朝、食堂で
澄んだ青空だった。濡れたような艶があるのに、空気にはじっとりとした感じはなかった。渡航して明けた朝。エクリたちがいつも通りに起床し、食堂へ行くと、挨拶がやたらとけだるそうなラングゥが音もなく背中から現れた。
「ベッドが変わったわけじゃないから平気だと思ってたんだけど、結果的に駄目だった」
枕が変わって寝られなかったようだ。
「そう。私は、寝床はあまり選ばないかな。枕が変わっても全然平気」
エクリが司書室の机にうっ伏していびきを立てていたのを、フィアンとフィエは思い出していた。
ハロルなどは枕が変わっても寝られる、どころか枕が要らなくなる寝相だった。睡眠中でも活動的なのだ。
フィアンとフィエは泥のように眠った。それは枕が変わっても寝られる、という意味なのだが、ハロルが絡んでくると、どうあっても巻き込まれてしまって、あっという間に寝つけるくらいの身体状態になるからだ。昨晩は、どちらかと言えば、船酔いの影響が残っていたせいだろうが。
ラングゥは指定された席に座り、用意された朝食を始めた。
「まあさ、逆に考えると、布団が楽しかっただけかもしれないし、今日の行程やったら、疲れて眠れるんじゃないの」
朝から香ばしく焼かれた魚が提供されて上機嫌に口へ運ぶエクリに、
「そうだな。そう思うことにする」
ラングゥは、小さく答えてちびちびと箸を運んだ。
――いや、エクリが言った『逆に考えると』ってとこをツッコまないといけないんじゃないの、ラングゥ
フィアンとフィエは目で同意を語り合い、味噌汁を飲んだ後のせいにして大きなため息をついた。
「おかわりしようっと」
食事開始数分で立ち上がったハロルに、フィアンとフィエはもう一度ため息をついた。