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竜と姫が、月を仰ぎ見る。その13
「な…………」
……なにが起きているのか、分からなかった。
「なんだよ、これ……」
笑うべき場面なのかと本気で悩むほどに、それは唐突だった。
例えるなら、霧の立ちこめる道を歩いていたら、急に絶壁が立ち現れたような……。
いや、違うな。
道だと思っていたら、足下は生のモルタルで……。
……ごめん、うまいこと言えないからもう例えはやめる。
とにかく、今までのワクワク日常編が始まるぜ! みたいな空気が一瞬にして蒸発したのだ。
気づけば、看守は表情を無くし、焦点の合わない目でこちらをただ見ている。
……まるで、立ったまま意識を失ったように。
そして、その異様な雰囲気の元凶は――。
「おとなしくしてください。
今この場では、私の方が強いので」
リーンは、そう警告した。