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エクリ・チュールは止まらない  作者: 金子ふみよ
第三章
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エクリ・チュールは感想文を書く④

 今回、私は渡航しました。シンシ州とサ州には海があります。交通はあります。けれど、この六十キロメートル強の物理的な距離と、心の距離の関係はそういう交通とは関係ありません。手紙、つまり連絡はできるでしょう。以前は記号器に似たタブレットとかいう機材もあったようですし。けれど、会いたいのでしょう。一緒にいたいのでしょう。私は恋をしたことがありませんから、切望するほどの再会を経験したことがありません。でも、記号器があって連絡できても会いたい気持ちは分かります。一年会ってないとおじいちゃんやおばあちゃんにやっぱり会いたくなります。たとえ、記号器で連絡を取っていたとしても。

 だとしたら、カナエ・ホウリさんが陶芸であの土を使っていた理由も分かります。「あかねさす」の茜の色を連想させるあの陶器を作り出したかったのです。私はカナエ・ホウリさんと会いましたが、手記の筆者とは会っていません。だからこの人の性格や思いを読み取れても、この人を知りません。再会できたのか確認はできませんでした。とっとと会えばいいのにと思いました。が、人には事情があります。私にもありますし、たぶんおそらくどうかなあ、イツヅ担当官にもあると思います。それを他人が詮索したところで神や仏でもないので、神通力は使えません。だって魔法使いと伝承されているカナエ・ホウリさんでさえ栞を作るしかできなかったんですから。私たちが驚嘆するあの栞を作れたカナエ・ホウリさんでさえです。


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