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RAY ANGEL 『嘘』REMIX  作者: 迫田啓伸
1/3

 この世界は『嘘』でできていることを、私は知っている。


 目が覚めて、カーテンを開けた。

 日曜日の朝の、透き通った空の青さが目にしみた。

 窓を開けると、風が入ってくる。

 春らしく、暖かくて柔らかな風。

 当たっていると気持ちよくて、また眠ってしまいそうなほど。

 昨日も友達と遊んで、夜遅くなって、両親からひどく怒られてしまった。

 でも、なんだか空しい。


「おはよう」

 着替えて、リビングに下りていく。

 おはよう、と返してくる両親。

 何気ない会話。ありふれた日常だったはずだ。

 でも今では、それすら空々しくて……。

 

 昼過ぎに外に出た。

 田舎と呼ぶには人が多く、郊外にはそれなりの商業施設がある。

 かといって、そんなに大きくもなく、都会と呼ぶことにも抵抗がある。

 街路樹は少しずつ葉をつけ始め、道路の割れ目は小さな花が芽を出している。

 電線には雀が止まっていた。

 チュン、チュンと、軽やかな声で鳴いていた。

 こんな町でも車が行きかう。

 それまで『自動車』としか認識せず、色とか形とかデザインに興味を払うことはなかったが、最近では色々な種類があるものだと感心してしまった。

 とある団地に通りかかった。

 敷地内にある広場では子供たちの遊ぶ声が聞こえ、時折親たちが注意していた。

 見上げる。

 天気がいいから、洗濯物を干してある家がほとんど。

 あの部屋ひとつひとつに、それぞれの暮らしがあるのだろうな、と思った。


 団地を離れ、町の中央公園に向かう。

 この間、私とすれ違う人はいなかった。

 木の葉が風でこすれる音。

 遠くから走ってくるエンジンの音。

 どこかにいる犬の鳴き声。

 私の耳に届くそれらの音が、かえってこの町の静けさを演出するかのよう。


「……ん」

 眩暈を感じ、足を止める。

 頭を振り、正気を保とうとした。

 だが、眩暈は何の苦痛もなく、私を眠りに誘い込む。

 心地よいくらいだ。

 目を開け、空を見る。

 果てしなく高いはずの空。

 それが、実に近くにあり、その向こうにある宇宙空間が映し出されているみたい。

 そして、視界にノイズが走る。

 テレビの映りが悪くなったときの、あれ。

 それと同時に、私の耳には音が届かなくなる。

 静けさを通り越し、音を感じることができなくなったかのような状態。

 また、来た……。

 私は、眠たさに抵抗しなかった。

 他の人が見たら、私が突然道端で意識を失って倒れた、としか見えないだろう。

 でも、それすらどうでもいいこと。


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