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エクリ・チュールは止まらない  作者: 金子ふみよ
第二章
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一日目の調査終了

「あーエクリたちの方が早いじゃん」

 宿泊施設に戻ってきたハロルは血色よく汗だくである。その後ろにはやはり汗だくのフィアンとフィエが千鳥足で、もうノックアウト寸前にぐったりしている。妙にテンションが上がっているハロル。聞けば、裂き織りという織物が大層魅力的だったのだという。巾着や敷物もあれば、衣類もあるという。それを明日見せてもらえることになったらしい。記号器にはすでに何枚か、いや何十枚かの画像が収められていた。

「私たちもさっき戻ってきたところ」

 エクリはロビーにあるふんわりとしたチェアに、ラングゥと座っていた。お茶を飲んで残務処理とまでは言わないが、それなりに書類とにらめっこをしていたのである。心地いいソファと舌をマッサージするようなお茶のおかげか、単に疲れていたのか、ラングゥはうとうとし始めていた。そこへ、大きな声である。体をびくつかせて起き、ハロルを軽く睨んだ。

「のんびりするゆとりはないのか」

「あ、お茶頂戴」

 ラングゥの抗議にも聞く耳はない。

「それよりどうしたのよ、フィアンとフィエは」

「ハロルの体力がバカみたいなんだよ。二時間休憩なしで演舞の練習ってさ」

「あー。まあお茶飲みなよ。ほら座ってフィエ」

 フィアンとフィエの抗議は想像に難くないので、労うしかない。エクリは手慣れた様子で二人にお茶を淹れた。

「そっちはどうだった?」

 お茶を一口してから背伸びをして、フィアンが誰にということはなく、聞いた。

「淡々と聞き取り調査をしたって感じ」

 それをしたのは役人とラングゥで一人外野にいるように座っていたが、エクリにはそれ以外に言いようがない。

「面白い話もあったよ。ヤザキという地名があるんだって。そこから星が上るように見えて、見えるようになるとイカが取れるようになるんだって。それでヤザキボシっていうらしい。ぎょしゃ座のカペラのことだよ」

 ラングゥはそういう点に興味がそそられるらしい。フィアンとフィエもその土地にちなんだ命名というのに関心が湧いたようだ。

「あ、イカ食べたい」

 それを聞いていたハロルはまったく別に興味がわいたらしい。

「夕食までまだ時間あるし、どうする?」

「僕は少し寝る」

「私も」

 フィアンとフィエは疲労回復に努めるらしい。ハロルは汗を流すのが優先だと入浴に向かった。ラングゥとエクリはその場で資料の整理し始めたのだが、ペーパーを持ったまま仮眠に入ってしまった。

 その日の夕食の献立の一つに、ハロルが所望したイカが出た。つけ麺みたいに食べるというその料理に斬新さを感じながら、

「うま」

 十分堪能したハロルだった。


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