1話「桜丘オニ」
ここは東京の西。2023年、この地域は政府の「地名変更令」により”旧東京”となった。東京の東は”新東京”となり、そこには先進的な文化が既に根付いていた、、
今日は晴れのち曇りだとテレビニュースが報じた。桜丘オニは昭和時代から続いている蜘蛛の巣が貼っている喫茶店でそれを横目に見ながらパフェを頬張った。
「マスター、もうひとパフェ」
「あいよ」
西東京に学校はない。政府は東東京のみに教育援助をしているのだ。ただオニは科学者である父親から教育を受けていたため、中学までの知識はあった。
「ありがとうございやした」
「腹は満たされた。次はあいつらのところに行こう。」
歩いて行くと、群衆が座り込んで話をしていた。
「俺たちも機械人間になろうかなあ」
「やめとけって、ぜってえ恐ろしいやつだ」
「けどなあ、あれえやるだけで人間が持てねえような力を手に入れられるんだぜえ」
「優れている部位ひとつだけ、強化してくれるだけだろお?」
「いいやあ、そうじゃねえだろお、きっとお、もっとおすげえぜえ」
「おお、オニ!」
「おめえもそう思うだろお?」
「俺は反対ですね。親から貰った体なんで」
「りぃちぃぎだぁなあ」
「とにかく俺は反対ですよ」
「皆さんもやめてくださいね、あれをやってもさほど力は変わらないでしょ」
「りぃちぃぎだぁなあ!!」
冗談じゃない。あれは昔法律で禁止されていた物だぞ。
「あ、オニ!」
「オニだ!」
「なにしてたの?」
「おお、お前たち、無事だったか」
俺はこいつらを”育てて”いる。いろいろな意味で縛られていたからな。
「きゃああああ!」
「どうした、ルイ!」
「おおおお、おとこのひとたちが、、!」
「東東京の奴らだな!ボコボコにしてやる!」
「でもやつら、きかいにんげんだよ!?」
「大丈夫!任せろ!」
黒いパーカー。白いズボン。頭を隠すようにする金色の帽子。特徴的な東東京人だ。そしてこいつらは、、機械人間だ。
「オイ西東京のヤツウ、そいつらを渡せよお。報酬はこんだけあるぞお、、」
「へっ、いらねえなあ。こいつらを働かせるんだろう?東東京で。」
「イヤイヤイヤ、貴重な子どもたちに、上質な教育や環境を与えるんですよお?」
「おい機械人間、覚悟しろよお?」
「エ?」
「ボ、帽子があっ!」
「改めて機械人間、本番だア。」
「エ?」
「カ、体があ!」
「なあ機械人間、まだやるかア?」
「マサカ、、」
「コイツウ、ウワサのばっけもんだあ!!」
「逃げろゥ!!」
「芯がない奴らめ、早く帰れ!」
「見事だ、桜丘オニ。」
「え?誰だ?」
「俺の彼女になれ」
「え?」