O.P.2 静かなる夜明け 第4章 …生と死…
命と
命よりも大切だと思うもの
どちらかを選ばなければならないとき
医者は命を優先する
命さえあれば
いつか大切なものを失った辛さをも
乗り越えられると
医者は信じているから
けれど
失うものがあまりに大きいときは
医者はどうすればいいのだろう
by西条 命
O.P.2 静かなる夜明け
第4章 …生と死…
患者は年齢17歳女性。
5階建てのビルの屋上から転落。
頭部外傷
左上腕骨折及び左大腿部裂傷
バイタルサイン微弱
意識レベル無し
瞳孔反射かすかにあり
救急隊員が情報を大声で言っている。
「腹腔内出血か、エコーちょーだい」
西条先生からエコーを求められた。
修もこれくらいはできる。
そう思ってエコーを渡した。
「バカヤロウ! ゼリーをつけろ!それから渡せ!」
こっぴどく叱られてしまった。
ERには独特のルールがある。
エコーもいい例だ。
すぐに治療・検査ができるように渡さなければならない。
緊急開胸になった時も救急医はまずガウンをきちんと着ない。
後ろは結ばない。理由は時間がないからだ。
処置に入ってから、手の空いてるスタッフが結ぶ。
普段のオペではありえないことだ。
修は処置に参加するのは難しいと考えて、
スタッフの行動を観察することにした。
ERを学ぶのはこれが1番近道だ。
患者が運ばれてきてから、
ルートを見事にとっていく。
バイタルの確認も欠かさない.
その間に西条先生はエコーで腹腔内出血を確認していく。
「ファスト陽性! 緊急開胸するよー」
西条先生が言った瞬間に流れが変わった。
開胸セットが準備され、
患者には布がかけられた。
輸液、輸血の量も調整し、麻酔科、脳外科の先生がやってきた。
西条先生が「メス」といった瞬間にメスが右手に乗せられた。
流石だ。
オペ看も慣れている。
オペ看の手にはセッシとガーゼが握られている。
次に必要なものがわかっているのだ。
患部の消毒も欠かさない。
麻酔科の先生は入ってきた瞬間に状況を把握し、
イソジンを振りかけた。
正中開胸するためだ。
その間に西条先生はガウンを着ていたのだ。
全てが流れるように進んだ。
これなら大丈夫だろう。
修はそう思っていた。
とその時、不吉なアラーム音が鳴り響いた。




