竜と姫が、月を仰ぎ見る。その5
天気は晴れ。
絶好の無双日和である!
サイズの合ってない服をベルトとシャツインで対処しながら、意気揚々とおっさんの後をついて行く。
結構高いコンクリっぽい建物とか、街路樹なんかもあっておしゃれだ。
昨日も思ったがやはり、文明レベルはけっこう高そうな感じ。
ド○クエよりF○的な?
ゲームだったらビジュアルブック欲しくなるかもしれん。
なんとなく農業チートって感じじゃなさそうだ。
つっても、俺にある農業知識なんてマジで馬鈴薯しかないから要求されても困るけど。
「――おい、ついたぞ」
おっと。
考え事をしている間に、どうやら冒険者ギルドについたらし――――。
「………………は?」
「おーい、おまえら! 今日の助っ人だ!」
いやいや、なに言ってんの。
ちょっと待てや。
一歩下がって周囲を見渡す。
なんか道の真ん中に置いてある鉄製の蓋に、それが嵌めてあっただろう穴。
人の出入りを制限する立て看板。
以上。
…………いやここ、全然冒険者ギルドじゃねえじゃん。
“道”だよ。
なに「ついたぞ」って。
ついてねえけど? でもなんかおっさん一歩も動かなそうだけど?
あとなんか男たちがワラワラ寄ってきたけど?
どどどどどういうこと?
周りにいる男たちの格好を見てみる。
ヘルメット、軍手、スコップ――――。
「あ」
…………分かった。
いま、ようやく、分かった。
…………たしかに、おっさんは一言も言わなかったな。
ドラゴンとか。
冒険者とか。
言わなかった。
けどよォ……。
なんで普通に土木工事の手伝いする流れになるんだよ!?!?
「ちくしょア!!!!」
またやられた!
くそったれめ!!
なぜ普通にできない!?
そんなに難しいか!? ごく普通に無双させるのがよォ!?
「よし、じゃあ新人はここ掘ってくれ」
「ォア!!!」
いつ始まるんだよ俺のローファンタジー!
異世界まで呼び出して道路工事させんなよ!! オラオラオラ!
「はあ……はあ……」
「お、もうそこまで掘ったのか。スジがいいねえ」
「ど、ども……」
べ、別に嬉しくなんてないんだからね!
みたいにそっぽ向いちゃったけど本当は普通に嬉しい。
考えてみれば、俺の人生でいくつ社会に認められた経験があったことか。
……いやでもやっぱ釈然としねえな!
インフラ整備は現地の人でやってくれますかねえ!?
せっかく異世界から呼んだんならもっとあるじゃん、無双させどころがさあ!