、脅かすつもりはなくて」

「あはは、だよねー。どうかした?」

「一緒に部室いかない?そのちょっと不安だから一緒にいきたい、かな」

「いいよ!行こ」

そういって2人は、歩きだした。

新聞部の部室は奏楽たちの教室から1階降りてそこから左にずっと行くと着く。

静かに響く足音を聞きながら奏楽は思う。

(華菜先輩みたいなコミュ力があればおれももう少し、、)


 部室につき扉を開けようとしたとき、

「夏野ー宿題出てないぞー」

「あっ!」

奏楽の担任の竹林先生があきれた顔で奏楽に言った。

「ごめん。先入ってて!」

奏楽は申し訳なさそうに雪音に言って、先生のほうに駆け寄った。

「お前なー成績はいいけどやることやらんと内申に響くぞ」

「すみません、いやちゃんとやってるんですよ!ほらここに」

奏楽は焦ってバックの中から課題のノートを取り出した。

「これは、『昨日の』宿題な。次から気をつけろよ!」

「あはは、次からは気を付けまーす」

奏楽は苦笑いを浮かべながら、先生を見送った。

その後ろで、起こっていることなんて奏楽は知りもしなかった。


 奏楽も雪音を追って部室に向かった。扉の前まで行くと、扉は空いていた。まだ、暑さの残る秋、少し漏れる冷房の涼しさが何か不自然なくらい寒くを感じた。

 その扉からは2人の姿、華菜は不在のようだった。その時、奏楽の目に灯瑠の姿が目に入った。

「おい、とも、、」

「おう、奏楽どうした?」

そこにはいつもの灯瑠はいなかった。なにか別の人のように感じた。

「いや、なんでも。悪いなつれてくるっていてなくて」

「いやーびっくりするだろ!急に華菜ちゃん以外の女が来るなんて。先行っとけよ」

「すみません。急に驚きましたよね。秋宮君」

雪音が申し訳なさそうに言った。

「秋宮、、、おまえ」

「えっ、まさかお前苗字忘れたのか」

そういって、灯瑠は笑った。だがその目には光がなかった。

「は?ホントにどう、、」

「やあ、みんな待たせたね!学校のマドンナの華菜様が登場だ!」

奏楽の言葉を華菜が遮った。

「男どもしごとだ!職員室にあるホワイトボードもってこい!」

「なんで急に」

華菜のいきなりの発言に奏楽は戸惑った。

「たぶん用意してあるから、なかったら今年から顧問になった東先生、えっと眼鏡かけてちょっとだけ背が高く見える人」

「俺、知ってます」

「よしじゃあ一緒に行ってこい!」

そういって華菜は奏楽と灯瑠を教室から追い出すように外に出した。奏楽は何が起こったか全く理解できなかった。なぜなら教室を出た先すでにホワイトボードがあったからだ

「は?」

「悪い。」

灯瑠のいきなりの謝罪に奏楽は戸惑った。

「灯瑠今日大丈夫か?」

「ああ、心配かけたな」

いつも通りじゃない灯瑠に奏楽は不安そうに瞳を揺らした。

「冬風さんと何かあっ、、いや、やっぱ言いたくなった時でいいや。その時に教えてくれ。」

そういって奏楽は笑った。


その言葉に、さっきまで陰っていた灯瑠の瞳に、光が宿るように見えた。


「誰だってつらい過去があるよ。だから何も言わない。何も言えない。だけどね、辛くなったら言えばいい頼ればいい。だから、、、」

そういって僕を見る優しい瞳。前を向くきっかけを僕にくれた瞳。

そっか頼ればいいのかなと思った。


「もう大丈夫だ」

そういって笑った灯瑠の瞳に嘘なんてなかった。

そして笑って

「今日から俺の名は秋宮灯瑠だ!」と宣言した。

「まあ、お前の名前なんてなんでもいいけどな」

灯瑠が本調子に戻ったと分かった瞬間、奏楽もいつもの調子に戻った。

「なんだと!やっぱ全然似てねぇよ!」

「はっ?!何の話だ!」


そのまま、数十分言い合っていると、

「おい!後輩ちゃんたちなにさわいでるんだ!」

そういって教室から顔を出した華菜は、灯瑠を見て安心したような笑みを浮かべた。

「あはは!変わらないね君らは」


「てか、何の話をしていたんだ」

「うーんとねー。キャンプ行きたいねーって話してたね」

奏楽の問いに華菜が答えた。

雪音も小さくうなずいた。

「どうやったらその話に持っていけるんですか」

「ははは!私と雪音ちゃんは相性が良かったのかもね」

さすがだなと、奏楽は思った。

「ということでキャンプ行きますか!」

「「「へ?」」」

3人の声が重なった。

「先生の許可は私がとる!というか新聞部は何もやらなすぎて部費が有り余っているんだ!」

「堂々と言うことかそれ」

灯瑠はあきれたように言った。

「で、君らはどうしたい?」

「文脈が、、まあいいか、それでこそ部長だ」

華菜の問いに戸惑いながらも奏楽は

「俺は行きますよ!面白そうですし」

「おーさすが!雪音ちゃんと灯瑠は?」

そういいながら振り返って雪音と灯瑠を交互に見た。

「えっと、俺新聞部じゃないです」

「わ、、私も」

そういいながら灯瑠と雪音は華菜を見た。

「細かいことはいーの。君らはどうしたいって話。先生には、仮入部者とか入部希望者とかその他もろもろ言い訳できるから」

悪い笑顔を浮かべた華菜が言った。

「じゃあ、俺は行けるならいきたいかな、、、」

「私は、、わからないです」

曖昧な返事をした2人に華菜は嬉しそうに、

「了解!2人とも参加ね!」と、言った。

「ほかの幽霊部員どもにも声かけてやるかー。あっ!その前に先生に許可撮らなきゃ!」

そういいながら、キラキラした笑顔で教室の扉まで行き、みんなのほうを振り返って、

「今日は解散みんな仲良く帰っねー!じゃあね!」

そう言い残して、教室を出て行った。

取り残された3人は「じゃあ帰るか」と言って歩き出した。


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