表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不全刀の透過性  作者: 斗話
3/8

悪魔

 

 神楽通りはそれまでの活気を失い、静寂があたりを包み込んでいた。


 ハルシとトウキがゆっくりと通りを歩いていく。


「ばあちゃん……」


 八百屋まではもう少し。ハルシの鼓動は一歩一歩足を進めるごとに早くなっていった。

 トウキがふいに足を止める。


「下がっていろ」


 トウキの視線の先には、まるで人間のような姿形をした悪魔が立っていた。人間と大きく異なる点がある。まず顔には目や鼻がなく、不気味な口だけがついていた。そして、手首が地面につくほど両腕が長い。


 悪魔はゆっくり両腕を前に伸ばした。


「くるぞ!」

 

 悪魔は長い腕を松葉杖のように使い、トウキ達めがけて突進してきた。

トウキが脇差に手をかけ、刀を抜いた。不全刀だ。鞘から抜かれた途端、柄から刀身がメキメキと組み上げられる。

 そのままトウキが悪魔目掛けて走り出す。

 ぶつかる! ハルシがそう思った瞬間、トウキは悪魔の背後に立っていた。そして、思い出したように悪魔の両腕が胴体からポトンと落ちた。


「これが……対魔剣士」


 ハルシは拳を強く握った。


 悪魔がゆっくりとトウキの方を振り返る。


「まだやるか」


 そうトウキがつぶやいた瞬間、両腕の無くなった肩の断面から腕が再生した。先ほどより一回り、いや、二回り以上太く、長い。

 悪魔は再生したばかりの腕を乱暴に振り回す。悪魔の両腕はあたりの家屋を壊した。


「……!」

「八百屋のばあちゃん!」


 崩れた家屋に老婆が下敷きになっている。

 悪魔の口が大きく横に裂けた。悪魔は左手で老婆を掴むと、そのままトウキ目掛けて薙ぎ払った。


「くそ…! 斬れない!」


 トウキはそのまま悪魔の腕を受けた。指で弾いたおはじきのように、トウキの体が飛ばされる。


「卑怯者め……」


 立ちあがろうとするトウキだったが、右足に強烈な痛みを感じ、体勢を崩した。悪魔が右腕を腕を振りあげる。俺は死ぬのか。トウキが死を悟った瞬間、悪魔の動きが止まった。


「ばあちゃんを離せ!!」


 ハルシが悪魔の首元に四肢を使いしがみついている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ