竜と姫が、月を仰ぎ見る。その7
「ああ? ……冒険者だぁ?」
次の日。
昼休憩のときに飯食いながら冒険者制度のことを訊いたら、おっさんがめちゃくちゃ不機嫌になっちゃった。
「知らねえよ。チッ……胸くそ悪い」
ぷんすこしながらおっさんはどこか行ってしまった。
え、なんで?
そんな忌み嫌われる職業なん?
「将来は転売ヤーになりたい」って言ったわけでもないのに……。
「いやあ、今のカーターさんには禁句なんだよ、“冒険者”は」
ひげ面の兄ちゃんがそう教えてくれた。
この人優しくて結構好き。
ちなみに二秒で忘れていいけどカーターっていうのはおっさんのことね。
「なんかあったんすか?」
「いや、あの人の娘さんが半年くらい前にね――――」
「ッッッッヒロイン!!!!」
「うわびっくりしたあ!!」
「……すんません、ヒロインの波動を感じて取り乱しました」
「ええ……なんか怖いね君……まあ、いっか。それでね――」
要約すると、おっさんの娘が反対を押し切って冒険者になった、ということらしい。
なるほどね。
やっぱ俺のヒロインってわけだねえ!
「ちなみに可愛いんすか?」
「僕は見たことないけど、美人さんらしいよ」
ムホホ!
こりゃあ出会う日が楽しみですなあ!
などと鼻の下を伸ばしていると、労働時間があっという間に終わった。
いやあ、今日のところは来なかったな、ヒロイン。
だがフラグは建ったはずだ。確実にな!