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真実

止まらない涙に、顔を上げられないでいると


「ねえ、麗?」


そう頭の上から、冬木さんの優しい声がした。

そして、彼はゆっくりと私の手を握った。


私よりも大きなその手は、とても暖かくてゴツゴツした

男性の手をしていた。

私は手から伝わって来る冬木さんの温度で、

少しだけ落ち着くことができた。


鼻をすすってゆっくりと冬木さんの顔を見ると、

ずっとこちらを見ていたのか、優しい顔の彼と目があった。

その直後、握られた手を引き寄せられた私は

彼の胸の中にすっぽりと収まった。


抱きしめられる状態になった私は、

突然のことに何も言葉が出せないでいた。


冬木さんの匂いがする。

心拍数が一気に上がり、息が苦しい。


すると、冬木さんがゆっくりと話し出した。


「麗。君のことは少し前から、知っていたよ。

 部署は違っても、会社ではすれ違ったりするからね?

 いつも君は遅くまで残って仕事をしてた。

 車で帰る道中で、君が歩いているのをよく見かけてたよ。

 可愛い子が、こんな遅くまで仕事をして

 一人で帰るなんて危ないなあなんて、思ってた。

 でも、急に声をかけて送って行くなんてこと、同じ会社の上司だとしても

 おかしいだろ?だからさ・・何もできないでいた。

 もし君に彼がいたら、余計なお世話だろうしなあ・・って。」



まさか、冬木さんが前から私のことを知っていてくれていたとは

思いもしなかったから、とても驚いた。

そして、そんな風に気にかけてくれていたとは・・。



「でも、あの日。あの日ね?

 かなり飲まされて泥酔している君のこと、さすがに放っておけない

 ってそう思った。それに家に帰る方向が一緒だったし、

 単純にそう思って、家まで送ったんだ。

 部屋に着いたけれど、君を玄関に置いて行くわけにもいかないから

 勝手に上がるのは悪いなあ・・とは思いつつもお邪魔したんだ。

 君をベッドに寝かせて、部屋を出ようとして驚いたよ。

 覚えてる?机の上にたくさんあった紙。」



そこまで言う彼の言葉に、はっとなった。

そうだった。忘れていた。あれを置いたままにしていたんだった。



「ごめんね。あまりじっくり見るつもりは無かったんだ。

 だけど、あの紙から君の悲鳴のようなものが聞こえて来たんだ。

 だから、内容を見てしまった。

 それでね?あれを・・。

 あの紙を起きた君がもう一度、目にするのかと思うと

 そのままにしておけなくて、持ち帰って来てしまったんだ。」





そこまで言うと、冬木さんは抱きしめている腕に力を入れた。


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