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竜と姫が、月を仰ぎ見る。その11


 とまあ、なんだかんだでワイワイしていると、目的地についた。

 いやまあ、警察署を目的地って言うのはなんとなく嫌だが……。


「……拷問とかされないか?」


「あー……たぶん?」


「いちおう、そういうのはないことになってるね。

 いちおうは」


「…………」

 

 今すぐ猛ダッシュして逃げた方が良いのではないかと思わされる素敵な反応だ。


 でもまあ、建物は綺麗でまがまがしいオーラはない。

 地方の公民館っぽい趣はちょっとある。

 そしてやっぱりファンタジー感はあんまない。クソァ。


「――それじゃ、達者で」


 イザナが軽くグーパンしてくる。

 おっさんの知り合い補正と小粋なトークで、絆レベル3くらいにはなったのかもしれない。

 前途は不安だが、喜ばしいことだ。


「疑いが晴れたら、またどこかで会うかもだね」


 というか絶対必ず確定ですぐに会うことになるよ、ニチャア……。

 という表情を隠し、「……だといいな」と返すにとどめる。


 もう逃げられないよぉ……お前は俺のヒロインなんだからねえ……。


 というのはいいとして、マジで取り調べが不安になってきた。

 しかしいまさら係員を殴り倒して逃亡ルートが取れるはずもなく、おとなしく留置所にぶち込まれることになった。


「ここが異世界留置所か……!」


 斬新で情景が目に浮かぶような最高のレビューをしようと思ったが、異様にモノが少ないので描写できる箇所もない。

 ごめん。

 あ、なんかテーブルが置いてあってそれは珍しいと思った。

 普通こんなもんか?


「――あれぇ……? 新人のひと……?」


「ぎぇぴ!!」


 心臓が止まるかと思った。

 よく見たら隅に女がいた。備え付けの謎素敵家具かと思っていた。


「……なぜそんな隅っこに……?」


「ええー、ひっく。

 誰だって身に覚えのない罪でひっく。

 捕まえられたら、ひっく。

 嫌にもなるよぉ」

 

 俺と同じ境遇で同情心が湧き出てきたが、それはそうと酒臭い。清廉潔白とは言いがたい気がした。

 しかし、酒豪キャラねえ……。


 うーん…………。

 ………………うーーーーん。

 

 …………いいじゃん!


 本命にはならないが、賑やかしにはちょうどいい。文章全体が華やぐっつーか。そんな便利キャラだよね。

 あと見た目が可愛い。可愛いのにおじさんみたいというお手軽なギャップがある。


「ひっく、まあ、ちょっとの間仲良くしよー。

 あたしはリーン。

 おにーさんは?」


「レイヴンだ」


「ほえー、かっくいー」


 リーン、ね。

 特に面白みのないキャラだが、どんどん登場人物に華が出てきて嬉しいぜ。

 へへ、段々分かってきたじゃねえか……異世界転生のキホンってやつがよ……。


「で、おにーさんは? なんでここに?」


「殺人」


「へ?」


「……の、容疑な。俺も身に覚えはない」


「なあん! びっくりしたなー!」


「ちなみにおねーさんは?」


「ん? あたし?

 あたしはここにちょっとした用があるんだあ! アヒヒ!」

 

「あ、そう……」

 

 どうにも、ただ警察が酔っ払いを保護しただけっぽい。

 あとその笑い方は文字にすると映えないからやめた方がいいと思う。

 念のためにもう一度言っておくと、見た目はマジで可愛いんだ。

 ちょっと丸顔で愛嬌がある感じで。


「……いやあ……ヒマだね~」


「そうだな~」


「…………」


「…………」


 会話が途切れる。

 そんな……あり得るのか……酒豪キャラなのに会話が続かないことが……。

 さっきまであんなフレドリーに接してたじゃん……。気まず……。


「えーっと、リーンは普段なにやってるの?」


 これは前代未聞の出来事だと思うんだが、酒豪キャラに話題を振る羽目になった。

 たぶん俺が人類史上初だろうな。


「あー、あたしはねえ、学生!」


 学生!

 にわかに学園要素の香りが漂ってきて気分が良くなってきたなあ!


「魔法か!? 魔法学園なのか!?」


「え、いや、まあ魔法の授業とかもあるっちゃあるねー」


「リーンは使えるのか!? どうやるんだ!? 教えてくれないか!?」


「あははっ、熱量すごいねー。

 興味あるのー?」


「あるあるある、すごくある!」


「そっかー!」


「そうなんだ!」


「…………」


「…………」


 …………だからなんでそこで沈黙が流れるんだよ!?

 もっと広げられる感じだっただろうがよ!

 こいつ会話下手くそすぎだろ!

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