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不全刀の透過性  作者: 斗話
6/8

入学試験?

 

 カタギリに連れられて向かったのは、校舎に併設された運動場のような場所だった。ただ、四方八方が壁に囲まれており、何かの実験場のようにも見えた。


「俺、授業を受けにきたんですけど」

「不全刀についてはどこまで知っている」


 ハルシの声を遮るようにカタギリが言う。ハルシは不貞腐れながらも帯刀している不全刀と呼ばれるそれの柄を握り、抜いた。何度見ても違和感がある。――その刀には刀身が存在しない。


「対魔剣士のために生まれた不完全な刀」


 数日前に聞いたセリフをそのまま繰り返す。実際、ハルシは不全刀の知識をほとんど持ち合わせていなかった。


「分かってるなら説明はいらないな。じゃ、刀身出してみて。出せたら授業に参加させてやる」

「よっしゃ!」


 勢いよく返事をしたものの、どうすれば刀身が出るのかを知らない。


「出ろ!」


 柄を頭上に掲げて叫ぶ。これまでにハルシが刀身を出せたのは一度だけ。それに――


「……えーっと、それは出てる状態なのか?」

「分かりません!!」


 ――ハルシの刀身は透明だ。


 カタギリが刀身があるはずの空間に手を伸ばす。


「あ、全然出てないね」

「どうすれば刀身を出せるんですか」

「すぐに答えを求めるのは良くないねぇ。まぁ習うより慣れろ、ってことで」


 どこから出したのか、カタギリが黒いボールのようなものを投げてきた。


「何ですかこれ」


 多少の弾力があり、表面はツヤツヤとしている。


「悪魔だ」

「は!?」


 黒い球体の表面に亀裂が入り、鋭利な歯を持った口が現れる。


「うわぁぁぁ!!」


 思わず投げると、球体の悪魔は空中に浮遊したまま、ハルシ目掛けて凄い勢いで突進してきた。

 間一髪で避けると、数メートル先で止まった球体の悪魔は、キョロキョロと周りを見渡した。


「何ですかこれ! 悪魔が学校に!!」

「大丈夫。そいつ噛まないから」


 ハルシが柄を握り直すと、球体の悪魔が再び突進してくる。ギリギリで避けながら柄を振るが、刀身は現れず、頭に直撃する。


「痛ぇ! 普通にめっちゃ痛い!!」

「じゃ、頑張って〜。俺、他の生徒に授業しなきゃいけないから。あー忙しい忙しい」

「ちょっと! カタギリ先生!」


 カタギリはすでに歩き出している。

 球体の悪魔を見ると、その矛先がカタギリの方へと向いていた。ハルシがそれに気づいた直後、球体の悪魔はカタギリめがけて突進した。


「危ない!」


 考えるより先に身体が動き、カタギリと球体の悪魔の間に身体を滑り込ませる。両腕で受けたものの、盛大にカタギリの背中目掛けて吹き飛ばされる。

 カタギリは振り返ると、右へ一歩進んだ。


「痛ぁぁぁ!」


 地面に背中から激突する。


「痛そ〜」


 他人事のように呟きながら、カタギリは再び出口に向かい歩き出す。

 球体の悪魔は既に、ハルシへ狙いを定め直していた。




 薄暗い廊下を歩きながら、カタギリは一時間ほど前に見たものを思い出していた。

(見間違いじゃないよな……もしかしたら……)


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