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エクリ・チュールは再来島する
「ねえ、本当に大丈夫?」
フェリーが着船し、乗船口を出て早々膝に手を当て、体を丸めるラングゥの荷物を預かった。
「ああ。以前より少し体の浮遊感が気持ち悪いだけだ」
「それって駄目ってことでしょ」
「いやなんともない」
腰痛でもないのに、青いしかめ面で背筋を伸ばした。前回の渡航は行きも帰りも船室で寝ていたラングゥだが、今回は寝ようにも寝付けなかったために、思いっきり時化の洗礼を受けたのだった。
「どうもどうも。おや、顔色が悪いですね。波が高かったですしね」
シブヤ氏がのっそりと近づいてきた。
「お世話になります」
エクリは一礼した。
もうまもなく大学を卒業し、初登庁する。その前にエクリはぜひとももう一度来島しておきたかったのだ。