O.P.1 夜のキセキ 第2章 …残酷な現実…
ほとんど叶うことのない願い
それでも人は願いを託す
切実な願い
無邪気な願い
一人では
叶うと信じることすら困難な願いもある
そんな時はどうする?
共に信じてくれる仲間と
願えばいい
by世良
O.P.1 夜のキセキ
第2章 …残酷な現実…
「早く救急車を出せ!
両親はアドレナリン投与。
息子は俺が同乗する。
モニターつけて挿管しろ。
除細動も準備しとけ。」
人物Aはいきなり叫んだ。
駆けつけた警察官は人物Aを制止しようと必死に押さえ込む。
救命士は、「医療関係の方ですか?」
「そうだ。そこの東條大学病院で医者をやってる世良だ。急がねーと全員死ぬぞ。」
世良は警察の制止を振り切り、修が乗せられている救急車へ走る。
救命士は呆気に取られたが、即座に準備に取り掛かった。
「アドレナリン投与準備できました。何本入れますか?」父親の処置をしていた救命士が世良に聞く。
世良は、「父親2本、母親1本入れておけ。心マ実施、VF出たら除細動な。」
的確な処置だ。寸分の狂いもない。
「早く東條大学病院に車出せ。時間との勝負だぞ。」
「は、はい。今出します。ドア閉めます。」
運転手は少し焦りながらドアを閉め、救急車を発進させる。
「ルート取って、エコー、換気回数多めで……着くまで何分かかる?」
世良はルートをとりながら運転手に聞く。
「6分ぐらいで着きます。向こうの先生にお伝えすることはありますか?」
この答えが返ってくるまでにルートとエコーを終わらせた世良は、
「ファスト陰性、比較的安定している。そこまで心配はない。ただ、両親は厳しいだろうな。」
着くまでの6分間沈黙が続く。
車内でできることは全てやった。
ふと、救命士が口を開く。
「世良先生、どうして両親の方に乗らなかったのですか?
息子さんの方が軽症ですし、
正直救命士にできることで両親をすくえてるかどうか…」
「心停止から40分。
心臓が動くことはほとんどない。
開胸心マをしたとしても、
可能性は0に近い。
それなら、子供の灯火を確実に東條大に運ぶ。
これが最善だ。
今回で2人殺したがな……」
世良の呟きは救命士には聞こえず、
意識のない修にしか聞こえなかった。