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表彰台に四番を  作者: アマツ
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入学

 4月10日、群馬県高崎市、私立倉田高校にて、雲一つない晴天の中、入学式が行われた。体育館に新入生300人が揃い、校長先生からのありがたいお話を聞いている。

 早く終わってくれ。でないと俺は、夢の国に行ってしまうぞ。

 そんな事を考えながら、必死に目を開けていると、隣から、くー、くー、と可愛らしい声が聞こえてくる。

 そこには、ショートボブの新女子高生、永瀬由衣がもう既に、夢の国に出国していた。

 彼女は、明るく元気な性格に加えて、小柄な体型と可愛らしい見た目から、中学校の頃からカワイイキャラとして人気だった。そんな彼女とは、小学校からの付き合いで、俺との仲はそれなりに良い。

「おいっ、起きろ。」

 頭にデコピンを食らわせる。

「痛っ、も〜、せっかく気持ち良く寝てたんだから、起こさないでよ。カイ君のイジワル。」

 彼女の言っている「カイ君」とは俺のあだ名だ。本名が山崎海人と、山なのか、海なのか、と思わず考えてしまう名前だ。

「男の俺でも、普通入学式では寝ねーよ。」

「だって話、長過ぎなんだもん。」

 そう言って、彼女はゆっくりと目を開けた。そしてしばらくしてから再び目を閉じた。

 すると、校長先生からのお話がついに終わった。

 よし、これでようやく俺達は自由だ。あとは隣のコイツを寝たままにして、入学式にいる大勢の前で、公開処刑にしてやる。

 そんなふうに思っていると、不思議と彼女は目を開けた。どうやら彼女は、危険を察知するアイサイト機能が付いているらしい。

 自由の身になれる嬉しさと、公開処刑にできなかった悔しさが混ざり合い、何とも言えない微妙な気持ちの中、体育館を出て行く。

 教室に辿り着くまでの廊下は、とてもキレイだった。さすが私立。大金を払うだけある。

 そして、これから1年間苦楽を共にするであろうクラスメートと、1年3組の教室に到着した。ちなみに、由衣も同じクラスだ。

 担任は、黒田元、数学担当らしい。

「よーし、じゃあ一番から自己紹介だ。」

 とうとう始まったあるあるイベント、自己紹介。一番から一人ずつ名前と趣味を言っていく。

 数人が言い終えたところで、気になる女子がいた。

「神谷杏奈です。読書が好きです。よろしくお願いします。」

 ごくごく普通の自己紹介。しかし、周りの男子からは、おぉ〜、という反応。それもそのはず、彼女は、一言で言えば、美少女であった。

 付き合いたい、いや、結婚したい。

 その後、今度は女子から、黄色い歓声が上がった。

「佐藤純一です。好きなものは、マンガと水泳です。よろしく。」

 この男、まさに、THEイケメンである。

 はぁ〜、俺の嫌いなタイプだ。どうせアイツは、カワイイ娘の前では良い人ぶって、裏じゃ、悪口を言いまくるような奴だ。クソ野郎、偽善者、女たらし。

 ちなみに俺の顔は、中の上、女子から言わせれば、付き合うのは有りより無し、というレベル。

 そして、とうとう自分の番だ。

「え〜っと、山崎海人です。好きなものはオレンジジュース、あと映画鑑賞が好きです。よろしく〜。」

 周りは当然無反応。



 いやっ、別に、何も期待して無かったけどね。女子からの歓声とか全然気にしてなかったからね。



 

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