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エクリ・チュールは止まらない  作者: 金子ふみよ
第三章
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エクリ・チュールは感想文を書く②

 技術を知ることとそれを駆使した人を読むことは違ったのです。しかもですね、この筆者、誤字があったり、わざと字をずらしたりしてたんです。「あ」と「お」、「さ」と「ち」、「ぬ」と「ね」。私たちにとって懐かしいそんな字を入れ替えてたんです。そればかりではなく、「し」と「つ」とか「い」と「こ」みたいに転ばせてるところなんかあって、もうこの人なんなのと正直思いました。もうこれ本当に謎だったんですけど、短歌の枕詞のたとえば、「たらちねの」を「たらさぬの」とか「あかねさす」を「おかぬちす」とかしてる始末だったんです。あ、枕詞とかってのは、教官のことですかご存じかと思いますので説明は割愛します。

 けれど、この人が写した短歌や俳句、詩編を読んでいて、それが変わりました。この人は別に私なんかをいたずらするためにこんなことしたわけじゃないんですよね。当り前ですけど。これをしたこの人は、なんでこんなことをしたのか。その人の思いや性格を考えました。恥ずかしがり屋で、恋愛の短歌を書き取るのが恥ずかしかったのかな。率直な歌を作ると抵抗があるような天邪鬼さんだったのかな。これを読んだ人に謎かけを仕掛けたかった知的好奇心の高い人だったのかな。いろんな想像が浮かんできました。だから、それらの歌は決して絵空事や空々しい幻想なんかじゃないんです。

 手記に書かれてあった俳句に気になる句がありました。俳句は短歌よりも短い詩形です。だから一言一句無駄にはできないはずです。だから私は最初その句の意味を夕方の光景を感傷的に詠んだ句だと思っていました。それでも違和感がありました。だって、この人はこんなことを言いそうにないんです。なぜって、他の日記や随筆の文書を読む限りこの人はおおざっぱと繊細の弥次郎兵衛なんです。かつてあったと言われる伝説の血液型占いだったら、絶対のこの人はO型です。確かに繊細ですから、感度の鋭さがあります。けれど感傷的かと言われると、この人はそこに留まることはしないと思います。どうせなら、悲嘆にくれるくらいまで突き抜けると思うんです。それと、この人はシンシ州に一時期いたというまでは解明できました。この地の人なのに夕日が山へという表現だったので、これもおかしかったんです。単に表現上そうしたのかとも思いましたが、やっぱり、このしっくりこない感じをどうしたらいいのか釈然としませんでした。


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