偵察と解決策
第六話です!
主人公の活躍もあるよ!多分ですけど…
それでは、本編をどうぞ!
「と、着いたか…」
博士の研究所から出た俺はすぐに周りを見渡す。
周囲に人影はなく、近くから爆発音のようなものが聞こえてくる。
「まだ戦闘中なのか…美希さんとの約束だし、さっさと状況を把握して帰るか」
そう言いながら、物陰から戦闘を観察する。
観察した先には4人の対魔部隊の人が魔法をぶつけ合うし、時には魔力で出来た剣をぶつけ合っているわで凄まじいものだった。
「うわ、周りの被害とか全然気にしてないじゃん…とりあえず、あの人達の魔力を視るか」
そう言いながら、俺は周囲の魔力を視る。
俺はどうやら魔力や魔力の流れを視る能力に長けているようで、美希さん曰く、この能力はかなり貴重なものらしい。
魔力の無効化もこれを応用したものだ。魔力や魔力の流れを視て、その対象の魔力の中心に干渉することで魔力を無効化している。
美希さんはそれを基にして、ぶつけるだけで魔力を無効化できる破魔弾を作り上げのだからすごいと思う。
「うん?あの人達のとは違う黒い魔力があの人達を覆っている?しかも、その黒い魔力に操られてる…あの黒い魔力の発生源が知りたいな」
そう考え、魔力の発生源を探す。
すると、黒い魔力はこの周囲を囲むように4つの建物の屋上にある装置に宿っていて、しかもそれとは別の建物の屋上から黒い魔力を放っているのが視えた。
「なるほど…あそこから黒い魔力の持ち主が魔力を流し、それを4つの建物の装置を介して周囲を結界のように囲み、黒い魔力を使って人を操るってわけか」
なるほど、姑息というかなんというか…ただ、作戦としてはなかなか厄介だ。
自分の姿を晒さずに済むし、仮に今の状態で対魔部隊の人達が全滅しても、真犯人は捕まらず、対魔部隊や街が被害を受けるだけだからな。
俺みたいに魔力が視える人間がいなきゃ判別の仕様がないし。
「さて、どうしたものか…想像以上にやばい事態なんだけど…ん?あの人も対魔部隊の人か?」
ふと、視線を向けた先には別の対魔部隊の人の姿があった。
遠目から見るだけではどんな人かわからないが、魔力を視る限り、少なくとも操られてはいなさそうだ。
何であの人は操られてないんだろう?というか、よくよく考えると俺も操られてないわ…何か条件でもあるんだろうか?
まぁ、今はそれは良いか…とりあえずあの人に接触してみよう。
そう思いながら、慎重に近づいていく。
「あの、すみません…」
「民間人が何故ここに!?今すぐ避難しろ!」
そう俺に警告してくるのは対魔部隊の女性で、キレイな長い黒髪のクールな印象を受ける美人だった。
と、見惚れてる場合じゃなかった。
「僕みたいな、ただの民間人の言葉を信じてはくれないと思うんですけど、今の状況をなんとかする方法があります」
「何をわけの分からないことを!良いから、君は早く避難を…!」
「僕には魔力が視えるんです!そして、あの人達を操っている人の場所もわかってます!」
「そんなこと信じられるわけがないだろう!これ以上世迷い言を口にするなら、力づくでも――――――」
「じゃあ、このままあの人達が争いあっているのを黙って見てるつもりですか?」
「それは…だが、君の言葉が真実とも限らない…確証のない情報で動くわけには…」
「それでもお願いします。信じてください」
俺はそう言うしかない。
美希さんとの約束もあるが、そもそも戦闘経験がない俺では魔力犯罪者と戦うなんて無理だしな。
このまま逃げ帰るのも有りだけど、放置してたら俺達にもいずれは害が及ぶ。
ここで、この人になんとかしてもらう以外に方法はない。
「…わかった、信じよう。どちらにせよ、今のままでは手詰まりだ。なら、試せる手段は全て試すべきだ」
「ありがとうございます!場所はあそこです!」
「あそこか…では、行ってくる。後はこちらに任せて、君は早く避難してくれ」
「わかりました!すみませんが、よろしくお願いします」
俺の言葉を聞いた対魔部隊の女性は、凄まじいスピードで俺の示した目的地に向かって行った。
「よし、俺も帰るか…」
そうして、踵を返そうとした瞬間。
目の前に、先ほどまで争いあっていたはずの4人の対魔部隊が立っていた。
「嘘でしょ…!」
俺がそう呟くと同時に4人同時に攻撃を仕掛けてきた。
俺は咄嗟にそれを躱し、距離を取る。
(さぁて、どうしようか…いくらなんでも分が悪すぎる…!いや、こういう時こそ冷静に、だな)
そう考えながら、さらに思考を働かせる。
状況は圧倒的に不利…とはいえ、真正面からやり合う必要はなし、問題はどう逃げるかだけど…破魔弾をぶつけられれば何とかなるか。
相手の動きを予測できればそれも簡単なんだけど…動きを予測…そうか!
魔力の流れを視るんだ!対魔部隊は当然、魔力を用いて戦闘を行う…魔力を使うのであれば、魔力の流れが発生する。なら、それがわかれば相手の動きを予測できる…はず!
「とりあえず、やるだけやってみるか!」
そう判断し、相手の魔力の流れを視る。
対魔部隊の人達は、いつの間にか前後に2人一組になって別れていて、まず前方の2人が攻撃を仕掛けてくる。
魔力の流れから相手が魔力で作り上げた剣で攻撃してくることがわかる。
次いで、後方の2人の魔力を視る。それを視ると、魔法を放とうとしているようだ。
なるほど、連携が取れてるな…もし、目の前の2人の攻撃を上手く躱しても、後方の2人の魔法の餌食というわけだ。
俺はそう思考すると、まずは2人の攻撃を回避し、ベルトのケースから破魔弾を2つ取り出し、斬り掛かってきた2人にぶつける。
そして、それを待っていたと言わんばかりに後方から魔法が放たれる。
俺は放たれた魔法に破魔弾を一つぶつけ、それを消しさる。
そしてそのまま接近し、破魔弾を2つぶつける。
「よし、とりあえずこれで大丈夫かな?というか、破魔弾って相手が放った魔法にも有効なんだ…これは新しい発見だな。博士にも報告しとこう」
あれ?無意識にやってたけど、破魔弾が魔法を無効化出来なかったら、危険だったのでは?
俺の直感に感謝だ。いや、今度からはもっとちゃんと検証してからするべきだな。
「あれ?私は一体何を…って、先輩!何で周りがこんなにボロボロに?」
俺が心の中で、反省していると対魔部隊の女性が困惑した声を上げる。
「私に言われても困りますよ!え、本当にどうして?」
「お前達、一旦落ちつけ。アタシも理解できていない」
「誰かぁ、事情を説明してよぉ!」
1人の困惑の声を皮切りに他の人達も困惑の声を上げる。
というか、この人達もそうだけど、さっきの人も女性の方だったよな…女性だけの対魔部隊なのかな?それとも先遣隊みたいなものか?
まぁ、とりあえず魔力を視てみるか…破魔弾を食らっても何故かピンピンしてるのが気になるし。
そうして魔力を視ると、先ほどまで彼女達を覆っていた黒い魔力が消え去っていた。
なるほど、破魔弾によって無効化されたのは黒い魔力ということか…複数の魔力が流れているときは1つしか無効化できないわけね。
このことも報告しないとな…まだまだ改良の余地がありそうだ。
「あ!君!もしかして、何か知ってる?」
「はい?僕ですか?」
先ほど、真っ先に困惑の声を上げた対魔部隊の女性がそう声を掛けてくる。
その声に釣られて、他の対魔部隊の人もこちらに視線を移してくる。
にしても、皆さん可愛いな…惚れちゃいそう!…うん、俺のキャラじゃないわ。まぁ、皆さんが可愛いのは事実だけどね!
さて、おふざけはこれぐらいにして、真面目にどうしたものか。
時間もないし、仕方ない…要点だけそれっぽく伝えて帰ろう。
一応、中継機みたいなやつを壊してもらえるようにも言っておこうかな。
破魔弾の効力は約5分間だけだ。効果が切れる前に破壊しておかないと危険だ。
間に合わなかったらまた黒い魔力に操られるかもしれないし。
「えーっと、どうやら皆さんは謎の魔力に操られていたみたいで、操っていた奴をあそこに居た隊長さんっぽい人が倒しにいきましたよ」
「隊長が!?アタシ達もすぐに向かうぞ!」
「あぁ…隊長さんから伝えてほしいと言われたんですが、皆さんには4つの建物の屋上にある魔力の中継機を破壊してほしいらしいです」
「4つの建物ですか?」
「はい。あそことあそこ、後はあっちとこっちに」
「わかった!じゃあさっそく行ってくるね!ありがとう!」
なんというか、元気な人だな…さっき、他の人に先輩と言っていたから、あの部隊の中で最年少なのかもしれないな。
まぁ、だからなんだと言われたらそれまでなんだけど。それにしても、皆さん俺の話をあっさり信用しすぎでは?
隊長さん、あなたの信頼を利用して申し訳ないです。
本当にすみません。
そう心の中で謝罪しながら彼女達を見送り、俺はようやく研究所に帰ることが出来たのだった。
といった感じの第六話でした!
それでは、今回はここまで!ここまでの拝読ありがとうございます!