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RAY ANGEL 『嘘』REMIX  作者: 迫田啓伸
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 最初は、戸惑った。

 何の知らせもなく、別の世界に入っていく。

 そして、目が覚めたら時間がたっていて、何事もなく、ことが進んでいること。

 意識を失っているときでも、記憶は残っている。

 私ひとりの意識がなくても、この世界は何の支障もなく、時間を経過させていく。


 眠り始めたときの夢み心地から醒めた。

 見慣れた天井と壁。

 のろのろと体を起こす私に聞こえてくる、重たい金属音。

 磨き上げられた金属製の両手。

 背中の翼を動かし、半重力を使って立ち上がる。

 四方の壁はよく磨かれている。自分の姿が写るぐらいに。

 壁に手をつき、改めて自分の姿を見る。

 今の私は、巨大なロボット。

 この宇宙船を護衛するために作られたものらしい。

 西洋風の鎧をイメージした外装。

 自己修復能力。

 宇宙のいかなる危険にも耐え得る性能。

 白地に赤い縁取り。

 背中には大型の翼。

 足にも翼はあるが、それは宇宙空間で上下を決めるための重力装置。

 表情はない。装甲にすっかり隠れてしまい、見えない。

 私の体全体が金属製。

 元の体がロボットであるかのように思えてくる。

 私の意思で自分の肉体が動かせるように、今の、巨大ロボットになっている私の体も、自由に動かせる。

 この宇宙船の危機の時も、私は宇宙空間に出て、戦った。

 宇宙船を守るために、体を張ったこともある。

 その度に、このロボット……RAY ANGEL……正式名称RAY‐03[A]typeは起動し、戦った。


 この宇宙船を守るために。


 宇宙にある様々な危険から、人間たちを守るために。

 こんなの、テレビで見たロボアニメの主役機だ。

 そんなロボットに、私はなっている。

 そして、この宇宙船を、私は何度となく救ってきた。


 人間は、宇宙船の中でコールドスリープに入っている。一人がひとつのカプセルに入り、眠っている。

 私が人間の姿で活動しているのは、夢の中だけ。

 一人ひとりの脳波をメインコンピューターが統合。

 その夢を、ひとつの世界として私たちに見せている。

 それが、私たちの日常。

 そして、みんなそれを現実だと思っている。

 でも、それは嘘なのだ。

 コンピューターが決めた配役を演じている。そんな夢を見ているだけ。


 エアロックを開け、外に出る。

 鉛筆みたいな形の宇宙船。その外壁に脚をつけ、顔を上げる。

「この前見た……」

 今度も、どこまでも広がっている宇宙空間。

 星の光はあるけれど、どこか頼りない光。

 宇宙船『エデン』はひたすら航海している。

 再び地面に足をつくことができる星を探すために。

 そう。

 地球はなくなった。

 人が住めない星になってしまった。

 この宇宙船『エデン』は地球の人間の生き残りを乗せて、宇宙に飛び立った。

 これと同じ宇宙船はいくつもある、が、それらがどうなったかわからない。

 少なくとも私は、この宇宙船を、人々を守ってきた。

 凶悪な宇宙生物。

 超新星爆発の余波。

 測定不能な未知との生物との遭遇。

 ブラックホール。

 宇宙の墓場と呼ばれる特殊磁場など。

 仲間はいたと聞いているが、少なくとも、今は私一人しかいない。

 宇宙船が地球と同じ星を見つけるまで、私は彼等を守る必要がある。


 でも、そんなものがあるのか?

 見つかるものなのか?

 私は……。

 私は、そんな使命を全うしようとは思わなかった。

 でも、気がついたら、そんな状況になっていた。

 このとき、私の頭に疑問が浮かんでくる。

 私は、誰だろう。

 私は地球では、どんな人間だったのだろう。

 いや、そもそも人間ではないのではないか。

 もし私が人間で、夢で見たような地球で暮らしていたら、私はどんな生活を送っていたのか。

 まったくわからない。

 思い出せない。

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