エロゲの主人公が下手くそすぎるんですけど
タイトルはアレですが健全です。
あ、あと初投稿です。
「やっと昼休みだぁ…」
「まお君、お昼一緒に食べよ?」
「今日は私が作ってきた、自信作だぞ!」
右に美少女、左に美少女、おまけに正面にも美少女。
普通の昼休みで普通の昼食中。ここだけ見れば俺はハーレム系の主人公だろう。君もそう思うよね? 俺もそう思う。
しかししかし、彼女達は元々、別の男子の事が好きだった面々だったりする。
それがどうして俺の所に来てしまったのか、これを説明するには、この世界の事を説明しなくてはならない。
まず俺の名前は「寝取間男」。制作者も何を思ってこんな名前にしたのか小一時間問い詰めたい。
そう、製作者だ。
実はこの世界、ギャルゲーの老舗メーカーが出したゲームの18禁バージョン。俺は生前の記憶を持ったまま、何の因果かこの世界に生まれ落ちてしまったのだ。
え、死因? テクノブレイクだよ言わせんな情けない。
気を取り直して説明を続けると、何をとち狂ったのか、18禁バージョンのみバットエンドが寝取られなのだ。
その為だけに新たに作られたキャラが俺こと寝取間男。スケベェなシーンこそ無いものの、主人公が攻略出来なかったヒロインは俺とくっつくようになっているのだ。
ここまで説明すれば、勘のいい諸兄ならお分かりだろう。
主人公、あるいはそれを操作している誰か、めちゃくちゃこのゲームがヘタクソ、いや下手過ぎる。
五人のヒロインのうち、既に三人が俺と一緒にいる事で察して欲しい。
初めは俺も、あの子と付き合えるなんてラッキーだなぁ、なんて軽く考えていたのだが、それも二人目の攻略失敗を見て気が変わった。
三人目に関しては、主人公が失敗しないように直接間接問わず手を尽くした。
…まあそれでも失敗したんだけども。
もはやわざとやったんじゃ無いかって程の選択肢ミスとデート場所のミス、俺ちゃんと教えたよね!?
彼も申し訳なさそうな顔で謝ってくるので強くは責められず、俺はチベットスナギツネのような顔になりながら三人目を受け入れたのだ。
そして現在。教室の片隅では、主人公が四人目のヒロインである後輩ちゃんとお昼をご一緒している。
どうやら会話も弾んでいるようでホッと一安心。
教えた通り、お弁当の中身を褒めて、後輩ちゃんも満更では無い様子。
「何見てるの?」
「ん? いやぁ、ようやく彼にも青春が訪れたなぁ、ってね。」
「…そうだな、上手くいくといいな。」
「……そうだね、上手くいくといいね。」
俺は安心して彼らを見ていたので、彼女達の顔を見たなかったのだが、後で教えてもらった所、チベットスナギツネが三人いたらしい。
……………鳥
あの後は特に見所もなく終わり、俺達は帰るために下駄箱へと向かう。
決してやり込んだわけでは無いが、攻略情報が頭に入っている程には好きだったゲームだ。
彼と上手くいったヒロインの後日談が現実として見られる事は素直に嬉しい。
だが、そんな晴れやかな気分はそれを目にした瞬間に終わり、チベスナタイムがやってくる。
「うっ、グスッ、先輩のバカァ……」
おいおいおいおい、失敗したわアイツ。このタイミングで後輩ちゃんが泣いてるとか、完っ全に俺との出会いシーンじゃねぇかマジかアイツ。
どうしたの? から始まり、主人公の愚痴を聞いていくうちにだんだん絆されて、君は魅力的なんだからもっと自信持って! で完全終了。
いやしかし、俺は三人目の時に学んだのだ。こちらから声を掛けなければノープロブレム、後輩ちゃんには悪いが、ここは無視させてもら
「どうしたの後輩ちゃん! アイツに何かされたの!?」
「幼馴染君と何かあった?」
「泣いている女子を放って置くとは…」
えないじゃん! 何やってんの君達!
「せんぱぁい…先輩達の言う通り、あの人全然気持ちとか分かってくれなくて…もう私、どうしたらいいのか…」
しかも事前に話し合いが!? おい、まさか、やめろよ? フリじゃないからな!?
「そっかぁ、仕方ないよね、アイツ昔からそう言う所あるし。んじゃ、後輩ちゃんもまお君に話聞いてもらえば? アイツと違ってすごい頼りになるから!」
そしてオレがゆっくり話を聞いただけでトゥンクするんですねわかりたくないですチョロイン多過ぎ!
ああ、そんな縋るように見つめないでくれ、小心者の俺はそうされたら断れないんだよ! チクショウ!
「あー、取り敢えず、ファミレスでも行こうか?」
恐らく引きつりまくった笑顔を浮かべ、彼女達を誘う。そんな善人を見るように見ないでくれ、心が、心が痛い…。
ちなみに、こんな事を繰り返しているからか、俺の評判はビックリする程に低い。
曰く、女を紹介してから寝取るクソだとか。
曰く、主人公君を引き立て役にして女を落とす外道だとか。
曰く、両手で数えられないほどの女と付き合ってるクズだとか。
なにそれ酷くない? 俺はただ、このゲームのエンディング後の世界が見たいだけなのに……
「さ、早く行きましょう先輩! 実は前から、先輩とはお話ししてみたかったんです!」
輝かんばかりの笑顔でこちらを見る彼女達。
まあ、そんな評価を受けていても、彼女達が悲しまなくていいなら
「ああ、行こっか。今日はおごるよ、バイト代入ったばっかりなんだ。」
それはそれで、俺がここに生まれてきた意味になっているのかな、なんて思う今日この頃なのだった。
???「はー、ホントクソ。ギャルゲの世界に転生させてくれるっつーから転生したのに。相手はババアばっか、寝取りヤローはいちいちお節介焼いてくるし、マジうぜえ。
ま、いいか。最後の攻略対象は義妹でロリだし! まってろよー! お兄ちゃんが攻略してあげるからねぇ!」
なお、彼の攻略結果がどうだったのかは、後日、顔を両手で覆い、天を仰ぐ寝取間男の姿があった事から推して知るべし。