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エクリ・チュールは再び呼び出される
その翌日のことである。登校早々、記号器がまた鳴った。今後は一封ではない。遠距離対面通信の着信だった。画面上に現れた発信者の氏名に怯えつつ、
「はい、エクリ・チュールです」
爽快な晴天に似つかわしい声色で応答した。
「司書室に来い!」
イツヅ担当官は一言だけ告げると通信を切断した。一瞬だけの画像だったが、担当官がいるのは確かに司書室のようだった。その表情は、聞かなかったことにしたり、司書室に行かないことにしたりなんて選択肢が存在しないと思わせるに十分な豊かさだった。記号器を鞄にしまい、
「またなんだろうな」
肩こりがするような心地がしても、またしても司書室へ駆けるしかなかった。