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「失礼します。

 残業をさせてしまって、本当に申し訳ない・・。

 ここで、皆さん帰っていただきたいです。 

 皆さんが、ここまでやってくれたおかげで

 後の仕事は、私の部署で全て引き継ぎ、

 本日中に終わらせることが出来そうです。

 遅くまで、申し訳御座いませんでした。」



冬木さんは、大きな声でそう言った。

でも、その言葉に

誰も何も発さず、そして誰一人帰ろうともしなかった。



「冬木さん、僕あと少しで終わるので、そこまでやっていっても

 いいですか?」


一人がそう言った。



「いや・・えっと。うん。

 でも、皆帰るの遅くなっちゃうから・・。

 それに、B部署のミスではないんだよ。途中で切り上げてもらって・・」




まさかの言葉に困りながら、そう冬木さんは言った。

先ほど、羽織っていたジャケットは脱いでいて、ネクタイも緩め

袖をまくっている彼は、きっと自分の部署で必死に

仕事をしていたんだろう。

それは誰が見てもわかった。

そんな状態の冬木さんを置いて、帰れるものはいなかった。



「大丈夫ですよ。僕なんか、帰ったって寝るしかないんですから。」


そう笑いながら、もう一人が口にすると

周りも笑い「さて、もう少しで終わるぞ。」と口々に言い

仕事に戻った。



そんな光景を目にし、冬木さんは

もう帰れと言えず、「ありがとう。」そう言って

自分の部署に戻って行った。






それから1時間半。

皆でやると本当に早く、全ての仕事が片付いた。


「よーし!終わった!皆お疲れ!」


上司がそう言い、皆が散り散りに帰っていく。

千沙も足早に、「じゃあね!」そう言い帰って行った。


私は、軽く資料をまとめて、

部署を最後に出た。


会社を出ようとすると、




「麗!」





後ろから声がした。

この会社で、そう呼ぶのはあの人しかいない。

振り返ると、ネクタイを外した冬木さんがそこにいた。


「今日は、ありがとうね。本当に助かった。

 週明け、B部署にお礼に行くよ。麗も、遅くまでごめんね。」


困ったように笑う冬木さんが、なんだか愛しく思えて

不意に彼の腕を掴んだ。




「冬木さん。今日、送ってってください。」




彼から離れようとしていた私の口から

漏れるように、そう言葉が勝手に出た。


「え・・?今日?

 いいけど・・えっと。少しだけ待てる?」


困惑の表情をしながらも、断らない彼に

”ばか”そう小さく呟いた。






誰もいないロビーで彼を待った。





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