エクリ・チュールは再来島を計画していた
エクリの就職先、というより全員の就職先が決まった日、祝賀会が開かれた。そこで、ラングゥと話しをしているついでだった。
「だんだん時化が収まったら行こうと思うんだ」
「どこへ?」
「これが本当に望んでいるところ」
エクリは、鞄から出した記号器の画面に、あの栞を映し出した。
「立春過ぎて何日か経てば、冬の時化も収まり、それほど揺れない航行の日もあると思うからさ」
そう言って栞の映る記号器を掲げるエクリに、
「そうか。なら俺も行く」
思わぬラングゥの同行提案に
「なんで?」
どんぐり眼で驚いてしまった。
「興味を持った、ということだ。エクリがさんざん俺に聞いて来たじゃないか。その結果を、エクリの発表内容も聞いた。それでエクリが行くというなら、俺も行ってみようと思っただけだ」
ラングゥはこの晩はビアではない。フィアンやフィエと同じように焼酎をロックで飲んでいる。その中の氷が傾いて小さな音を出した。
「へえ、ラングゥでもそんな情緒的なこと言うんだ」
「あのなあ、俺をなんだと思ってるんだよ」
「秀才な残念イケメン」
「まあいいや。ハロルたちにも声かけるか」
「うん。あ、でもこれだと卒業旅行みたいになっちゃうね」
したたかに酔っているメンバーに提案をした。威勢よく返事が返ってきたものの、後日結局ハロルとフィアン、フィエは都合がつかないと連絡があった。
それから日を改めて、渡航の知らせをシブヤ氏に伝えた。すると、喜んで案内すると言ってくれた。