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説得



「今日、なーんにも食べてなかったからさあ・・

 ま、食べる暇も余裕もなかったからなんだけどさ。

 今になって急に空腹が押し寄せてきたよ。」



少し苦笑いしながら、そう言う冬木さんは

一言も愚痴をこぼさない。

この人は、どこでストレスを発散しているんだろう・・。


やっぱり、信頼してる奥さんとか、

癒しをくれるお子さんかな・・。


なんて・・・

どうしていちいち、こんなこと考えてしまうんだろう。

単に、上司にご飯に連れてきてもらった・・

そう飲み込めばいいだけなのに。

余計な考えで

私はいつだって自分で自分の首を絞めていた。



「ほら、赤ワインきたよ。」


私の前に、赤ワインが置かれた。

冬木さんは、目の前にある水の入っているグラスを

手に取り傾けると、


「今日は、本当にお疲れ様でした。

 そして、ご迷惑おかけしました。」


と言って、ワイングラスに乾杯をした。

急いで、ワイングラスに手を添えながら


「冬木さんは・・悪くないのに・・。」



呟くようにそう言った。



「…いいや。僕のせいなんだよ。

 まあ、僕のせい。とだけ言うとあれだから・・

 うちの部署のせい。

 イコール、僕の責任。でしょ?責任者としていたらなかった。」




もう、何も言い返せなかった。

私には到底理解できない、想像もできない、

責任者としての重荷が、冬木さんにはのしかかっていて

こんな半人前の私になんか、どうこう言われたくないだろう。

そう思ったから。




そんな中、案の定先に

私が頼んだオムライスが出来上がり、目の前に置かれた。


昔ながらのケチャップソースで、

見た目からわかるくらい、卵がふわふわだった。



「うわ〜とっても美味しそうじゃん!麗〜!」



私よりも、お腹ぺこぺこの冬木さんが興奮していた。

その姿がおかしくて、声を出して笑った。


「え〜?笑うとこ?

 ほら、あったかいうちに食べて?」


そう促されたので


「では、お言葉に甘えてお先に、いただきます。」


手を合わせてそう言い、食べ始めた。

バターが香って、幸せな気持ちになった。


それと同時に、ジュージューと音を立てながら

冬木さんのステーキも出来上がった。


「うわ〜!たまらないねえ。。では、僕もいただきます。」


何グラムあるのか知らないが、結構ボリュームのある肉を

美味しそうに頬張り始めた冬木さん。

二人で黙々と、食べた。


ときより、冬木さんと目が合い


「おいし?」


「はい。冬木さんは?美味しいですか?」


「うん。とっても!一口食べる?」


首を横に振る私。


この会話を数回した。

数回目には、笑いながら“食べる?”と聞く冬木さんに

つられて笑った。



私の方が先に食べ始めたのに・・

同じタイミングで食べ終わった。

オムライスと一緒に赤ワインを飲むと言う初体験をした

私のグラスは、すでに空になっており

ステーキを食べ終えた冬木さんが


「ホットコーヒーと、赤ワインのおかわりください。」


優しさなのか、なんなのか・・

勝手におかわりを注文してくれた。

イカンイカン。ゆっくり飲まなきゃ・・。

そう自分に言い聞かせた。


お互いのドリンクが来たところで、


「さて、さっきの続き聞かせてもらおうかな。」


先ほどまでとは、打って変わって

真剣な顔つきになった冬木さんに、一気に緊張したが

よし!と気合を入れて、続きを話した。



「はい・・続きを話します。

 

 白鳥さんに、冬木さんの迷惑になるから

 もう関わらないでほしい。そう言われたんです。

 いつも、白鳥さんは冬木さんのそばにいらして・・。

 だから、一番冬木さんの状況とか性格とか知っている方だって

 そう思って・・。その方がそう仰ってる。」


何か言いたげな表情をした冬木さんだったが

私が最後まで話すのを待ってくれていた。


「それに・・。

 白鳥さんにそう言われる前から

 私は冬木さんと今後、仕事以外で関わりを持たないようにしよう、

 そう思っていたんです。」


一口、ワインを口にして続けた。



「私は、別に面白い人間ではないし、

 冬木さんが心配するようなことも何もないんです。

 お忙しい日々の中、ご家族を大切にしてる冬木さんを

 素敵だなって思ってました。

 だから、私なんかといる時間より

 冬木さん自身の時間、ご家族の時間を過ごしてほしいんです。

 私なんかとの時間なんて無駄なだけですもん。」



最後の方は全て、本音だった。

これで、彼も納得してくれるだろう。


でも・・

そう思っていた私が甘かった。





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